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第79話 大魔導師の迷宮


 ユウト達はウェルに示された道を暫く進み、その先にあった階段を降りる。そして、降りた先にあったのは、大山脈の地下に存在するとは思えない光景だった。


 「これは、凄いな……」

 「ここだけでも、大魔導師様がどれほどの叡智をお持ちだったか分かりますね」

 「そうね。こんな場所が作れるんですもの」


 それを見たギルツ達が感嘆の声をあげた。

 何か特別な物があったと言うわけではない。眼前に広がるのは、単なる通路だ。しかし、見ただけでアルシールの文明レベルを超えた技術で作られたと分かる。地下であるはずのこの場所にありながら床も壁もコンクリートか何かで舗装されたように綺麗な表面をしており、壁の所々には強く発光した場所があって、それが光源となっている。単に通路を掘るだけならば兎も角、ここまで綺麗に整備された通路を造るのは現在の技術レベルでは不可能だった。

 そんな中、ユウトはギルツ達とは別の意味で驚いていた。

 ――リアルダンジョンかっ!?

 ユウトにとって、ここはまさにイメージする通りのダンジョンだった。もっとも、ダンジョンらしい様相とはいっても、実際にダンジョンとして作られた訳ではない。ウェルが言うには、ここはかつて大魔導師が作り上げ、始祖竜に選ばれた者の鍛錬の場とされているということだった。その構造は複雑で、ウェルですらその中を完全に把握していない。そういう意味では迷宮と呼べるだろうし、ダンジョンというのもあながち間違いではない。そして、そういったものには、進行を妨害する相手がつきものだ。


 「……ウェルの言う通りみたいね。来たわよ」


 真っ先に“探査”で気が付いたソフィアが警戒を促した。少し遅れて、ユウト達の耳にガチャガチャという音が届く。同じ音のため分かり難いが複数の音が重なっている。その音源は少しずつ近づいて、やがて通路の先からその姿を現した。

 ユウトではないが、ダンジョンといえばモンスターが出るのはお約束だ。だが、モンスターというのは姿形が様々で、この世界における魔物と同系統とは限らない。


 「……鎧、ですね」

 「鎧ね」

 「鎧だな」


 金属がぶつかり合う音を立てながら姿を見せたのは、長剣と盾を持った鎧と弓を持った鎧だった。動く鎧(リビングアーマー)とでも呼ぶべきか。あくまで生物としての姿を持つ魔物とは全く方向性の違う相手に、ギルツ達が呆然とする。まさか無機物が敵とは思わなかったのだろう。しかし、元の世界でゲームや漫画に馴染みのあるユウトは、そういうこともあるだろうと思っていた。だが、想像の範疇とはいえ実際に目の当たりにすると、鎧が勝手に動いているというのは興味深い光景だった。


 「やっぱり中身は空なのか……」

 「確かに、鎧の隙間からは中に誰かが入ってるようには見えないが。……ちなみに、あれに魔力はあるのか?」


 しみじみと呟いたユウトにギルツが答える。魔力の有無を確認したのは、あれを魔物と同視して良いものか迷っているからだ。


 「ある。だけど、魔物とは少し違う感じがするな。というか、周囲の魔素が強いせいか“探査”が効き難いな」


 リビングアーマーからは間違いなく魔力を感知できる。しかし、魔物のように体内に魔力を持っていると言うよりは、魔力で覆われていると言うべきか。とはいえ、とりあえずそこはあまり問題ではない。それよりも、リビングアーマーだけでなく、この通路自体がかなりの魔力を帯びているということの方が問題だ。

 おそらくは、リビングアーマーが動いている理由も迷宮自体が持つ魔力が関係しているのだろう。ただ、その魔力の影響で、空気中の魔素が異常に濃く、魔力を感知する“探査”が阻害されてしまっているのだ。近くならばそれほど問題は無いが、離れるほどにその精度が格段に下がっており、その範囲も普段の半分以下まで落ちていた。

