第9話 激闘、炎竜将ゼラ!ピンチで熱狂をつかみとれ!
「炎竜将ゼラ! 私が相手です!!」
エルミアからの宣言を受けたゼラは、地面へと舞い降りると炎を纏った拳を構えた。
俺たちの会話中に不意打ちで攻撃してこなかったところを見ると、厳格な武人タイプのようだ。
「そうか、ならば見せてやろう。格の違いというものを」
その分、真っ当な戦闘力は計り知れない。
俺は戦いの様子を見守りつつも、配信画面へと呼びかける。
「みんな、頼むぜ! エルミアを応援してくれ。どんどん動画を拡散だ。その数字が――力になる!」
【コメント】
「通報した。早く動いてくれ、王国!!」
「エルミアちゃん死なないで」
「こうなったら応援する!頑張れ!頑張れー!!」
「社長、盾になれ!!」
「拡散した!」
「エルミアちゃん、がんばれー!」
「俺も拡散したぞ!!」
――同接15万。
「はああああっ!!」
エルミアが気迫を込めて地を蹴り、ゼラへと飛び掛かる。
全く動く様子のない相手へ、固く握った拳を全力で振り抜いた。
「軽い」
パシッ。
なんとエルミアの打撃が、片手で呆気なく受け止められてしまう。
「なっ……!?」
エルミアが驚愕に目を見開いたのと同時に、拳を掴まれて壁へと投げつけられる。
「きゃああっ!」
「受け止めるわ、リフレクション!!」
壁へ激突する直前で、エルミアの身体は魔法の防御陣に受け止められて難を逃れた。
「セレスティナさん!」
「俺たちも共に戦う。行くぞ!」
「おうよ!」
エルフパーティも戦いに加わり、共闘を始めた。
【コメント】
「熱い展開!」
「いけるか?頑張れ!」
「とにかく死なないで、エルミアちゃん!!」
「エルフも良い奴じゃん」
「いっけー!!」
――同接25万。
「爆裂矢!!」
リュシエルの矢を煙幕にして、エルミアとガルディアスが同時に攻撃を仕掛ける。
「効かぬ」
ゼラはその両方向からの打撃をあっさりと受け止め、吹き飛ばす。
「まだよ!」
その隙をついてセレスティナとルミエルが魔法で連携攻撃を叩き込む。
しかし、それすらもゼラは見抜いているのか、黒い炎は魔法攻撃を押し返して逆に彼らを焼き焦がす。
「うわあああっ!?」
【コメント】
「勇者チャンネルから来ました!何?これ、公式戦闘?」
「急に人増えてない?」
「王国の勇者チャンネルがリンク張ったっぽい」
「おおおっ、盛り上がってきた」
「いやでも普通にやばくない?リンク張ってないで助けに来て勇者!!」
――同接55万。
「弱い。弱い。弱すぎる」
ゼラは殆どその場から動くことすらしないまま、エルミアたち全員を相手していた。
それでもその力は圧倒的だ。
彼は傷一つ負うことはなく、反対にエルミア達は限界寸前に追い詰められていた。
「くっ……駄目だ。実力が違い過ぎる……」
リュシエルが膝をつきながら、絶望の言葉を零す。
「所詮、弱者がいくら群れても弱いままなのだ。お前達の戦いなど、遊びに過ぎぬ」
「そんなことない!!」
エルミアが血を吐きながらも言い返した。
「私は、私たちはいつだって本気です!」
「ふん。くだらん。人間は戦いを『配信』などという遊びで汚しているそうじゃないか。そんな邪念にまみれているから、強くなれないのだ」
【コメント】
「酷いこと言われてる」
「エルミアちゃんを虐めるな!」
「何とか逃げられないか?」
「勇者様、きてえええ」
「魔族は配信文化ないもんな……」
――同接76万。
ゼラの冷たい言葉に暫し黙り込んでいたエルミアだったが、やがて顔をあげて話し出す。
「確かに、邪念は正直、ありました。有名になれば、パーティに入れて貰えるって、そんな気持ちばかりで焦ってしまうこともありました」
彼女は満身創痍の身体で、声を張り上げた。
「でも!! 私が最初に冒険者を目指す切っ掛けになったのは、勇者様の討伐配信だったんです。あんな風にみんなに勇気を与えたいと、心から思ったんです!」
そして拳に力を込めて握り締める。
「私の力、見せてあげます。ご覚悟!!」
エルミアは最後の力を振り絞って駆けだした。
ゼラはそれを悠然と見据え、自らも拳を取り出した。
「愚かな。だが、覚悟は悪くない。介錯してやろう」
「はあああああっ!!!!」
【コメント】
「エルミアちゃん!」
「やばいよ、止めて、社長。止めて!!」
「こんなに悲しいご覚悟辛い」
「エルミア!」
「エルミアちゃん死なないで!!」
――同接87万。
エルミアとゼラの拳が激突する。
鈍い音が響き渡り、吹き飛ばされたのは――俺だった。
「ぐはっ」
「社長ぉ!?」
「なんだ貴様は!?」
そう、俺は二人が激突する直前に間に割り込んだのだ。
おかげでゼラの拳を正面から喰らってしまった。正直なところ、物凄く痛い。
「ふっふっふ。俺か? 俺は社長さ。真剣勝負に水を差して悪いな。ライバーを守るのも社長の仕事の内なんでね」
【コメント】
「社長おおおおお」
「信じてたよ、社長社長社長!」
「りある社長盾!」
「エルミアちゃん無事でよかった!」
「社長生きてる?」
――同接95万。
「そんな、社長、戦闘はからっきしだって!」
「そうとも。しかし、こんなこともあろうかと、防御に装備ポイント全振りしておいたのさ。おかげで一撃は耐えられたぜ。やはり数字は嘘をつかないな!」
「言ってる場合じゃないですよ! 二撃目は無理ってことじゃないですか!」
「まあ、そうなる」
「くっ。どこまでも我を愚弄するか、人間風情が!」
俺の行動に激昂したゼラが、憤怒に満ちた眼差しを向けてくる。
その怒りだけで周囲の空気が震え、びりびりと痺れが走る。
だが、俺は敢えて笑った。既に「勝機」は見出していたからだ。
「ゼラよ。お前は大きな勘違いをしているぜ」
「何っ?」
「配信は人を、強くするんだ!」
「馬鹿なことを!」
「邪念だってあるさ。認められたい気持ち、伝えたい想い、なんだってあるさ。だが、それの何が悪い! 本当の熱狂は、心から願うことで生まれるんだ」
「ふざけるな。心の乱れが世界を乱す。人間は悪だ!」
「笑止! それがお前達の考え方か? ならば、魅せてやるぜ――」
俺は唖然としているエルミアへ、自信満々に笑いかける。
「ここまでよく頑張ったな。後は俺に任せておけ。エルミアのおかげで、力が解放できる」
「えっ?」
【コメント】
「何をする気なんだ」
「期待」
「時間稼ぎとかじゃなくて?逃げた方がよくない?」
「社長、やれやれー!」
「がんばれー!!」
――同接100万!!
「さあ――祭りの始まりだ。みんな、盛り上がっていくぜ!!」
Fever Gage ★★★★★★★★★★
→→→→→→→ Fever Time!!!!




