第80話 精霊銀
遅れてしまいました。
忙しい上に、どんどん筆が遅くなる……。今週は何とか日曜までに書……ければ良いな。
カラン、と音を立てて空中に突如現れた鉱石が床に落ちる。
「終了っと。いい加減これにも慣れたけど、なんだかなぁ……」
ぼやきながら白夜を鞘に納めると、地面に落ちた鉱石を拾って、まじまじと見る。敵を倒すとアイテムが落ちるというゲームのような、この迷宮に足を踏み入れてから随分経った。既に数え切れない程見たので驚きは無くなったものの、納得できないものがあった。
「まだ言ってるのか。そんなに気にすることでもないだろうに」
「気にしてないお前が凄いよ……」
「魔物だって倒した後に素材を剥ぐわけだし、大して変わらないだろ?」
「どこがっ!?」
平然としているギルツに戦慄を覚える。
素材が手に入るという結果は同じだが、魔物の素材を剥ぐのと倒した相手が消えて素材に変わるのでは、その過程が全く異なる。そもそも死体が――と表現して良いのか微妙だが、消えるという時点でまずおかしいのだ。
しかし、そんなユウトの主張は、三人ともが既に聞き飽きていた。
「はいはい。今それを言っても仕方ないでしょ」
「むぅ……」
手馴れた様子でソフィアが止めると、不本意だと表情で語りながらもユウトが引いた。
結局のところ価値観というか感覚的な違いなので、口で言って理解して貰えることではないのは分かっているのだ。だが、どうしても言わずには居られなかった。
すると、「キュキュゥ」という鳴き声と共に、頬を押される。目を向けると、ユウトを慰めるようにシルが頬ずりしていた。当然のようにユウトの肩に乗っていたため、いつの間にかそこがシルの定位置となっていた。
「シル。お前は分かってくれるか……」
「キュイ!」
ひしっと抱き合う一人と一匹。しかし、ギルツが冷ややかに指摘する。
「お前、最近ボケに回りすぎじゃないか?」
「いや。元々俺はボケ寄りだ」
「そういうのは良いので、先に進みましょうか」
「あっ、はい」
更なるボケをエリスに冷たくスルーされて、素直に頷くしかなかった。
「最近、女性陣が冷たい気がする」
「どう考えても自業自得だ。愛想を尽かされないだけ感謝するんだな」
「……否定したいけど否定できない」
我が身を省みて、遠い目をする。記憶が戻ったという大きな転機があったこともあり、自覚出来る程度にはその前後でキャラが変わっていた。そのため、彼女達のイメージを壊してしまっていたとしてもおかしくない。――とユウトは思っており、実際は単に慣れただけであり、スルーされてちょっと落ち込んでる様子が可愛いとか思われていることを知らなかった。
ユウトが地味に凹んでいる中、通路を進んでいると広い部屋に出た。
「随分広い部屋だな」
「……なんだろう、凄い嫌な予感がする」
「嫌な予感ですか?」
迷宮を抜けた先にある、まるで大立ち回りが出来るようにあつらえた様な広い部屋。見た限り、先に行く通路も無い行き止まり。余計な知識を持っているせいかもしれないが、ユウトにはここが、あるお決まりの場所にしか見えなかった。
「ああ。一緒にして良いものか迷うけど、こういう場所って大概――」
言葉の途中で、部屋の中央より少し奥に複雑な紋様で編まれた円――陣が浮かび上がった。紋様が真っ赤に染まった陣はまるで血に濡れたようで、そこから巨大な影が姿を現した。
「ボスが出るんだよなぁ……」
尻すぼみに小さくなる自分の声を耳にしながら、その視線を固定する。その視線の先には、全貌を露わにした巨大な影がユウト達を見下ろしていた。天井に届きそうなほど高い背は四メートル近くあり、まるでブロックを積み上げたような角ばったごつい身体をしているが、その表面は加工したように滑らかだ。ユウトのイメージとは少しフォルムが違うものの、まさにゴーレムと呼ぶべき相手だった。
