第6話 燃え上がる嫉妬!ダンジョン最深部ドラゴンの危機!
「大変です、社長!!」
朝配信も大盛況に終わり、宿屋で一休みすることになった昼下がり。
俺が次の配信の構想を組み立てていると、エルミアが部屋に駆けこんできた。
「どうした?」
「わ、私の、元仲間たちが!」
彼女が魔導板の画面を見せてくる。
<<エルフパーティ、ドラゴン討伐配信>>
――同接数202。
「ほう、なかなか面白そうだな!」
そこには4人のエルフパーティが地底湖ダンジョンに挑んでいる映像が映し出されていた。
「よし、休憩は終わりだ。エルミア、配信するぞ!」
「え、配信ですか!?」
「同時視聴配信だ!」
「同時視聴?」
<<【緊急配信】ドラゴン討伐エルフパーティ同時視聴枠【エルミアの元仲間たち】>>
「配信を見るだけの、配信ですか!?」
「そうとも。皆でわいわい、配信を眺めながら盛り上がるのさ」
「ふぇ……、でも、そんなので人が集まるのでしょうか」
「ふふん。ほら、見てごらん」
「あっ!!」
【コメント】
「1日2回配信ありがたい」
「エルミアちゃーん」
「同時視聴って何?エルフパーティってエルミアちゃんを虐めた奴ら?」
「ゆるせねー」
「まあまあ、のんびり見てようぜ」
「凄い、あっと言う間に人が集まっていく!」
「人間は皆、何かを共有して楽しみたいものなのさ。しかもエルミアの元仲間とくれば、リスナーの興味は満点だ」
「なるほど!」
エルミアに説明を終えると、俺は画面のリスナーに語りかける。
「さあ、世界をバズらせるぜ! 社長だ。緊急配信に集まってくれてありがとう。今日は、なんとエルミアの元仲間たちの配信を発見したので、皆で見ていこうと思う」
「皆さん、宜しくお願いします!」
「ただし、一つだけルールだ。悪口は厳禁だぜ。あくまで応援配信だからな。破った奴は、エルミアの杖ぽかんだぞ!」
「はわわ、しませんよぉ!? でも、皆さん、私の元仲間たちは、本当に強い魔法使いたちなんです。是非応援してあげてくださいっ」
【コメント】
「エルミアちゃんかわいい」
「なんて良い子」
「応援するか―」
「俺はエルミアちゃん一筋だよ!」
「支援」
エルミアの人柄もあり、コメントも上手くコントロールできた。
悪口配信は一定の視聴数は稼げても、最終的には人気の寿命を縮めてしまう。
――何より、俺が楽しくないからな!
「それじゃ、エルミア。エルフパーティの解説を頼む!」
俺はエルフパーティ配信の画面へ視線を戻しつつ、エルミアにお願いした。
「は、はいっ。前衛がガルディアスさん。強力な防御魔法を扱えます」
「エルフには珍しい大男だな! 力もありそうなのに魔法も使えるとは、なかなかやるな!」
「次に控えているのが、紅一点、魔法アタッカーのセレスティナさんです」
「これは美人だ! 長身から放たれていく強気の魔法攻撃、実に映える!」
「むう」
「エルミア?」
「何でもないですっ。後ろにいるのが、ヒーラーのルミエルさんです」
「的確なタイミングで全員の回復と補助を担っている。優秀だ!」
「そして最後尾にいるのがリーダー、弓使いのリュシエルさんです。エルフの里でも、彼より弓と魔法が上手な人はいませんでした」
「うーむ、なんて精密な射撃だ。しかも矢に魔法をかけて威力を倍増させている!」
「彼らは連携も完璧で、さまざまなダンジョンを踏破している、故郷の英雄なんです!」
「成程、これはそれも納得の実力だ!」
【コメント】
「意外とやるじゃん!」
「つえええ」
「凄い勢いでダンジョン進んでいくぞ」
「セレスティナちゃん美人!!」
「やきもちエルミア萌え」
エルフパーティの実力は本物で、道中のモンスターは次々に打倒されていった。
そしてあっと言う間に、最深部まで辿り着く。
「いよいよだな」
「ドラゴン、本当にいるのでしょうか――あっ!!」
エルミアが息をのんだ。
エルフパーティ達の前にゆっくりと姿を現したのは、建物3つ分はありそうな巨大なドラゴン。
吐息だけで、空気が焼けるように歪んでいた。
画面越しでも、その威圧感が伝わってくる。
「なっ、こんなに大きいなんて!」
「ほほう。事前情報より、随分強そうだな」
「リュシエルさんたち、大丈夫でしょうか」
「お、いきなり戦闘が始まったぞ!」
エルフパーティたちもドラゴンの迫力に暫し気圧されていそうだったが、すぐにリーダーの指示で体勢を立て直した。
ガルディアスが防御陣を展開し、その背後からセレスティアとリュシエルが連携攻撃を始める。
「いけるか!」
「ああっ、駄目です。ドラゴンが硬すぎます!」
渦巻く炎と爆裂矢の攻撃を真正面から受けても、ドラゴンは怯むことすらない。
それでもリュシエルは焦ることなく、ルミエルにバフの重ねがけを指示した。
――ガキインッ!!
その間に、ドラゴンの強烈な爪がガルディアスの防御陣へひびを入れる。
「危ないっ! ガルディアスさん!」
「これは間に合うか!? 一撃でもまともに食らったらまずそうな攻撃だぞ――!」
――パリイインッ!!
次の瞬間、防御陣が砕け散った。
ガルディアスにドラゴンの鋭い爪が迫る。
しかしそれを封じるように、リュシエルの巨大な炎の矢がドラゴンへ炸裂した。
「やった、間に合った!」
「よしよし、今度は効いているぞ」
ドラゴンは呻きながらよろめき、後退する。
そこへセレスティアが杖を掲げて、追撃の疾風の刃を叩き込んだ。
しかし、反撃はそこまでだった。
ドラゴンは激しく慟哭すると、その衝撃で疾風をすべて打ち消す。
そして地面から無数の鋭い岩柱を隆起させ、エルフパーティたちを容赦なく傷つけた。
「きゃああっ、みんな!!」
突然の展開に、エルミアの悲鳴が響く。
ガルディアスとルミエルは一撃で致命傷を受けた。
リュシエルはセレスティアを反射的に抱えて飛び避けたが、それでも二人も傷を負っている。
「一瞬で! なんて強力なドラゴンだ」
「みんな、逃げて! あああっ!!」
リュシエルはパーティを回収して撤退を試みているようだが、岩柱に阻まれ思うように動けない。
その努力を嘲笑うように、ドラゴンは彼らの頭上から悠然と炎を吐いて追撃を重ねる。
【コメント】
「ちょ、やばくない?」
「事故」
「放送事故だ」
「こわいこわいこわい」
「見てられない」
「誰か助けろ!」
「これガチで死ぬやつ」
「配信止めろって!」
あまりの壮絶な展開に、コメント欄にも戸惑いが広がっていく。
(この方向で伸びるのは良くないな。何とか流れを――)
俺が思案しかけたところで、エルミアが力強く立ち上がった。
「私……、行きます!」
「えっ?」
彼女の眼には、確かな意思が宿っていた。
「地底湖のドラゴンを倒して、みんなを救います!!」
Fever Gage ★★★★★★☆☆☆☆