 もっとも、通路という構造上、“探査”の効果が落ちていてもそれほど大きな影響が無いのは幸運だった。


 「基本的に警戒するのは前後だけで済むし、そう不安がる必要も無いだろう。それより――」

 「ああ。中身が無いなら、どうやって倒せば良いんだろうな……」


 リビングアーマーを見据えながら、ユウトとギルツが溜め息を漏らした。

 人間が鎧を着込んでいるなら、中の人間を倒せば良い。だが、鎧自体が相手の場合、どうすれば倒せるのか。鎧には痛覚も無ければ血も流れない。鎧を斬ろうと、叩き潰そうと、事実上死ぬということが無いのだ。不死の兵――という言葉が頭を過ぎる。

 直後、弓のリビングアーマーが弓を構え、矢を番えた。


 「来るぞっ」

 「防御します。“ウィンドウォール”」


 ギルツの言葉から少し遅れて、エリスが風の壁を前方に展開する。リビングアーマーの射た矢が風の壁に阻まれて止まり、地面に落ちた。次の瞬間、風の壁が解除され、ユウトとギルツが飛び出した。


 「とりあえず俺は鎧の隙間を狙う。ギルツは鎧自体に攻撃を」


 横を走るギルツに指示を出す。

 戦ったことの無いタイプの相手だ。一先ずどこを攻撃すれば効くのかを調べる必要があった。


 「了解。狭い通路なら得意分野だ。嬢ちゃん達は任せとけ」

 「任せた」


 ユウトが笑みを浮かべて短く答えた。

 ギルツの言葉は、好きに動けということだ。先に進めば話は別だが、ここはまだ入り口付近であり、背後から襲われる心配はまず無い。そして、通路自体は精々三、四人が並べる程度の幅しかなく、前衛を無視して後衛に向かうのはその構造上難しい。ギルツが盾を構えて中央に陣取れば、ギルツを越えて後衛の二人に敵が向かうことは無いだろう。だから、比較的危険が少ない今のうちに、相手の戦力や戦い方を確かめ、今後の参考にしようという意図があった。

 白と黒の刀身を持つ刀――白夜(ビャクヤ)を抜いたユウトは、リビングアーマーに目を向ける。

 ――剣が三体と弓が四体。鬱陶しい後衛を先に潰したいところだけど……。

 援護されれば邪魔になるし、弓ならばギルツの頭上を越えてエリス達にも届く。魔術が使える二人ならば、そうそう矢に撃たれることは無いだろうが、危険は極力排除しておきたい。しかし、狭い通路で後ろに敵が行き難いというのは、相手にとっても言えることだ。剣のリビングアーマー三体を相手にユウトがその脇を抜けるのは不可能だろう。

 ならば先に数を減らすか、陣形を崩すかしなければならない。

 そう判断したユウトは“強化”の出力をあげて、地面を蹴った。ギルツを置き去りにして猛然と駆け出したユウトに、剣のリビングアーマーが反応する。

 それを確認したユウトは、空いている左手で飛刀の柄を握り、柄から抜く動作のまま投げ放つ。

 ――当たれば良し、当たらなくても良し。さぁ、どう対応する?

 飛刀の向かう先は兜の正面、空いている顔面部分だ。本来ならば視界を確保するために空いているのだが、中身の無いリビングアーマーに必要なのだろうか。なんにせよ、鎧の内側に攻撃を通す格好の箇所であるのは間違いない。

 “強化”された腕力で投げられた飛刀は、物凄い速さで先頭のリビングアーマーに迫る。しかし、リビングアーマーは盾を眼前に構えて飛刀を弾いた。

 ――防御したか……。見えないだけで中身があるのか? それとも、鎧の内側に刺さるのを嫌がったのか?