その巨大で頑強そうな体躯には強い威圧感を感じる。とはいえ、今までにも巨体を持つ敵とは戦ったことがある。外見がでかいだけなら臆することも無い。無いのだが――。
「なぁ……?」
「言うな。聞きたくない」
「でも、あれって……」
「気のせいだ。若しくは目の錯覚」
「現実逃避しても仕方ないと思いますよ?」
ギルツとソフィアに聞かれながらも頑として認めようとしないユウトに、エリスが半ば呆れたような視線を向ける。
「いや、だって……。なぁ?」
改めてゴーレムの全身を見る。一色で統一された身体は、迷宮の明かりを反射して輝いているようにも見える。同じようにゴーレムを見ていた三人も、ユウトの問いにならない問いに同意を示す。
「認めたくない気持ちは分かるがな。正直俺も目を疑った」
「私も。あれほどの量が見つかったとなれば、大発見よ」
「でも、今までのことを考えれば、倒しても消えるだけのような……」
だが、それはユウトの意図したものと違った。
確かにあれの価値は計り知れないものがあるのだが、それ以前に大きな問題がある。
「うん。それも問題なんだけど、それ以前に……あれ、どうやって倒す?」
「……」
その素朴な疑問に、三人が一斉に黙り込んだ。
直後、ズンッと重低音を響かせてゴーレムが一歩踏み出した。――その白銀のボディを輝かせながら。
「撤退、撤退っ!」
即座に撤退を提案する。
あの白銀のボディは、どう見ても精霊銀製だ。魔術は効かず、その硬度は金属どころか物質としても最高峰に位置する伝説の金属。そんなもので作られたゴーレムとまともに戦うなんてお断りだ。防御力という点だけ見れば竜以上かもしれないのだから。
部屋の入り口は人間サイズ用に作られているので、ゴーレムの巨体では抜けられない。部屋から出てさえしまえば、追われる可能性は極めて低く、仮に無理に追ってきても満足に動けないため、逃げ切るのは容易だ。
だが、もう少しで部屋から出られるというところで、待ってましたとばかりに左右の壁が伸び、入り口を塞ぐ。まるで最初からそうであったかのように入り口は跡形も無くなり、ユウト達の撤退を阻んだ。
「っち。このっ!」
ユウトが“強化”を使い、入り口があった箇所を殴りつける。――が、拳を抱えて蹲る結果に終わった。壁の表面に浅く拳の跡が残っているが、これを続けても壁を破れそうには見えない。薄い壁で表面的に覆っただけでなく、もっと厚く塞いでいるのだろう。
「いったぁ……。なんつー性質の悪いギミックだよ」
「逃がさない、ということでしょうか?」
「そのようね……」
眼前で逃げ道を完全に塞がれて途方に暮れる。しかし、それもほんの僅かな時間だった。
「それなら、やるかやられるかってわけだ」
「逃げ道を塞いだ上に、相手は精霊銀製のゴーレムとか……。作った奴は鬼過ぎるだろ」
逃げられない以上は戦って勝つしかない。それぞれが戦う意思を見せ始め、ユウトもゴーレムを作ったであろう大魔導師に悪態を吐きながら白夜を握る。
精霊銀はアルシールにある三十の剣と鎧、それ以外は数点しか見つかっていないような希少な金属だ。だが、目の前のゴーレムに使われているのは、その全部を集めた以上の量のはずだ。
薄い鎧でさえほとんどの魔術は効かず、並の剣では傷も付けられないというふざけた性能だというのに、そんな物の巨大な塊が敵として現れるとはどういうことか。そもそも、精霊銀は金属としては異常なほど軽い。にもかかわらず、ゴーレムのあの足音だ。どれだけの量が使われているのか想像も付かない。
――……あれ?
