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第36話 ゴーシェ村を守れ! バズリア総力戦で意地を見せろ!


「全員纏めて、ゴーシェ村に転移するわよ。良いわね!」


 カリーナの声に俺たちが頷くと、何と傍で話を聞いていた皆も一緒に集まり始めた。


「私も行くわ、カリーナちゃん。スラ子ちゃんを泣かせる魔物なんて、やっつけちゃうんだから」


「マッスル女将!」


「俺たちも同行しよう。これでも魔物討伐は得意だからな」


「リュシエルさん!」


 そして、声をあげたのは彼らだけにとどまらない。


「あの、俺たち今日は生配信見学に来たんですけど、一緒に戦わせてください」

「これでもB級ダンジョンは制覇したことあるっす!」

「私は回復魔法できます」

「エルミアちゃんと戦えるなんて最高!」


「バズメイトの皆!!」


 戦闘力を持った視聴者たちも、協力を名乗り出てくれた。

 カリーナはふふんと腰に手を当てる。


「良いわ、この私にかかれば、何人だろうと転移は余裕よ。いいこと、アンタたち。気合入れなさいよ。意地でもゴーシェ村を守るわよ!」


「ありがとうございます。でも、どうか、無理はしないでくださいね。誰一人かけることなく、村を守り切りましょう」


 あっと言う間に結成されたゴーシェ村防衛団を目の前にして、スラ子は再び頬に涙を伝わせた。

 でも、先ほどまでの辛いだけの涙とは違う。


 彼女の瞳には、はっきりと強い意思が取り戻されている。


「皆……、皆、ほんまに、ありがとう。うちも頑張る。だから、宜しく頼みます!」


「よし、全員、いくぞー!」


「「「「「おー!!」」」」」


◇ ◇ ◇


<<【バズリア】ゴーシェ村を防衛するぜ!【予定変更、緊急配信!】>>


「今日も世界をバズらせるぜ! 社長だ」


 俺は魔導浮遊カメラをオンにして、配信を開始した。

 背後では、既にエルミア達と魔物の壮絶な戦闘が始まっている。


「悪いな、みんな。今日は12時間耐久配信の予定だったんだが、企画変更だ!」



【コメント】

「枠乙。タイトルどういうこと?」

「ドッキリ?」

「耐久配信楽しみにしてたのになぁ」

「ゴーシェ村ってどこだ。聞いたこと無いな」

「同接稼げないと、バズリア解散でしょ。大丈夫?」

「さっき魔物警報が出てた場所じゃない?」



「実はゴーシェ村はスラ子の故郷なんだ。だから俺たちは、この村の防衛に来たって訳さ」


 俺はゴーシェ村の様子を画面に映した。

 数十軒の木製の小屋が立ち並ぶ小さな村が、魔物の大群により押しつぶされそうになっている。


「そして、皆にもお願いがある。見てくれ、この魔物襲撃の規模を。流石に数が多すぎるんだ」


 今はカリーナやエルミアが前線を食い止めながら、リュシエルたちが指揮を執って村人たちを避難させている所だ。

 この様子だと、なんとか人命は守ることが出来そうだ。

 しかし、村の建物を壊滅させられれば、復興は絶望的だろう。


「だからもし戦いに来れる人がいれば、是非、協力して欲しい! 実は既に、参加してくれているバズメイトもいるんだ」


 カメラに映ったマッスル女将が、逞しい腕で魔物を殴りつけた後、ガッツポーズしながらウインクをした。なかなか強烈な絵である。


「当たり前だが、無理はしないでくれよ。応援だけでも、嬉しいぜ!」



【コメント】

「凄いことになってるね」

「スラ子の故郷なの!?心配」

「僕も行きたいけど、手段がなぁ」

「なんか凄いの映らなかった??」

「応援頑張るよ」

「みんながんばれー!!」



「村人は皆、逃げたわね。それじゃあ、行くわよ。天火降臨てんかこうりん!!」


 カリーナが強烈な炎の雨を広範囲に降らせ、一気に魔物を焼き払っていく。


「私も行きます! ご覚悟! はぁ!!!!」


 エルミアが勢いよく地面を殴りつけると、轟音と共に地面がひび割れていき、無数の魔物たちが飲み込まれていく。


「すっ、凄い……!」


 スラ子と俺は岩陰に隠れつつ、その様子を見守る。

 広範囲戦闘では役に立たないので、回復薬などを二人へ差し出すなどの後方支援に徹していた。



【コメント】

「つえええええ!」

「久しぶりの戦闘、気持ちいいね!」

「無双最高じゃん」

「空、やばくない?」

「ご覚悟、きたー」

「上見て、上、上!!」



「えっ、空?」


 コメントの異変に気付いて顔をあげると、東の空が黒く染まりかけていた。

 よく目を凝らしてみると――ブラックドラゴンの大群が、飛翔して押し寄せてきている。


「エルミア、カリーナ!! まずいぞ、ドラゴンの大群だ!」


「なっ!?」

「なんて数なの!!」


「あかん、地上の魔物もまた増えてきた!」


 先ほど一掃したはずの魔物たちも、再び村の近くまで雪崩れ込んできている。

 かなりの勢いで倒しているのに次々と出現してきて、きりがない。



【コメント】

「やばいじゃん」

「やっぱり魔物被害って深刻だよな…」

「これ、人力で何とかできるレベルじゃなくない?」

「ゴーシェ村って女神リストには載ってなかったよな」

「終わりじゃん」

「そんなこというなって!」



「空は私とリュシエルたちで対処するわ。エルミアは地上をお願い」


「はい、分かりました!」


 魔法に長けたカリーナとエルフの里のパーティたちがドラゴンへ地上から攻撃を繰り返す。


「炎弾丸・えんだんがん・ばーすと!!」


 カリーナの両手から、無数の火の玉が強烈な熱量で射出されていく。

 

