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第38話 大団円にはまだ早い!? 王子の乱入に、フィーバータイム炸裂!

 襲撃してきた魔物の群れは完全に討伐され、ゴーシェ村の喧騒はおさまり、歓声が沸き上がった。

 

「クリリィ! クリリィ……!!」


 村が安全になったことを確認すると、スラ子は村人が避難していた広場の一角へと駆けだす。


「スラ子ちゃん。私の――大事な、お友達」


「クリリィ!!」


 転びそうな勢いで走り続けて、スラ子は避難所で待機していた一人の村人へと抱き着いた。

 白く柔らかな髪を後ろで束ねた、40代くらいの落ち着いた雰囲気の女性だ。


「えっ。この人が、スラ子の友達の!?」


 戦闘を終えてスラ子の後を追いかけた俺とエルミア、カリーナは、彼女の姿に驚いた。

 スラ子がクリリィの姿を真似ていると聞いていたから、自然と同年代の子供を想像していたのだ。


「はい。配信、いつも楽しく見ていたわ。皆さん、本当にありがとう」


 スラ子を抱きとめながら、クリリィは深々と頭を下げてきた。


「いやいや、此方こそいつも見てくれてありがとうな。スラ子もきっと喜んでるよ」


「勿論や。うちとクリリィは、ずーっと友達なんやからな」


「そうね。私、スラ子ちゃんの活躍が見れて嬉しかったの。それに貴女とお話しできて、本当に嬉しい」


「えへへー」


 すっかりクリリィに甘えているスラ子の姿を見て、カリーナがやれやれと息を吐く。


「全く。漸く、本当の夢がかなったって訳ね」


 エルミアもその隣で、嬉しそうにその姿を見守っている。


「スラ子ちゃんはクリリィさんが子供から大人になるまでの長い間、一人でずっと頑張り続けてきたんですね」



【コメント】

「感動の再会!?」

「スラ子が幸せそうなので、とにかくよし!!」

「クリリィさん、スラ子に似てるな」

「ゴーシェ村が無事でよかった」

「どういう状況だ。社長、説明して―!」

「ぱちぱちぱちぱち」



「ああ、説明が遅れたな。スラ子は故郷の友達であるクリリィのために、ずっと頑張ってきたんだ。スラ子の見た目も、クリリィが子供の頃の姿を真似たものらしい。そしてその努力が俺たちを動かし、晴れて村を救ったっていう訳だ!」


「スラ子ちゃんの姿が見えなくなって、私、随分と落ち込んでいたの。まさか、商人さんになっていたなんて、知らなかったわ。でも、全部、私たちの為だったなんて――」


 クリリィはスラ子を抱きしめつつ呟き、感極まったように言葉に詰まった。


「嬉しいの。とても、嬉しいのよ。でもね、スラ子ちゃんが……ひとりでずっと、頑張ってきたって思うと……。私、何もしてあげられなくて、本当にごめんなさい……」


 涙声になるクリリィに、スラ子は慌てて顔をあげた。


「そ、それは違うで、クリリィ! うち、確かにすっごく頑張った。辛いことも沢山あった……けど、助けてくれる人も沢山おったんや。行商人の皆、立ち寄った村の人たち、そして――バズリアの皆」


 スラ子はきらきらとした眼で、クリリィを見つめる。

 嘘も誤魔化しもなく、輝きに満ちた瞳だった。


「クリリィのおかげで、頑張れた。クリリィのおかげで、夢が出来て、色んな人と出逢えたんや。うち、それがとっても嬉しい!」


「スラ子ちゃん!」


 スラ子とクリリィがギュッと抱き合う。

 その様子を、少し離れた場所から勇者パーティも見守っている。


「これにて一件落着――ってところかな?」


 俺が笑いかけると、勇者アストリアはくすくすと笑った。


「そうだね。私たちの力が、皆の役に立てた。これ以上に嬉しいことはない」


 勇者の隣で、僧侶リリアが少しだけぼやくように零す。


「その意見には同意だけど……この先、面倒になるかもしれないわよ。王子からの通信、遮断したままでしょ」


「ああ、確かに。喧しくて集中できなかったものだから、つい」


「あなたねぇ」


 呆れたような僧侶の声に被せるように、場違いに偉そうな声が響き渡った。

 

