第40話 同接勝負の行方はまさかの!? バズリアは永遠です!
ラブルピ女神はこうして地上世界から消えて行った。
――最後の言葉を聞くに、まさか本当に蒸発していないだろうな。
やや心配が残るが、僧侶たちが慌てた様子はないので、おそらく女神は無事だろう。
夢から醒めたような静寂を破ったのは、女勇者の凛とした声だった。
「驚いたよ。凄いね――君たちは」
ルピアから元の仮面男の社長姿に戻った俺は、その称賛に軽い調子で笑う。
「ふっ、そうだろう、そうだろう。今頃、気づいたかい?」
勇者は俺の言葉に瞬くと、次の瞬間に噴き出して笑い始めた。
「ああ、全く……Vtuberは、最強なんだね!」
少し柔らかくなった空気の中、エルミア、カリーナ、スラ子も表情を緩める。
そうして笑い合う俺たちへ、僧侶リリアは呆れたように告げた。
「笑っている場合じゃないわよ、もう。これから国は大変よ?」
その後ろにいた剣士フリードと武闘家バズも頷くが、二人ともどこか鎖から解放されたような、晴れやかな表情をしていた。
「そうだな。女神への反逆は重罪。たとえ、聖女や王子であってもだ」
「正式な審問の後、彼らには相応の処分が下るでしょう。僕たちが、責任を持って王都へ連れ帰ります」
王子と聖女は、既に乗り入れていた馬車の中に押し込まれていた。
名目は護衛なのだろうが、逃げ出さないように従者の神官たちがその周囲を見張っている。
【コメント】
「悪は倒された!」
「まあ、処分がどうなるかは分かんないけどな」
「少なくとも王子の力は弱くなるだろ」
「聖女はどうなるんだろうねー」
「一気に体制が変わりそう!」
「あっ……でも、バズリアは結局どうなるんですか!?」
エルミアがハッとしたように声をあげた。
「しまった、忘れてた! 同接数勝負の途中だったんだ」
「耐久配信の予定を変更して、こっちに来てたのよね」
「ううっ、みんな、堪忍な。うちのせいで……」
表情を陰らせるスラ子を見て、勇者と僧侶が顔を見合わせて肩をすくめる。
「何を言っているの、貴女たち。配信画面を見てごらんなさい」
僧侶の声に後押しされて、俺たちは配信画面を改めて確認した。
<<【バズリア】ゴーシェ村を防衛するぜ!【予定変更、緊急配信!】>>
――同接数、657万。
「ひえっ、なんじゃこりゃ!?」
俺は思わず叫んでしまった。正直、バグかと思った。
しかし、勇者たちは冷静だ。
「女神さまが降臨したんだ。一気に同接数も跳ね上がっていたよ」
「もっとも、その前からかなりの同接数だったけどね。見てなかったの、あなた達」
適切なツッコミを受けて、俺は苦笑しながら頬をかく。
正直、ゴーシェ村の防衛に一生懸命過ぎて、同接数まで細かく把握していなかった。
バズリアの存続は大切だったが、それ以上にメンバーの大切なものを守らなくてはいけないと必死になっていたのだ。
「ふっ。俺もまだまだ――、だなぁ」
俺が反省を込めて呟くと、隣にいるエルミアが静かに首を横に振る。
「いいえ。それもまた、社長の良い所ですよ」
「え?」
「どんなことにも、一生懸命なんです。だから、この結果が出たのだと思います」
「エルミア……」
「そういうこと。つまり、これからもこき使うから、宜しく頼むわよ!」
「カリーナ」
「うちも、ゴーシェ村は救えたけど、次の夢が出来たわ。まだまだバズリアにいていいやろ!?」
「スラ子!」
【コメント】
「良い話だなー」
「これからも応援するよ、バズリア」
「女神さまもまた出てくれないかなぁ」
「がんばれ!」
「俺はいつまでも、エルミアちゃん推し!」
「よし、それじゃあ――」
俺は気を取り直して姿勢を正すと、勇者パーティに向き直った。
「約束通り『理想投影』を受けて貰おうか!」
俺の言葉に僧侶リリアがギョッとした様子で後ずさる。
「ちょっと、今からするの!?」
剣士フリードも苦笑を浮かべながら、勇者へ視線を送る。
「僕たちはこれから王都へ戻ってすべきことが山積みなので――ねえ、勇者?」
そんな二人の様子とは対照的に、勇者アストリアはさっぱりとした様子で頷いた。
「いや、約束は約束だ! それに、私たちも今後、どのような扱いになるか分からない。ここで完了させてしまった方が、後の活動にも影響が出ないんじゃないかな」
武闘家バズは、勇者の言葉に眉を寄せながらも苦し気に同意を示した。
「う、うむ。勇者が……そういうならば……」
バズの様子にやれやれと頭を抱えたリリアとフリードも、腹をくくったようだった。
「はあ、まあ、――仕方ないわね。それじゃ、ここでやって貰いましょ」
