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第7話 助太刀だ!Vtuberエルミア、ボスドラゴンを討伐せよ!

 地底湖の最深部には、地獄のような景色が広がっていた。

 虫の息の冒険者たち4人へ、巨大なドラゴンがとどめをさす為に迫っていく。


「みんな、すまない。本当に、すまなかった」


 エルフパーティのリーダーリュシエルは膝をつきながら、満身創痍のセレスティナの身体を抱き上げた。


「俺の判断が甘かった。まだ、ドラゴン討伐は早すぎたんだ」


「良いの、謝らないで。全員で決めたことじゃない」


「そうだぜ、リーダー。まだ、終わっちゃいないさ」


「ああ……だが、ルミエルは意識も戻らない……」


「転移魔法も絶望的ね」


「そうとなれば――俺は、リーダーとして最後の使命を果たす」


「えっ、ちょっと、何を言っているのリュシエル!?」


「ガルディアス、二人を頼んだ。俺が時間を稼ぐから、何とか出口まで逃げるんだ」


「待てよ、リーダー! そんなこと、俺たち……!」


「リーダー命令だ。生還するにはそれしかない」


 リュシエルはセレスティナをガルディアスに預けると、最後の魔力を振り絞って立ちあがる。

 そしてドラゴンへ向かって、持ち手の砕けかけた弓を構えた。


「来い、ドラゴン。この俺が相手だ!!」


 万全の状態ですら、手も足も出なかった相手である。

 それにボロボロの状態で対峙するのは、もはや捨て身以外の何者でもなかった。


 それでもリュシエルは一歩も引こうとはしなかった。

 注意を引かれたドラゴンが地を蹴り、勢いよく彼の元へ牙を剥き出しながら突進してくる。

 


「――ッ、はぁ!!!!」



 そこに響いたのは、少女の勇ましい掛け声だ。

 続いて、振り抜かれた杖がドラゴンの頭部に的確に命中する。



 ――グワオオオオオッ!!



 けたたましい唸り声を轟かせて、ドラゴンが地面へと倒れ伏した。

 完全に不意を突かれて、衝撃をもろに食らった為だ。


「お、お前は!」


 リュシエルは唖然としたまま、自分を助けた娘へ顔を向けた。


「エルミア!! どうして!?」


 名を呼ばれたエルミアは、少しだけはにかんでから、高らかに声をあげた。

 

「お助けに参りました、皆さん!」


「何故だ! 俺たちはお前を落ちこぼれだと見下し、パーティに入れなかったんだぞ!?」


「はい。それは、そう……悲しかった、ですけれど」


 過去を思い出すように視線を伏せた後、顔をあげたエルミアは晴れやかに笑っていた。


「だけど、それはエルフの里の常識ならば当たり前のことです。それにリュシエルさんは、魔法の才能がない私が戦闘で死なないように、パーティに入れなかったのでしょう?」


「……そういう面もある。だが、俺たちがエルミアに酷い扱いをしたのは事実だ」


「それでも、皆さんは私にとって同じ里の仲間です。素晴らしい魔法を扱えること、心から尊敬しているんです!」


「エルミア」


「だから――、助けます!」


 エルミアは杖を構え直すと、ドラゴンへと向き直った。

 地へ伏していたドラゴンは衝撃から回復し、ゆっくりと起き上がってくる。


「どうか見ていてください。魔法が使えないエルフでも……戦えるってことを!」



【コメント】

「かっけええええ」

「エルミアちゃんつよい!」

「いいこだ」

「応援」

「やったれ、やったれ!」



「さあさあ、そう言う訳だ! 俺たちは邪魔にならない所に避難するぜ!」


 二人のやりとりを見届けると、俺は颯爽と横入りしてリュシエルへ指示を出す。


「なっ、あ、お前は! 怪しい奴!」


「社長だよ。ほら、お仲間を連れて隅の方へ行くぞー!」


 俺はルミエルの身体を抱えてダンジョンの壁際へと運んでいく。

 その最中、エルミアへ顔を向けた。


「エルミア――、あとは任せた。世界をバズらせようぜ!」


 エルミアは、にこっと微笑んだ。


「了解です、社長!!」



 エルミアはドラゴンめがけて一気に踏み込んだ。

 低く、速く――地を滑るように距離を詰める。


「はあっ!」


 振り抜いた杖がドラゴンの顎を打ち上げる。

 鈍い衝撃音と共に、その巨体が僅かに揺らいだ。


「エルミア、良いぜ! 効いてるぞ!」


 続けざまに、エルミアは跳躍する。

 空中で体を捻り、今度は翼の付け根へ叩き込んだ。


 ――ドゴォッ!!