そこまで考えて、違和感を覚えた。
確かに巨大なゴーレムではあるが、仮に全部が全部精霊銀だとしても、精霊銀自体の軽さを考えるとあんな足音になるとは思えない。ユウト自身は精霊銀の重さを体感したわけでは無いが、その持ち手の一人であるセインから少し話を聞いていた。セインが言うには、革製の鎧と大差ないということなのだが、それが事実ならあの足音はおかしい。
そこで、一つの可能性に思い至った。
「……ギルツ。少しの間、一人で捌けるか?」
「ん? ああ、おそらくは。威力は分からんが、速度はそうでもないからな」
今も部屋の端に下がったユウト達をゴーレムが追っているが、その歩みは緩やかだ。歩幅が大きいため人が歩くよりは速いが、走るよりは遅い。足だけ遅くて、他の動きが早いということも無いだろうから、防御力に特化していると見て良いはずだ。全身精霊銀という圧倒的な防御力を生かた持久戦をコンセプトに作られたのだろう。
「どうかしたの?」
最初は戦闘に参加しないと言い出したユウトに疑問を覚えたソフィアが首を傾げる。
「あくまで予想だけど、意外と見かけ倒しかもしれない」
「良く分からんが、時間稼ぎをすれば良いんだな?」
「頼む」
ユウトの返事と共に、ギルツが大盾を構えてゴーレムに向かった。
近づいてきたギルツを狙って、ゴーレムが拳を振り下ろす。それを盾で受け流すと、戦斧で伸びた腕を切り払おうとする。しかし相手は精霊銀、傷一つ付けることも出来ずに斧は弾かれてしまう。やはり倒すのは無理そうだが、時間稼ぎをする分には問題無いようだ。
それを確認すると、ユウトが二人に指示を出す。
「エリス、ソフィア。魔術の準備を」
「え……。ですが、精霊銀相手ではおそらく効きませんよ?」
「今のままならね。だけど、多分効くようになる筈……多分」
「……頼りない返事ね」
「予想だって言っただろ? とは言え、もし間違ってたら、本当に手の打ちようが無くなるんだけどな……」
ユウトは乾いた笑みを浮かべたが、二人の表情に悲観的な感情は含まれていなかった。
「分かったわ。用意しておく」
「はい」
例え自信が無さそうでも、やると言った以上やってくれる。そんな全幅の信頼を寄せて二人が頷くと、ユウトは白夜を抜いて、意識を集中し始める。
白夜は魔物の素材と鋼を混ぜた特別製のため、その強度や切れ味は並の剣とは一線を画するが、強度が桁違いの精霊銀を斬ることは不可能だ。しかし、ユウトにはそれを覆す手段がある。もっとも、使えるようになったのは最近で、現状では本当に使えるという程度の錬度でしかない。使うにはかなりの集中が必要なため、本来なら実戦投入するのはずっと先のはずだった。だが、今回の相手に限ってはその程度の完成度でも使う価値があった。
魔力を練る。相変わらず燃費の悪い“強化”のために膨大な魔力を練り上げる。
更にもう一度。もう一つの“強化”のために再度魔力を練り上げた。
ヴァルドが使っていた同時に複数の魔力を練る方法はユウトも聞いていたが、練る魔力が大きすぎるためか、同時に練ることはまだ出来なかった。しかし、既に練った魔力の維持は可能だった。もっとも、それでもかなりの集中力を必要とした。そのため、ギルツに時間稼ぎを頼んだのだ。
ユウトは二つの魔力を練り上げ、準備は整った。
「“風よ”」
風の加護と同時に“強化”を発動。ユウトの身体は一瞬で白銀の光を帯び、風を纏う。そして、地面を蹴った。
全身纏った風は推進力を生み、更に受けるはずの風の抵抗を打ち消すことで、突進の速度を僅かに上げる。ユウトの動きを察していたギルツは、既にゴーレムとの間から外れている。
ゴーレムとの間に阻む物が無いことを確認していたユウトは、躊躇無くゴーレムに向かう。ただ真っ直ぐに。