「お手柔らかにお願いしますね」
勇者パーティたちは、スキルがかけやすいように一列に並んでくれた。
【コメント】
「理想投影きたあああああああ!!」
「実は楽しみにしてたんだよ」
「わくわく、わくわく」
「勇者様がお姫様みたいな姿になるのも見て見たいなぁ」
「フリード様の理想、なんだろう!」
「頼んだぜ、社長!!」
「勇者パーティさんたちの理想の姿! 私、気になります!」
「ふふふ、きっとふりふりの可愛い姿になるわよ!」
「それはカリーナの姉御やろ?」
エルミア達も、期待の眼差しで見守っている。
「それじゃあいくぜ! スキル――『理想投影』!!」
俺が勇者パーティへ向かってスキルを発動されると、辺りはぽわんと白い靄に包まれた。
そして暫くの後、ゆっくりと視界がはれていく。
「これは……!?」
最初に現れたのは、ひたすらに目立つ巨漢――元の姿から二倍ほどに巨大化した武闘家バズだった。
元々、彼はかなりの大柄で筋骨隆々の男だったが、今では完全に見上げるほどの大きさになっている。
「やはり巨漢には憧れがあるのだ。……己自身を磨く以外の理想を持ってしまい、恥ずかしい」
照れたように俯くバズへ、エルミアが興奮した様子で話しかける。
「そんなことありません! バズさんは真摯に己に向き合ったうえで、更に憧れを持っているのでしょう。尊敬します!」
「そ、そうか?」
続いて現れたのは、僧侶リリアが――まるで魔王軍幹部時代のカリーナを思わせるような、セクシーな黒いドレスを纏っている姿だった。
「いやああああああ。見るな! 見るんじゃないわよ!」
真っ赤になって声を張り上げるリリアの言葉を無視して、カリーナがニヤニヤしながら視線を送る。
「あらあら、あらあら。鬼僧侶さんは、こういう趣味だったのねぇ」
「何よ、悪い!?」
「悪くないわ。最高よ」
「えっ」
「悔しい程に似合っているわ。でもね、貴女なら、レースのフリフリピンクも似合うと思うの。どうかしら、今度試しに――」
リリアとカリーナが話し込む傍らで、ひっそりと剣士フリードの姿も現れた。
彼は煌びやかな白銀の剣士服から、地味で素朴な村人のような衣装へと変化していた。
「ふふ、見られてしまいましたねぇ。僕、将来は、のんびりスローライフを送るのが夢でして……」
「い、意外や。あんなにキラキラしてた兄さんが!」
「僕は勇者パーティの調整役みたいなものですからね。充実しているけれど、苦労も多いんですよ」
「なんや、案外大変なんやなぁ。でも、服は地味なのに、兄さんのオーラが凄すぎてキラキラが隠しきれてへんわ。恐ろしい……」
【コメント】
「リリア様、一生ついていきます!!!!」
「なかなか個性的な結果」
「バズはなんかこう、真っ直ぐでいいな」
「フリード様の苦労人属性が垣間見えて萌え」
「意外な一面が一杯見れて幸せ」
「フリフリも頼みます、リリア様」
「あれ、勇者様は?」
「勇者はここに居るぜ」
バズ、リリア、フリードの変化に意識を奪われていた視聴者たちへ、俺は声をかける。
俺が示した先に静かに凛と佇んでいたのは――、
「やあ。ありがとう、社長。面白いものが見れたよ」
全く姿を変えることが無かった、勇者アストリアの姿だった。
「変化がなくて驚いたよ。スキルは間違いなくかかっているんだよな」
「ああ。確かにスキルの影響を受けた感覚はあった。その上で、私はこの姿だったみたいだ」
「つまり勇者にとって、今の姿が理想の姿、ということだな!」
「そうだね。私は今の私に、誇りを持っている。困難も葛藤もあるけれど、それも含めて、仲間と共に歩んでいくのが私の理想の姿なんだ」
「流石勇者だ。最高の熱狂だな!!」
【コメント】
「うおおおおおお」
「アストリア様、格好良すぎる!!」
「真の聖人はやはりアストリア様!」
「この世界の勇者様が、この人で良かった」
「流石すぎるぜ」
「なんか私も頑張りたいって思った!」
「さあ、そろそろお終いの時間だ。みんな、本当にありがとうな。俺たちバズリアは、今後も最強の活動を続けていくぜ!」
俺はエルミア、カリーナ、スラ子を呼び寄せた。
そして勇者パーティと、エルフパーティ、駆けつけてくれたバズメイト達、ゴーシェ村の皆を画角に収めるようにカメラを調整する。
「それじゃ、最後に皆で行くぞ」
合図をして、皆で声を合わせる。
「「「「「明日も世界をバズらせようぜ!!」」」」」
Fever Gage ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




