第39話 ルピアの願いで女神降臨! 王国の嘘を暴け!
【コメント】
「ええええええええ。女神様!?なんで?なんで??」
「CMじゃなくて本物!!」
「ドッキリじゃなくて?」
「フィーバータイムってこんなのもありなの!?」
「ルピアは女神と繋がってたの?」
「マジで社長は何者なんだ」
「神々しい。すげえ」
「信じられない。夢みたいな光景」
突然空から舞い降り宙に浮かぶ女神に、コメント欄は大いに盛り上がり、その場に居合わせた者達は騒然とした。
「なっ……!?」
王子は愕然と目を見開き、大声で怒鳴った。聖女もそれに続く。
「ふざけるな、偽物め! これこそ女神への侮辱行為だ。今すぐこの犯罪者どもを捕まえろ!!」
「そ、そうですよぉ。こんな寂れた村に、女神様が現れるはずありません!」
しかし、王子の直属の従者である魔導師たちは命令に従わない。
それどころか感極まった様子で女神を見上げ、膝をつき、祈りを捧げている者もいる。
「何をしている、お前たち!!」
「ピエール王子、聖女アリス様、分からないのですか!」
声を荒げる王子たちへ、僧侶リリアが鋭く叫んだ。
「この御方は――間違いなく、本物の女神様です。私たち僧侶や神官は、女神様の加護をその身に受けて魔法を操る者。本能で、その存在は理解できます」
そしてリリアは、きつい視線で聖女アリスを睨みつける。
「まさか、この国で最も神聖な存在――聖女様が、それを感じ取れないはずはないと思いますが」
アリスはぎくりとした表情を浮かべて、明らかに狼狽えた。
それでも口元をひきつらせながらも、何とか返事をする。
「ふ、ふんっ。そうですね、た、確かに……本物の、女神様……のような気が、してきました! 私、ここまでの移動で疲れていたので、すぐには分からなかったんです!」
王子はそんな様子の聖女を一瞥してから、不機嫌そうに顔をしかめた。
「なんだ、本当に……女神だっていうのか!?」
【コメント】
「本物っぽいな」
「リリア様、格好いい!」
「なんか聖女と王子が怪しくない?」
「不敬BAN不可避。気を付けな」
「でも、王子はともかく聖女様の反応は…」
「僕も祈っておこう。画面越しでも御利益あるかなぁ」
「あの、私、そろそろ喋っても良いですか……?」
周りが混乱していたため、女神は様子をうかがっていたらしい。
おそるおそる口を開いた彼女に、聖女が悲鳴を上げた。
「し、喋ったぁああ!」
「そりゃ喋りますよ! 女神を何だと思っているのですか!」
「ひいっ。ご、ごめんなさい!!」
「いえ、その、そこまで謝らなくても」
聖女はガタガタと怯えた様子で蹲っている。
その姿に、女神は困惑を隠しきれない様子だった。
「突然、呼び出してごめんにゃ、ラブルピ女神!」
俺はそんな女神へ声をかける。
女神ははっと顔をあげると、にっこりと笑顔になった。
「いえいえ、生ルピたんにまた会えて、女神幸せです! それにしても、驚きました。私がスキルにおまけした『フィーバータイム』で、まさか地上に降臨することができるなんて!」
「ふふふ、配信の可能性はまさに無限大にゃ! ところでラブルピ女神、ここまでの流れは分かってる?」
俺が問いかけると、女神は困ったような表情を浮かべた。
「それが――すみません。私はこの地上世界のことは、ふわふわとした夢のような感覚でしか観測できないのです。運よく数回、ルピたんの配信は確認できましたが、細かな地上の出来事は分からなくて」
女神の返答に、その場にいる人間がざわめき始める。
王子が明らかに動揺した表情を浮かべ、聖女は蹲って顔を隠したまま震え続けている。
【コメント】
「女神様、ふわふわしているなぁ」
「でも神さまって案外、そんなものなのかも」
「あれ、だけど聖女様へのお告げは?」
「女神様と同担が判明して嬉しい!」
「まじか。女神はルピアファン…すごすぎ」
「不穏な雰囲気」
「女神様!!」
ざわめきを打ち破って、スラ子が大きな声をあげて一歩前へ踏み出した。
女神はその姿を、優しく見つめている。
「はい。貴女はスラ子ちゃんですね。どうしましたか」
