第29話 エルミアと社長のペア配信。ドキドキの結末!?
「社長、ペアになって配信ってどういうことですか?」
「いつもみたいに、皆でダンジョンに行くんじゃないの?」
勇者パーティとの同接数勝負の作戦会議中、質問してくるエルミアとカリーナに俺はニヤリと笑う。
「良いことを教えよう。Vtuberに沼らせる秘訣――それは、関係性だ!」
「関係性?」
首をひねるスラ子に、俺は頷いた。
「そう。一人でも魅力的な配信者が、更に他の配信者と仲良しだったり対立したり……そこに生まれるドラマに、人は目を離せなくなるのさ」
「な、なるほど!」
「でも、それって全員で配信じゃダメなのかしら」
「勿論それも悪くない。だが、それだと意識が分散するからな。ペアでしっかり各々の関係を深めた後に――全員で配信して、そのドラマを爆発させる!」
「おお! 今までと同じ配信のはずなのに、ペアで慣れた後だと、全員揃うだけでお祭り感がある!」
「その通り。これぞブランディング! 自分で価値を作り上げるんだ!」
俺は気合を入れて、ぽん、と手を合わせる。
「だが、それも配信が面白ければこその価値だ。勇者は強敵だが、バズリア継続のために――やるぞー!」
「「「おー!」」」
◇ ◇ ◇
<<【エルミア&社長】初心を思い出すダンジョン配信【バズリア】>>
「あなたの悩みを杖でぽかん! ご覚悟! 物理エルフ、バズリア所属のエルミアです!」
「今日も世界をバズらせるぜ! 社長だ」
「今日は私がこの姿で最初に配信した、ゴーレムのいるダンジョンに来ています!」
【コメント】
「バズリア待ってた!」
「配信応援するぞー」
「あれ、二人?」
「なんか懐かしい感じがする!」
「俺は新規だから、逆に新鮮だわ」
「知ってる人も多いと思うが、俺たちは勇者パーティとの同接数勝負中だ! そこで新企画として、ペアダンジョン攻略を始めるぜ」
「バズリアのメンバーが、毎回違う組み合わせで二人、登場しますっ」
「今日は俺とエルミアだ。思い出話なんかも語りながら、ダンジョンを周ろうと思うぜ。楽しんでくれよ!」
【コメント】
「とりあえず、社長はそこ代わって」
「いいね!」
「イチャイチャ期待」
「いや、社長にエルミアたんは渡さない!」
「ていうか二人は付き合ってんの?」
「ふえっ!? つ、つつつ、付き合っているなんて、そんなっ!!」
「ふっ、そう簡単に真実は教えられないな。知りたければ、このチャンネルを100人に布教して――」
「もう、何を言ってるんですかっ!」
そんな掛け合いをしながら、俺たちはダンジョンの奥へ進んでいく。
ここは初心者向けのダンジョンで、ボスのゴーレム以外は強敵もほぼ出現しない。
モンスターを倒しながら少し歩いたところで、エルミアが声を弾ませた。
「見てください。ここ、ここです! 私と社長が出会った場所!」
「懐かしいなぁ」
【コメント】
「あの伝説の始まりか」
「切り抜き見たよ」
「最初は、エルミアちゃんにも不審者と呼ばれていた社長!」
「おどおどエルミアたんも実は好き」
「あの日、社長のおかげで、私の全てが変わったんです」
「はは、そんなことはない。エルミアは元々、凄かったんだ。俺は少し見せ方を変えただけさ」
「……社長。社長はどうして、私に声を掛けてくれたんですか?」
エルミアの瞳が、真っ直ぐに俺を見つめる。
曇りのないきらきらとした、それでいて、少しだけ期待と不安が混ざったような瞳だった。
「それは――」
俺の脳裏に過ったのは、転生前の苦い記憶だ。
一瞬、適当な話で誤魔化そうかと思った。
だけど、すぐに思い直した。
――ここで嘘を吐くのは、俺らしくない。赤猫ルピアらしくない。
「昔、君みたいな子が知り合いにいてな。不器用に頑張る姿が、重なって見えたんだよ」
「昔の知り合い?」
エルミアの声が、はっきりと怯えるように震えた。
【コメント】
「急展開」
「なんだなんだ、昔の恋人か?」
「エルミアちゃんは僕が貰っていきますね」
「真面目に聞け、お前ら」
「ははは、元恋人ではないぞ。そこは明言しておいてやろう!」