「やってくれたな、アストリア!!」

「本当に、何を考えているんですかぁ。国家反逆罪ですよぉ?」


「……!」


 俺たちがギョッとして振り返ると、そこには豪奢な馬車に乗った王子と聖女の姿があった。

 その周囲には4人の僧侶服を着た魔道士が佇んでいる。

 おそらく、転移魔法でここまでやってきたのだろう。



【コメント】

「王子と聖女様きたあああ」

「え、でも、これやばくない?」

「何がヤバイの。魔物を退治したんだし良いじゃん」

「女神さまのお告げに反するのは危ない気はする」

「だからってスラ子見殺しにしろってこと?」

「大丈夫かな」



「王子、お言葉ですが、私たちは貴方のご命令通りに――」


「そんな屁理屈が通用すると思うなよ!!」


 勇者が凛とした様子で弁解しようとするが、王子は全く取り合おうとしなかった。

 国営放送中に通信を遮断され、面子をつぶされたことに対して、怒り狂っている様子だ。


「こんな”呪われた地”を魔物から救うなんて、言語道断だ!」


 その言葉に、スラ子が反応した。


「なんやて!? なんてこと言うんや。この村は、ゴーシェ村は、呪われてなんかない! この、ポンコツ馬鹿王子!!」


「――んなっ! 何だとぉ!!」


 ギッと王子の鋭い視線がスラ子へ向く。


「不敬罪だ! ひっ捕らえろ! いや、そもそもこいつはスライムだったか? なら、この場で殺してしまっても構わん!!」


「ひっ!」


 王子の命令に応じるように、魔導師たちがスラ子へと駆け寄ってくる。

 反射的にエルミアとカリーナがスラ子を庇うように立ちはだかった。


「させませんよ!」

「一歩でも近付いてみなさい、容赦しないわ!」


 そして俺は、そんな二人の更に前へと歩み出る。


「おおっと、この子たちはうちのライバーだ。責任は全て、社長の俺がとらせて貰おうか!」


「ああ!? はっ、丁度いい! それなら、バズリアはこのまま廃止として――」


 俺はビシッと王子へ指を突き付けた。


「だがその前に、王子様、聖女様。貴方達も、自分の発言の責任はとって貰うぜ」


 俺の言葉に、王子と聖女は訝し気な表情を浮かべる。


「責任? どういう意味だ。だからこうして、現場に出向いてきたんだろうが」

「適当なことを言って、時間稼ぎですかぁ?」


「いいや、違う。貴方達は、女神のお告げを盾に、守るべき土地を決めているそうじゃないか。その正当性を、今こそ示して貰おうか――!」


 ニヤリと笑う俺の頭上で、満タンになったフィーバーゲージが明滅する。



 Fever Gage ★★★★★★★★★★

 →Fever Time!!



【コメント】

「え、ここでフィーバータイム?」

「何する気だ社長」

「まさかルピアで王子をぶっ飛ばすとか!?」

「それはちょっと見たいけど流石にまずそう」

「ルーピルピルピ☆」

「これが噂のフィーバー!!」



「な、なんだ、この光は!?」


 叫ぶ王子に、俺は丁寧に回答してやった。


「説明しよう! 配信で盛り上がるごとにFever Gageが溜まっていき、熱狂が臨界点に達したとき、俺の裏スキルである『フィーバータイム』が発動するのさ!」


 ――パリィン! 

 仮面が発光しながら割れて、俺の姿は赤髪猫耳の可憐なVtuber『赤猫ルピア』へと変化する。


「その可能性は、無限大!!」


 声高らかに宣言しながら、俺は手を高く振り上げた。


「そして今回起こす奇跡は、これにゃ!」


 周囲に激しく風が渦巻くように吹き荒れ、砂埃が舞い上がる。

 その勢いは天まで届き、やがてそこから煌びやかな七色の光が差し込んできた。


「現れて――この世界の女神!!」


 俺の叫び声に応じるように、空から虹色の煌めく美しい長髪を持つ女性――この世界の女神こと、ラブルピ女神が降臨した。

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