 ドラゴンは悲鳴のような唸り声をあげる。



【コメント】

「いっけー!」

「エルミアちゃんつよい!」

「いけるじゃん」

「がんばれー」

「ご覚悟!ご覚悟!」



 しかし、違和感を覚えたエルミアの表情が曇った。


「……っ、浅い!?」


 ドラゴンはその言葉を証明するように、力任せに翼を振り払った。

 その一撃だけで、エルミアの身体が大きく弾き飛ばされる。


「きゃあっ!!」


 壁に叩きつけられる直前、エルミアは何とか受け身を取る。

 だが、衝撃は重い。


「やっぱり……強い!」


 ドラゴンがエルミアの方へ顔を向け、大きく息を吸い込む。

 灼熱のブレスが来る――!


「でも……!」


 エルミアは歯を食いしばり、前へ出た。


「負けませんっ!!」


 炎を掠めることなく踏み込み、エルミアはドラゴンの懐へ潜り込んだ。

 そして全身の力を込めて、杖を振り抜く。



「ご覚悟!!」


 ――ドオオオオンッ!!



 渾身の一撃が、ドラゴンの頭部へ再び直撃する。



【コメント】

「きた!やった!」

「ご覚悟!」

「ご覚悟!」

「杖ぽかんは半端ないぜ!」

「物理エルフ最強じゃん」



 コメントが過去一番の盛り上がりを見せる中、乾いた音が鳴り響いた。


 ――ピシピシッ。


「……え?」


 なんとエルミアの杖に、ひびが走っていた。

 度重なる衝撃に、耐え切れなくなったのだろう。


 ドラゴンがゆっくりと顔を上げる。

 その瞳は、まだ死んでいない。


「そんな!」


 咆哮と同時に振るわれたドラゴンの腕が、エルミアを弾き飛ばす。

 宙を舞う中で、彼女は必死に杖を握り締めた。


 しかし着地と同時に、それは限界を迎えた。



 バキッ。



 杖が、真っ二つに折れる。


「……あ」


 エルミアが小さく声を零し、その手が絶望したように震える。


「まずい、エルミア……!」


 俺は焦った。

 ここまでエルミアは杖の打撃をメインで戦闘をこなしてきた。

 強敵との戦いの最中でその精神的支柱が壊れ、動揺しない方が無理がある。


「もういい。ここまでだ。一度、撤退しよう!」


 撮れ高は大切だ。

 だが、それ以上に大切なのは演者の心と命。

 そこを見誤っては、配信活動は続けてはいけない。


 情熱が暴走しがちな演者を守ることも、プロデューサーの仕事なのだ。


「エルミア――」


 けれど、彼女は俺に向かって笑った。

 何かを決意した顔だった。

 それは捨て身などではない、確信と誇りに満ちた輝きに満ちている。


「社長、大丈夫です!!」


 俺は息をのむ。

 エルミアが何を考えているのかは分からない。分からないが……。


「……分かった。行け!」


 演者を信じることもまた、プロデューサーの仕事だ。


 杖を失い無防備になったエルミアに、ドラゴンが牙を剥き迫ってくる。

 エルミアは力強く真正面から踏み込むと、ぎゅっと拳を握り締めた。


 その固く握った拳を、ただ真っ直ぐにドラゴンの腹に叩き込む。



 ――ドン!!!!



 鈍く低い音が響いた。

 一瞬の静寂をおいて、ドラゴンの巨体がぐらりと揺れる。


 そしてそのまま――完全に気を失ったように、崩れ落ちていった。



Fever Gage ★★★★★★★☆☆☆

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