魔力の制御に集中力を割きずぎて、今はそれしか出来ないのだ。だからこそ、実戦投入を見送っていた。だが、その威力は既に確認済みだ。何せ、古代竜の鱗すら切り裂いたのだから。
最大限に突進力を高めたユウトは、数瞬でゴーレムの懐に辿り着く。そして、“武器強化”を発動した。
身体能力を向上させる“強化”と、武器の性能を向上させる“武器強化”。その二つの効果を同時に有する“全強化”が、ユウトの切り札だ。
「勝負」
魔力の光を帯びて、白と黒の軌跡を残しながら白夜が半円を描く。
ウェンディの時のように、無意識に発動したものとは訳が違う。今度は意識して発動させた完全版だ。“武器強化”による今の白夜の強度と切れ味はその時の白光を軽く凌駕する。
ユウト自身が磨き続けた技術と“強化”による尋常ならざる膂力、更に“武器強化”で並の鋼を遥かに凌駕する性能を持った白夜。その三つが合わさることで、ユウトの斬撃は精霊銀の強度を超えた。
最高峰の金属である精霊銀とユウトの渾身の一撃。――勝利したのは、ユウトだった。白夜が通り過ぎたゴーレムの身体には、剣閃の痕が残り、大きな亀裂を作っていた。
そして、その奥から、白銀色とは似ても似つかない鈍色が見えている。
――予想通りだ。
その色を確認したユウトが口元に笑みを浮かべた。
全身すべてが精霊銀ならばあの足音の重さはおかしい。だが、その中身が精霊銀でなければどうか。
精霊銀の性能を考えれば、中身まで精霊銀を使う必要は無く、表面にコーティングするだけでも十分な耐久力を発揮する。もっとも、この迷宮を作ったのが大魔導師であることを考えれば、何かしら特殊な細工をして重量を調節した精霊銀という可能性もあったのだが、それは考えすぎだったようだ。
「エリス! ソフィア!」
ダメージが大きかったからか、壊れかけた機械のようにガタガタと震え始めたゴーレムの前から飛び退いたユウトが声を張り上げる。
ゴーレムは全身を精霊銀で覆っているため、魔術の類はほとんど効果が無いが、その精霊銀の無い箇所に関しては話が別だ。
「分かってるっ!」
既に大量の魔力を練っていた二人が、イメージを固めていく。先に動いたのはエリスだった。
「傷を広げますっ! “エクスプロード”」
エリスが使ったのは爆裂の魔術。
轟音と衝撃破を放ちながら、ユウトの付けた傷の内側で大きな爆発が起こる。精霊銀ではないその箇所は直に爆発を受けて、内側から全身にダメージを与える。それと同時に、衝撃によって無理矢理広げた傷口が更に大きく開いていた。まるで的を大きくしたように。
「ナイスよ、エリス! “テンペスト”」
続いてソフィアが魔術を放つ。
細い竜巻が真っ直ぐにゴーレムの傷口を穿ち、抉り、竜巻の纏う雷がその周囲を焼き払う。前にウェンディの放った風のブレスをソフィアなりにイメージし、威力不足を補うためにアレンジしたものだった。
“テンペスト”が消失すると、傷の内側から煙を立てたゴーレムの姿があった。最早残骸となったゴーレムの内側は暴風によって抉られた跡がある。しかし、さすがの精霊銀と言うべきか、内側がそんな有様になりながらも、外装にあたる精霊銀の部分には全く魔術による影響が無かった。
それを確認したエリスとソフィアが肩を落とす。
「……やっぱり、これでも駄目なのね」
「精霊銀を魔術で破るのは不可能なんでしょうか……?」
「いや、うん。そうかもね……」
あれだけゴーレムの内部を滅茶苦茶にしておきながらシュンとしている二人に、ユウトが顔を引き攣らせる。精霊銀で全身を覆っていたゴーレムだから良いが、あれが単に鎧を着けただけの人間だったら、鎧は無事だろうが人間の方はミンチだろう。
最強とも言われる近衛騎士を殺し得る魔術を使えるというのにまだ不満とは、恐ろしい。