 敢えて防いだのならば、防ぐだけの理由があるということだ。ならば、少なくとも攻撃が全くの無意味ということは無いのだろう。

 ユウトは姿勢を落とすと、盾で視界を塞いだリビングアーマーの足元に踏み込む。がら空きになった右脇の下から白夜を斬り上げて、剣を持った右腕を付け根から斬り飛ばした。

 斬った感触では、鎧以外の何かがあるようには感じなかった。中身があるという可能性はとりあえず除外しつつ、すかさず追撃に移ろうとしたが、両脇にいたリビングアーマーが盾を突き出しながらユウトの前に飛び出してきた。


 「“風よ”」


 左右から挟まれるようになったユウトは風の加護の力を借りて、勢いづいていた体を無理矢理後ろに引っ張り、数歩分飛び退いた。

 ――なるほど。

 リビングアーマー一体の片腕しか奪えなかったが、ある程度の情報を得ることが出来た。

 まず、頭は単なる飾りではなく、視界は人間と同じらしい。リビングアーマーはユウトの攻撃に全く反応しなかったが、位置的に盾で隠れて見えなかったのだ。もっと別な――例えば第三者的な視点から見ているのであれば、気付けたはずだ。

 次に、個々が連携しているということ。片腕を切り飛ばした直後に他の二体がサポートに入った。バラバラに動いているのならば、ああも迅速なサポートは出来ない。

 そして、これはユウト自身のことだが、風の加護の効果だ。風に乗って飛んだり移動したりというほどの強い効果は見込めないが、移動のサポートくらいならば出来るようだ。ちなみに、シルはずっとユウトの肩に乗っていたが、リビングアーマーが現れた辺りからマフラーのように首筋に巻き付いている。肩に乗っていた時もそうだったが重さを全く感じないので、ウェルがこの姿に変えたときに何かしたのだろう。

 一瞬の間にこれらのことを再確認していると、剣のリビングアーマーから離れたユウトを幾つもの矢が襲う。打ち落とそうと白夜を構えたところで、背後から飛んだ火の矢(ファイヤアロー)が降り注ごうとした矢を焼き払った。


 「矢は任せて。全部焼き払うわ」


 チラリと後方を見ると、エリスとソフィアが頷いた。

 二人はリビングアーマー相手に魔術では効果が薄いと判断したため、援護に徹することに決めていた。魔術は四つの属性に大別されるが、その攻撃は結局のところ、火で焼く、氷で凍らす、風で斬る、土での打撃というものか、それに類するものになってしまう。だが、これらは鎧であるリビングアーマー相手ではあまり意味が無い。


 「頭も動かすのも良いが、足が止まってるぞ」


 足を止めたユウトを抜き去り際に、ギルツが皮肉めいた言葉をかける。そのままギルツはリビングアーマーに突っ込んで、盾を叩き込んだ。


 「ちっ。こいつら思ったよりも……」


 しかし、殴りつけた盾を盾で受け流された。動き自体はさほど早くはないし、力も強くないが、技術はかなりのものだ。飛び出したギルツを三体のリビングアーマーが半円に囲む。片腕を失って盾しかないリビングアーマーを防御に集中させ、残り二体で攻撃するつもりだ。

 直後、その通りに二体のリビングアーマーがギルツに斬りかかる。


 「ギルツ。鎧自体を破壊する方が早そうだ」


 そこでギルツに追いついたユウトが、一方の剣を白夜で弾きながら淡々と告げる。

 片腕を斬り飛ばしたことがどれほどのダメージになったかは分からないが、落ちている片腕を取りに戻る様子が無いため、繋ぎ合せれば元に戻るということでもないのだろう。なら、最悪バラバラにすれば戦闘不能には出来る。


 「簡単に言うがな……」


 もう一方の剣を盾で受けたギルツが苦々しい表情を浮かべる。

 そもそも金属である鎧を破壊するのは言うほど簡単ではない。しかも、相手はそれ自体が動き、連携して攻撃してくるのだ。ただの鎧を壊すのとは訳が違う。


 「分かってる。薄いところならまだしも、まともに斬るのは俺もキツイし」


 先程脇の下から肩にかけて腕を斬り飛ばしたが、脇の下は空いていたので実際に斬ったのは肩の部分だけだ。斬れないことも無いだろうが、胴体を真っ二つ、というようなのはあまりやりたくない。


 「じゃあ、どうするんだ?」

 「ギルツはいつも通りに。俺は手数を増やして削ってみる。試したいこともあるし」


 そう言うと、ユウトが白夜を鞘に納める。代わりに右手で脇差を、左手で飛刀を抜いた。そして、僅かに視線を上に向ける。丁度飛んできた矢を火の矢(ファイヤアロー)が迎撃したところだ。先程からずっと、時折飛んでくる矢をエリスとソフィアが確実に焼き払っている。この調子なら頭上から矢に襲われる心配はしなくて良さそうだ。

