表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
29/33

第28話 バズリアの存亡をかけて、勇者パーティと同接数バトル開始!

 王都から帰還した俺たちが宿屋で休んでいると、その扉が勢いよく開けられた。


「ルピたーん、配信見たわよぉ! 大変なことになったわね!!」


「ま、マッスル女将!!」


 ドシドシと中に入ってきたのは、魔導システム局の制服姿のツインテールムキムキマッチョ。

 赤猫ルピアとバズリアの大ファンである、『マッスル女将』だ。


「わぁ。グッズ買ってくれたんだ。ありがとうにゃ!」


 マッスル女将の制服の腰には、赤猫ルピアのミニぬいぐるみがぶらさがっていた。


「ああん、当り前じゃないの。勿論、家と仕事場にはもっと大量にあるわよ!」


 腰をくねらせながらウインクするマッスル女将を目の当たりにして、スラ子は怯えて部屋の隅に隠れた。


「ひいいっ、トロールや。トロールが攻めてきた。うちは美味しくないで、食べんといてぇ!」


「スラ子、大丈夫、よく見なさい。あれは人間――人間? 人間、かし、ら……?」


 スラ子に寄り添うカリーナも、訝しげな顔でマッスル女将を観察している。

 そんな二人へ、エルミアが困ったように笑いながら声をかけた。


「あの、大丈夫ですよ、皆さん。この方はマッスル女将さんといって、ルピアさんの昔からのファンで――」


 そんな三人の姿に気づいたマッスル女将は、真っ先にエルミアへ反応した。


「エルミアちゃぁぁぁん!! 貴女、無事だったのね! 大丈夫? あの馬鹿王子に、変なことされてない?」


「ふええっ!? は、はい、ありがとうございます、大丈夫です!」


 純粋な心配からだとは思われるが、マッスル女将は取って食わんばかりの勢いでエルミアへ駆け寄る。

 その迫力にエルミアは硬直し、スラ子は恐怖し、カリーナも困惑した。

 俺は場の混乱を収めようと、説明する。


「とりあえず皆、安心してくれ。マッスル女将は人間だし良い奴だから。スライムを食べたりもしない」


「ほ、ほんま? ほんまか!?」


「どう見ても人間とは思えないわよ!?」


「本当よ、スラ子ちゃん、カリーナちゃん。仲良くしましょうね、うふっ!」


 マッスル女将が、バチコーンと音がする勢いでウインクした。


「ぽよん」


「きゃーっ、筋肉のウインクで、スラ子がスライムに戻ったわ!!」


「スラ子ちゃーん!」


「あらやだ、私ってば!」


「スラ子―!!」


 キャパオーバーの衝撃でスライムに戻ったスラ子を介抱するのに、俺たちは暫しの時間を要することになった。


◇ ◇ ◇


 数十分後、漸く落ち着いたスラ子をもう一度人間の姿に変化させて、俺たちはテーブルを囲んでいた。

 皆の視線の先は、勿論、マッスル女将である。


「ええと、つまり、マッスル女将は王城での配信を見て、心配になって駆けつけてくれたってことだな」


 確認するように俺が問いかけると、マッスル女将は頷く。


「そうよ。ルピたんのピンチだもの。ファンとして、助けなくっちゃ!」


「なんや、ほんまにええ人なんやな。疑って堪忍やで」


「まあ、あの迫力じゃ、仕方ないわよ」


「とにかく、スラ子ちゃんが元気になって良かったです」


 気まずそうにするスラ子の頭を、エルミアとカリーナが撫でてやっている。


「気にしないで。私こそ、驚かせちゃってごめんなさいね。推しの前では、ついテンション上がっちゃって!」


 カラッとした様子で笑うマッスル女将へ、俺は声をかける。


「そういえば、マッスル女将。魔導システム局は、そもそも国の管轄組織だろう? 王子を悪く言ったり、こちらの味方したりして大丈夫なのか?」


「あー、良いの良いの。あの王子、身内でも評判悪いのよ。私も嫌いだわ。平気で賄賂を受け取るし、嫌がる女の子に手を出すし、最低なのよ」


「分かる! 私もアイツ嫌いよ!」