加速句ヘイスト加速句ヘイスト加速句ヘイスト!」


 それをガルディアスとルミエルが更に加速させ、機関銃のようにブラックドラゴンの群れを撃ち抜いていく。


「爆裂矢!!」

巨大化マキシム!」


 リュシエルも魔法矢を連射し、セレスティナがそれを巨大化させることで援護攻撃を行う。

 打ち落とされたブラックドラゴンの巨体が、地面へ大穴をあけながら落下してくる。


 その尻尾をむんずと掴むと、エルミアは躊躇なく振り回した。


「魔物さん達、ご覚悟! えええええいっ!!」


 巨大なこん棒と化したブラックドラゴンの身体は、壮絶な勢いで魔物たちをなぎ倒していく。

 散り散りになりながら村へ向かってくる魔物たちは、マッスル女将をはじめとしたバズメイトが連携して討伐していた。



【コメント】

「すげええええええ」

「冷静に考えて、バズリアの戦力ヤバかったわ」

「援護のエルフパーティも上澄みだしな」

「バズメイトも役に立ってるじゃん」

「ところで、あの筋肉は何?」

「がんばれ、がんばれ」



 かなりの激戦状態だったが、少しずつバズリアが魔物の襲撃を押し返し始めていた。

 一時期は絶望的だった空気が、徐々に希望を見出して明るく変わっていく。


「よし、いけるぞ!!」


 俺が叫んだ、その瞬間だった。


 ――ドォン!!


 圧倒的な閃光と共に、轟音が響いた。

 一拍遅れて、それが空中のドラゴン集団によって放たれた魔力弾であることが分かった。


「なっ!!」


 ドラゴンたちは容赦なく、次々と口から魔力弾を放っていく。

 きらきらとした光の玉が止めどない勢いで、地上へと降り注いでいく。


「く、詠結界スペル・ドーム!!」


 カリーナが慌てて広範囲に防御壁を展開した。

 俺たちはなんとかそのおかげで安全を確保することが出来たが、村の建物に降り注ぐ魔力弾までは防ぎきれない。


「ああ、あかん!」


「スラ子っ!!」


 おそらく身体が自然に動いてしまったのだろう。

 スラ子が絶望的な表情で、防御壁を飛び出していく。


 俺は覚悟を決めると、その後姿を追いかけた。


「村を! お願いや、村を壊さんで!!」


 魔力弾が降り注ぐ中、スラ子は遥か空へ向かって届かない声を張り上げていた。


「スラ子、駄目だ。死ぬぞ、戻って来い!」


「でも、社長さん。む、村が……!」


 何とか追いついた俺はスラ子を捕まえたが、頭上には新たな魔力弾が迫って来ていた。


「社長、スラ子ちゃん!!」


「アンタたち、何してんの、早く――!」


 俺たちの異変に気付いたエルミアも、此方へ飛び出してくる。

 カリーナはおそらく、動きたくても他の皆の防御壁を維持するために動くことができない。


 FeverGageもまだ僅かに貯まり切っていない。万事休すだ。

 俺はスラ子を庇うように、ぎゅっと抱きしめた。


「もし万が一の時は、みんな、バズリアを頼むぜ!」


「あ、あかん、何言っているんや」

「社長ー!!」



 そして、魔力弾が俺たちにぶつかりそうになったその瞬間――空が、大きく割れた。



「……??」


 予想された痛みが来ないことに、俺は不思議に思いつつ首を傾げた。

 まさか、痛みすら感じず一瞬で死んでしまったのだろうか。


 いや、しかし――、


「うわああああん、うちが悪かったわ。そんな死ぬなんて言わんといてぇ」

「社長! 私を置いて行かないでくださいっ……!!」


 俺の腕の中でスラ子が、そして俺たちの所まで辿り着いて俺を抱きしめているエルミアが、凄い勢いで泣き叫んでいる。

 現実感もなく唖然としたまま、俺はスラ子とエルミアの頭を撫でる。


 一体何が起こったのか。

 その答えは、すぐ目の前にあった。


「やあ、遅くなったね。すまない」


 凛とした声が響くと同時に、剣が鞘に納められる。

 清々しい表情をした女剣士――勇者と、その仲間たちが、俺たちの前に勢ぞろいしていた。


 勇者はにこりと笑うと、高らかに宣言する。


「勇者パーティ、ただいま参上した。バズリアに助太刀するよ!」


Fever Gage ★★★★★★★★★☆

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