 ――それにしても、仲間ごと撃たないのはどういう理由なのかね。

 矢の勢いを見る限り、鎧を貫けるとは到底思えない。どうせ弾かれるなら、剣のリビングアーマーに当たるのもお構い無しに撃つことも出来るはずなのだが、どうしてなのかそれをする素振りが無い。連携を重視しているところもそうだが、どうにも単に敵を排除するという以上の意図があるように思える。


 「ま、それはそれだ。考えるのは後にするっ」


 余計な思考を排除して、目の前のリビングアーマーに接近する。敢えて速度を落とし、リビングアーマーの攻撃を誘う。

 ――乗ってきたな。速度差を不自然に思わないってことは、それほど頭が良いってわけでも無いよなぁ。

 振られた剣を僅かな動きで避けると、伸ばされた腕の関節――肘の内側に逆手に持ち替えた飛刀を突き刺す。リビングアーマーの右手を封じたのを確認してから、相手の右側に回り込んで、今度は脇の下から脇差を突き刺して、抉るように捻る。ガチンッという音がして鎧の隙間を無理矢理広げると、右腕がぷらりと下がった。

 リビングアーマーは鎧部分が繋がっていなければ体として認識されない。切り離された腕が全く動かないのがその証拠だ。そのため、斬るのではなく、繋がりを外す方向でやったのだが、上手くいった。

 直後、飛刀から手を離し、鎧を掴む。


 「だあぁぁぁっ!」


 瞬間的に“強化”の出力を上げて、片腕でリビングアーマーを持ち上げると、勢いよく壁に叩き付けた。


 「ギルツっ!」

 「おぉぉぉっ!」


 背後にいたギルツが反転して、半ば壁にめり込んだリビングアーマーに走り寄り、戦斧を振りかぶる。ギルツが後ろを向いた直後、斬りかかろうとしたリビングアーマーには、ギルツと入れ替わるように体を反転させたユウトが飛刀を投げつける。盾で飛刀を弾かれたが、追撃を防ぐことは出来た。

 すると、背後で爆音が鳴った。ギルツの戦斧が壁ごとリビングアーマーを砕いた音だ。


 「……な、え?」


 しかし、リビングアーマーを倒したはずのギルツが動揺した声を漏らす。


 「どうしたっ!?」


 ギルツに背を向けたまま、ユウトが問う。後ろを向いて確認したいところだが、リビングアーマーから目を離すわけにはいかない。


 「――鎧が消えた」

 「はぁ……。はぁっ!?」


 振り返ろうとして、即座にその行為の危うさを思い出してグッと堪えた。だが、そのせいでほんの一瞬、眼前のリビングアーマーから注意が逸れた。


 「っ!?」


 直後、前衛のリビングアーマー二体が道を開けるように端に寄る。すると、開けた空間を直進してくる矢が見えた。ユウト自身が死角になるため、エリスやソフィアからは見えていない。咄嗟に白夜を抜いて矢を斬り落とす。それは一本では終わらず、次々と飛来する矢を全て落とし、ようやく止んだところで、追撃を警戒――。


 「……え?」


 しようとしたのだが、ユウトが目にしたのは颯爽と通路を逆走していくリビングアーマーだった。


 「なんて見事な撤退……って、あれ? 何でっ!?」

 「それは俺が聞きたい」


 予想外の事態に驚いていると、戦闘態勢を解いたギルツが同意する。

 どことなく消化不良というか、納得いかない部分は多いものの、とりあえず戦闘が終わったのは確かだった。後方にいたエリスとソフィアも、まだ多少警戒はしながら、ゆっくりと近寄って来る。