「あら、気が合うわね、カリーナちゃん! でもね、あの王子、あれでも血統が良いし仕事はできるからって、随分大目に見られてるの。まったく、世知辛いわよねぇ!」


「人間の世界も、大変なんですね」


「……」


 スラ子の表情が、また曇る。

 必死に何かに耐えているような、そんな顔をしていた。


 だが、俺以外はスラの子の様子に気づいていないようで、マッスル女将は言葉を続ける。


「でも、勇者様は立派な方よ。それは間違いないわ。あの王子の下にいるから、思うように動けないところはあるみたいだけど……正直、強敵だわ」


「なるほど。なら、勇者パーティについて教えてくれないか? まずは対戦相手のことを知らなくちゃな!」


「勿論よ。任せて、ルピたん!」


 マッスル女将は胸を張ると、自分の魔導板を取り出して勇者の配信画面を映し出した。


「まずは勇者、アストリア様。銀の短髪が麗しい、この世界で最強の女性と言われているわ。老若男女、誰もが彼女に魅了されるとも。その魅力は、皆も感じたんじゃないかしら?」


「ああ、確かに素晴らしいカリスマだった! 勇者でなければ、うちに欲しい位だ」


「あらあら、ルピたんったら。アストリア様は剣術と光属性の魔法に秀でているわ。でも、何と言っても特筆すべきはその人柄! とにかく真っ直ぐで、心優しく、まさに救世主!」


「分かります! 本当に素敵です、アストリア様!」


「そうかしら? 私はちょっと正直、眩しすぎて苦手よ」


「次に女僧侶、リリア様。彼女は勇者様の幼馴染で、昔から行動を共にしているわ。可愛い見た目と裏腹に、強気な戦闘スタイルが痺れるわ。人間離れした魔法のセンスは、壮絶な修行で身に付けたそうよ。これも全て、勇者様を守るため。泣けるわね!」


「ううん、良い話だ。でも、努力ならうちのエルミアも負けてないぜ!」


「えっ!? あ、ありがとうございます!」


「続いて、武闘家のバズ。彼は寡黙な武人、と言った感じね。良い筋肉よね! その超人的な肉体で、勇者パーティを守る鉄壁の盾と言われているわ。勇者へ絶対の忠誠を誓っていて、その男らしい姿勢も人気があるのよねー!」


「まず名前が良いな!」


「社長さん、真っ先に言うことがそれかいな」


「最後に、剣士のフリード。常に笑顔で紳士的なイケメンよ。女性人気は言わずもがな、男性にもファンが多いわ。その剣捌きは勇者に唯一並べると称されていて、二人の連携攻撃はもはや芸術の域ね。あと、意外と常識人で、他のメンバーに振り回されているのも可愛いって評判よ」


「社長の方が、イケメンだと思います!」


「あらあら、エルミアちゃん」


「ふふん。そうだろう、そうだろう!」


 一通りの説明を終えると、マッスル女将は魔導板をオフにする。


「――という感じよ。参考になったかしら?」


「ありがとう、とてもよく分かった!」


「勉強になりました!」


「圧倒的な実力と信頼、個性的なメンバーたち。彼らが正当に高レベルのダンジョン攻略をする。ああ、これは間違いなく、強敵だな!」


「それに、そもそもファンの数が桁違いよ」


「ほんまに勝てるんやろか」


 不安そうな表情を浮かべる皆に、俺はニイッと笑顔を向けた。


「何を言ってるんだ。勝てるに決まってるさ。俺を誰だと思っている?」


「社長!」

「不審者!」

「金の生る木!」

「ルピたん!」


「そう――伝説のVtuberさ! 同接数勝負は俺の領域、絶対に勝つ!」


◇ ◇ ◇


 翌日、王国から以下のルールが送られて来た。



■バズリアvs勇者パーティ同接数勝負

・期限は本日から二週間

・配信回数は自由

・1日1視聴ごとに1カウント

・合計同接数の多い方が勝ち



 その内容を確認すると、俺は高らかに宣言する。


「よし、まずはペアに分かれるぞ。ペアでダンジョン配信だ!」


Fever Gage ★★★☆☆☆☆☆☆☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