「あ、あの。うち……うちは、」
スラ子が必死に恐怖を堪えるように、拳を握り締める。
その手を、隣にやってきたエルミアがそっと握った。
反対隣りに歩み出たカリーナが、勇気づけるようにスラ子の肩を抱く。
「スラ子――言うにゃ」
俺もスラ子の後ろに寄り添い、その頭を撫でる。
スラ子は決心したように息を吸い込むと、大きな声で問いかけた。
「うちは、ここゴーシェ村の出身です。ここは女神さまのお告げで、守らなくても良い土地だと言われたとされてます。ほ、本当ですか!?」
「あ、馬鹿!!」
ハッとした王子の罵声が響くが、もはや誰も彼の言葉を意に介さない。
女神はスラ子の訴えに、心から驚いたような、ショックを受けたような表情を見せた。
「私が? いえ、いえ、決してそんなことはありません。私は常に、全ての人の幸せを祈っています」
それから、女神は少しだけ暗い表情を見せる。
「ただ、今の私は地上への干渉が出来ません。神官の皆さんと通じて魔力の供給は可能ですが、それ以外はこの世界のことを正確に観測するのも困難なのです。まして、お告げを伝えるなんて――」
【コメント】
「スラ子よく言ったぞ!」
「王子の顔、真っ青じゃん」
「バズリアの絆尊い」
「王子と聖女が怪しいのは分かってたけど、まさかこんな証拠が出るとは」
「事件じゃん!」
「これ、聖女様が嘘ついていたってことで確定?」
「ま、ま、待ってください!!」
窮地に追い込まれた聖女は、声を裏返しながらも叫んで立ち上がった。
「女神様、お忘れですか。私、聖女アリスです! ほら、私に祈りの間で、お告げをくださったではないですか。どうか思い出して!!」
縋るように声をあげる聖女へ、女神は悲しそうな表情を見せた。
「すみません。貴女のことは――存じ上げておりません」
「……!!」
それは、決定的な言葉だった。
聖女は絶望的な顔で膝をつき、聖女と組んで行動していた王子も表情を醜く歪める。
「くそ、これは、何かの間違いで!!」
絶叫する王子の声を遮るように、女神が小さく息を吐いた。
「ああ……そろそろ、時間が来たようです。やはり、長く地上に留まることは難しいですね」
寂し気にそう言う女神に、俺は笑いかける。
「それなら、またフィーバー起こして呼んであげるにゃ。今度はコラボ配信、しちゃおうにゃ!」
俺の言葉に女神は瞬くと、くすくすと表情を綻ばせた。
「ふふ、はいっ! 喜んで!」
女神はキラキラと光の粒になって消えかけながら、その場にいる人たちへと視線を向けた。
「エルミアちゃん、カリーナちゃん。配信、見てます。大ファンです。グッズが欲しいのに買えないのが、女神とっても悲しいです」
「ふわわわっ!? こ、光栄です、女神様!」
「ありがとね。また来なさいよ!」
「スラ子ちゃん、悲しい思いをさせてしまって、駄目な女神でごめんなさい。でも、応援、していますから」
「ええんや。うち、沢山仲間ができたから。ありがとう、女神様」
「僧侶リリアさん。貴女の頑張りも、いつも伝わっています。どうか身体を労わって、この世界を宜しくお願いします。勇者パーティの皆さんたちも」
「はいっ。女神様に誓って、この世界を守ります!」
「マッスル女将……ああ、萌えトークしたい……したいのに、時間、時間がぁ……!」
「やーん、ラブルピ女神ちゃん。いつでも萌え電波発信しておくから、受信してねっ!」
「最後にルピたん。本当に、本当に――ありがとう。どうかこれからも、沢山輝いてください」
「勿論にゃ。まだまだ、ルピアの夢は終わらないからにゃ!」
殆ど光の粒になった女神が、うっすらと微笑むのが見えた。
その煌めく渦の中に、俺は自分が身に付けていたフィーバーブレスレットを投げ入れる。
「ルピアからのプレゼントにゃ。大事にしてね」
「きゃあああああ、推しからファンサもらっちゃった! 女神、もう蒸発し――」
断末魔のような歓声をあげながら、女神は空へと消えて行った。
Fever Gage ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