 「どういうこと? 何があったの?」

 「何かあったというわけでもないんだが、戦況が不利だと判断して引いた……と見るべきか」

 「あの鎧が、ですか……?」


 誰もが腑に落ちないという顔をしている。

 確かに冷静に戦況だけ見れば、前衛の一体がやられ、もう一体は片腕を失ったことで、前衛の戦力は半分削れたともいえる。普通、その状態では戦闘を継続することは難しく、逃げられるなら逃げるのが当然だ。だが、それは死を恐れる生物の発想だ。相手はリビングアーマーであり、動いてはいても生きているとは言い難い。そんな相手が逃げる選択を取るというのは、想像の範囲外だ。

 ――そういう風に指示を受けてるのかもな……。

 しかし、落ち着きを取り戻したユウトが思い至ったのは、事前に一定の条件下で一定の行動を取るようにインプットされているケースだ。ロボットのようなものと言えば分かりやすいだろう。ユウトの想像するロボットとは随分と趣向は違うが。

 同型機と連携し侵入者を排除、達成が困難になったら撤退。という指示が予めされていたなら、色々と納得出来る。


 「ところで、ギルツは何に驚いていたんだ?」

 「あれだ」


 質問の答えに指を差す。――が、そこには何も無い。


 「どれだ?」

 「何かおかしくないか?」

 「ん……? あ、さっき倒した鎧が居ない。連れてったのか?」


 そう、ギルツが指を差した場所は先程ユウトがリビングアーマーを叩き付けた壁だ。ギルツがリビングアーマーを破壊したはずだが、そこに残骸らしき物は無かった。


 「いや。それ以前の問題だ。消えた。と言ったろう?」

 「はい。私達も遠目にですが見ていました」

 「ええ。驚いたわよ、急に鎧が消えるんですもの」

 「……聞き間違いじゃなかったか」


 ギルツの言葉に同意するエリスとソフィアに、ユウトが諦観の溜め息を漏らした。

 先程のギルツの言葉を覚えてはいたが、鎧が消えたというのは何かの間違いか、聞き間違えたのだろうと思っていた。――というか、消えたという事実から目を逸らしたかった。この迷宮は、どうにも一般常識からかけ離れたところが多すぎる。異世界人のユウトがこの世界の常識を語るのもおかしな話だが。


 「で、これが代わりに落ちた」

 「はぁ?」


 疑わしげな目を向けながら、ギルツの差し出した物を手に取る。


 「石……。いや、鉱石か? 微かに魔力――魔素を帯びてるみたいだな」

 「魔力を帯びた鉱石って、精霊銀の原材料だったりするのか?」

 「流石にそこまでは……。だけど、珍しい物なのは確かだと思う」

 「ふむ」


 魔素を帯びた鉱石と聞いて喜色を浮かべたギルツが肩を落とす。 

 ――っていうか、何だこれ。本当にダンジョン……どころか、ほとんどゲームだぞっ!?

 地下迷宮にモンスター。それだけならリアルダンジョンで済むが、倒したモンスターが姿を消し、代わりにアイテムをドロップする。そこまでいったらゲームの域だ。

 ――まさか、死んだらどこかに戻されるだけとか無いだろうな……?

 そんな危機感すら覚える。試そうとは思わないが。

 ユウトは溜め息を吐いて、他の面々をそっと見る。

 色々と不思議がってはいるようだが、ユウトほど気にはしていないようだった。大魔導師という伝説の人物が関わっていることで、どんな不思議があってもおかしくないという認識なのだ。逆に、ユウトはそこまで吹っ切れていない上、ゲームという現状に良く似た物を知っているせいで、余計に気になってしまうのだろう。

 ――これも今は考えても仕方ないことか。それよりも、思った以上にここは厄介だ。

 ユウト自身の疑問は脇においておくとして、ここの対策は必要だ。入り口での一戦目ですらあれなのだ、大魔導師が造ったという迷宮の難易度は思った以上だ。今回は無傷で敗走させることは出来たが、ここがユウトの想像するダンジョンと似たような物だと考えれば、奥に行くほど敵が強くなると見て良いだろう。力押しだけではそのうち手詰まりになるのは容易に想像できる。


 「とりあえず。ここの対策を改めて考える必要がありそうだ」


 ユウトがそう提案すると、ギルツ達も頷いた。、


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