とは言え、まだこれは、おそらくウェルが言っていた半分でしかない。例えば、“テンペスト”は風竜のブレスと似ているが、その威力はまだウェンディのには及ばない。アレンジを加えて尚それなのだから、根本的に出力不足なのだ。その出力不足を補う秘密は、ウェルがやっていた魔力の変質にある……はずだ。だが、どう変質しているのかが分からないため、どれほど試しても再現出来なかった。
「なんか二人にひいてるみたいだが、お前も大概だからな」
女性陣に戦慄しているユウトに声をかけたギルツが、ユウトの付けたゴーレムの傷口を見る。その中身は精霊銀ではなかったとはいえ、コーティングという程薄い訳でもない。少なくとも、鎧というには厚すぎるほどの厚みの精霊銀を外側に備えていた。これを見る限り、今のユウトが斬れない物は無いかもしれない。
ユウトの“全強化”、エリスの“エクスプロード”とソフィアの“テンペスト”。これらがウェルの助言を受けて、鍛錬を続けた成果だ。
とはいえ、実際のところはそう特別な何かをしたわけではない。本来の魔術に立ち返っただけなのだ。想像力の欠如と言ったウェルの言葉の真意は、既存の概念に囚われすぎているということだった。
魔術は、魔力をイメージした事象に変換する。しかし、本来は自由なはずのイメージが、既にパターン化されたものに縛られていた。だから、誰も“エクスプロード”や“テンペスト”のような魔術を使えなかった――使わなかったのだ。エリスとソフィアはそのパターン化されたイメージを払拭し、自由なイメージを持てるようになった。今の二人ならその二つに限らず、今までの使っていた魔術を超えた多彩な魔術をイメージし、使うことが出来る。
そして、既存のイメージに囚われていたのは魔術だけではない。ユウトの“全強化”も、“強化”は身体能力の向上だというイメージから逃れた結果だ。
こうして、ユウト達は大きな成長をすることが出来た。だが、ウェルも言っていた通り、その助言は三人にしか意味が無いものだった。
「本当に、嬢ちゃん達にまで差をつけられたな……」
そう小さく呟かれた声は、ユウトの耳には届かなかった。
「え?」
「なんでもない。それより、こいつは消えないのか――」
と言った直後、ゴーレムの姿が消える。
「これは……」
「まさかの、だな」
ゴーレムが消えた場所に残っていたのは白銀色の――精霊銀のインゴットだった。その直後に、部屋の奥に新たな陣が現れる。青白く光る陣は、ゴーレムを呼び出した物とは違う種類らしく、新たな敵が出てくることは無かった。
「この陣、もしかして……」
何も出てこないということは、逆に何かを送るものなのではないか、と考えたところで、風が吹いた。
「その陣に乗れば、更に奥に転移出来るはずです。ですが、ここより先は私も把握していません。どんな危険があるかも……」
風に乗って届いたのは心配そうなウェルの声だった。
「まだ先があるみたいだな……」
考えてみれば、あのウェルですら全容を把握していないと言っていたのだ。こんな短期間で踏破できる程度な訳が無い。
ここのゴーレムも厄介ではあったが、倒すことは出来た。ユウト達なら大丈夫だとウェルも思っていたのだ。だが、ここから先はその見通しも立たない。しかも、ウェルが把握していないということは、その風が届かない場所ということであり、ユウト達の状況を知ることも出来ないため心配なのだろう。だが、その心配は無用の物だ。
「まぁ、元より迷宮の踏破が目的ではありませんし、戻ります。良いよな?」
仲間に向けた問いは、一も二も無く賛同された。
元々鍛錬のために来ているのだ。その鍛錬も上手くいったと言えるし、最後の最後に思いがけない物が手に入った。目的は十分過ぎるほどに達成することが出来た。
いつの間にか塞がれていた入り口も開いている。ユウト達は青白く光る陣を背にして、元来た通路を戻り始めた。




