第8話 まさかの裏ボス登場!?魔王幹部大降臨!
――ドオオオオンンッ。
激しい砂煙をあげながら、ドラゴンは完全に沈黙して倒れ伏した。
エルミアが、拳一本で打ち倒したのだ。
【コメント】
「すげえええええええ」
「おめでとー!」
「おめ!」
「ぱちぱちぱちぱち」
「もう拳ぽかんじゃん!強すぎ!」
「まさかの素手」
「杖さん今までありがとー」
「エルミア、よくやった。最高に輝いていたぜ!」
「社長っ。私、やりました!」
歓喜の表情で飛びついてくるエルミアを、俺は確りと受け止める。
そんな俺たちの様子を見て、リュシエルは憑き物のとれたような笑みを浮かべた。
「参ったな。完敗だ、エルミア……そして、社長」
「ふふ、私の活躍、認めて貰えましたか?」
「ああ。素晴らしい戦いだった。何より、俺たちを助けに来てくれた君に心を打たれた」
薬草などで回復した他のパーティメンバーも、彼女へ声をかける。
「悪かったわね。私たち、貴女への嫉妬で大切なものを見失っていたわ」
「エルミアは命の恩人だ。礼を言う。そして、今までの非礼を詫びさせてくれ」
「本当にありがとう、エルミア!」
彼らの言葉に、エルミアは照れたようにはにかんだ。
「いいんです。皆さんが無事で、本当に良かった。それにダンジョン配信を課題にしてくださったことには感謝しているんです。おかげで、私――社長に出会えました!」
エルミアが俺の腕をぎゅっと引き寄せて、輝く笑顔を見せる。
「はははっ。さて、これにて一件落着――」
俺が配信を纏めようとコメント欄へ顔を向けた途端、異変に気付いた。
【コメント】
「ねえ、湖ってあんな色だった?ギミック?」
「良い話だなぁ。感動だ!」
「なんか湖ヤバくない?」
「気づいて!気づいて!社長!」
「うしろうしろー!!」
「……!! 全員、とにかく湖から離れろ!!」
俺の叫び声に反応して、その場の全員が地底湖から距離をとるように飛び退く。
逃げながら確認すれば、地底湖の水は禍々しい紫色へと変化し泡立っていた。
そして次の瞬間、強烈な魔力を噴き出しながら湖面が勢い良く盛り上がる。
――ザバアアアアアッ!!
激しい水しぶきの中から姿を現したのは、漆黒の鎧を纏った身の丈2メートルほどのガタイの良い男。
頭の角は、この世界の魔族の特徴だ。
「我が竜を討ったのは、貴様か」
その魔族の男が声を発しただけで、空気がびりびりと振動するような威圧感があった。
男は黒い炎を周囲に渦巻かせたまま、宙に浮かんでいる。
「こ、こいつは、まさか……炎竜将のゼラ!?」
顔を青ざめさせながら声を震わせるリュシエルに、俺は慌てて問いかける。
「知っているのか!?」
「ああ。魔王軍幹部の一人だ。かつて北のS級パーティが遭遇して、全滅したって噂の……」
【コメント】
「やばいやばいやばいやばい」
「逃げて、マジで逃げて」
「誰か王国に通報しろ。魔王幹部は警報級のはずだろ」
「魔王軍幹部とかはじめてみた」
「全滅配信とか嫌なんだけど。全力で逃げろ!!」
状況を認識した俺たちが一斉に逃げようとした瞬間、周囲が高い黒炎の壁に覆われた。
「逃がさぬ。我が竜の仇、ここで受けて死ぬが良い」
「くそっ……おい、お前達、なんとかならないのか?」
「無理よ! この炎は結界みたいになってる。転移魔法も全部弾かれるわ!」
「……!」
成程、万事休すと言う訳だ。
何とか生還する方法を必死に考えている俺の横で、エルミアが呟いた。
「私のせいだ」
「エルミア?」
「わ、私が調子に乗って、ドラゴンを倒したから……。社長は、逃げようって、言ってくれたのに……」
今にも泣きだしそうな顔で、エルミアはガタガタと震えている。
自分の判断で全員の命を危険にさらしたことが、彼女には耐えられなかったのだろう。
俺はそんな彼女をじっと見つめ――そして、決心した。
「……エルミア、それは違うぜ」
「えっ」
「俺は君に、行けと言った。つまりこうなったのは、俺の責任さ」
「そんな、社長」
「そこで相談なんだが、エルミア。最高のバズを狙わないか?」
「こ、この状況で、何を言っているんですか!?」
「こんな状況だからさ! どうせ放っておいても、俺たちは死ぬ。なら、もう一回だけ、俺を信じてみないか?」
俺の言葉に、エルミアが息をのむ。そして暫くの沈黙の末、頷いた。
「分かりました。やります!」
「よし。やることは簡単だ。最高の戦いで、最強の熱狂を作り出す!」
「最高の戦いで、最高の熱狂を?」
「そうだ。圧倒的格上に立ち向かう姿――それが人の心を強く動かし、数字になる。数字は決して、裏切らない!」
エルミアはギュッと拳を握り締めると立ちあがった。
それは死地に向かう勇敢な戦士のように凛と美しい佇まいだった。
「炎竜将ゼラ! 私が相手です!!」
Fever Gage ★★★★★★★★☆☆