「ほっ」
【コメント】
「ちっ」
「元恋人じゃないのかよ、つまんない!」
「ほっとするエルミアちゃん萌え」
「エルミアちゃん可愛い」
「あ、あのっ、その知り合いさんも――Vtuberさんだったんですか?」
「そうだ。よく分かったな」
「ふふ、分かります。私が尊敬している、社長のことですから」
「え」
少しだけ大人びて笑うエルミアに、俺はドキリとしてしまった。
配信中にもかかわらず、ぽかんと間の抜けた声を零す俺は、さぞや可笑しく見えただろう。
【コメント】
「エルミアちゃんの反撃きたー!」
「社長、照れてる」
「ぽかんとしている社長、珍しい」
「イチャイチャしやがって、畜生」
「ごほん。と、とにかくだな、エルミアはもっと輝く方向があると、この俺の素晴らしい眼が見抜いたってことさ」
「ありがとうございます! 私は嬉しかった。魔法が使えないから始めた筋トレも、こんな形で役に立つなんて」
「エルミアは今でも、毎日かかさず鍛えているもんな」
「勿論です。私の夢は、バズリアを世界一にすることです。その為に、もっともっと強くなります!」
【コメント】
「良い子だなぁ」
「応援するぜ、バズリア」
「同接数勝負も頑張って欲しい」
「エルミアはどれくらいの期間鍛えてるの?」
「そうですね。大体、300年くらい……でしょうか」
「300年!?」
「ふぇっ!? あ、あの、何か変でしたか?」
「いや、思ったより大分長くてだな」
「エルフは長命ですからね、ふふ」
「300年も鍛え続ければ、あの強さも納得だな」
「社長は年上の女性は、お嫌いですか?」
「ごほっ、ごほごほっ」
にっこり上目遣いで聞いてくるエルミアに、俺は咽た。
どうしたんだ、今日は随分と攻めてくるじゃないか――最高のエンタメだな!
いや、俺は内心では、まあまあ焦ってはいたのだが。
【コメント】
「エルミアちゃん可愛い」
「社長、どうなの。咳き込んでないで答えなさいよ」
「そうだそうだー」
「強気なエルミアちゃんも萌え!」
「あー、んー、えー、年上の女性? いや、素敵じゃないかな。素敵だと思う。はははは……」
【コメント】
「がち焦りで草」
「良いもん見れたわ」
「攻められると弱い社長萌え」
「ひゅーひゅー!」
「まあ、その、うちは特に事務所内恋愛は禁止はしない方針だが――」
「分かっています!」
滝のような汗を流しながら話す俺へ、エルミアが明るい声で笑った。
「社長の夢も、バズリアを世界一にすることですよね。だから、恋愛はその後――でしょう?」
「エルミア……」
「私、頑張りますから。一緒に、頑張らせてください!」
俺の手をそっと握るエルミアへ、俺もニッと笑みを返した。
「勿論だ。ありがとう!」
【コメント】
「いい子だ」
「社長、エルミアちゃん泣かせたら許さんぞー!」
「これで付き合ってないとか嘘だ!」
「ぱちぱちぱち」
「俺たちも応援するぞ!」
「というわけで、ここで、カリーナさんの持ち込み企画です!」
「へっ?」
気づけば俺たちは、ダンジョン最深部の火炎ゴーレムがいるフロアまで辿り着いていた。
急にカンペを持ち出して読み始めるエルミアへ首を傾げる。
『不審者! アンタもバズリアのトップなら、初心者ダンジョンのボスくらい一人で討伐できるようになりなさい? エルミアは手助け禁止よ。さあ、バトルスタート!』
「……だ、そうです!」
エルミアはカリーナの物真似をしながら、完璧にカンペを読み上げた。
正直、物真似はとても似ていた。
――いや、感心している場合じゃない。
「まてまてまて、俺は!」
タイミングよく、火炎ゴーレムがこちらの騒がしさに気づいて近付いてくる。
「わーっ!?」
「社長、ファイトです!! あっ」
ドゴオオオオオン!! 俺はゴーレムに殴られて、そのまま吹っ飛ばされていった。
「は、配信、終わりです! 社長おおおおっ!!」
慌てて俺を追いかけていくエルミアの姿を最後に、その日の配信は終了した。
Fever Gage ★★★★☆☆☆☆☆☆




