第26話 王子からの衝撃の言葉――バズリアが王国直轄に!?
王城へ向かう為に、俺たちはカリーナの魔法で王都へと転移した。
大通りを抜ければ城門へ辿り着く――はずだったのだが。
「あの、ひょっとして社長ですか?」
「すごい。リアル不審者だ!」
「それなら、こっちはエルミアちゃん? 可愛いっ!」
「カリーナ様、素敵!」
「スラ子ちゃんはどこ?」
「グッズ買いました! サインください!!」
俺たちの周りには沢山の人が集まり、大騒ぎとなってしまっていた。
いつも配信を見てくれている視聴者の人たちのようだ。
「ははは、大人気だな!」
「言ってる場合じゃないわよ、動けないじゃない」
「ふぇぇ……、ふぇぇぇ……!?」
「エルミア、しっかり!」
「しかし今は皆に『理想投影』をかけていないのに、どうしてばれたんだ?」
俺のスキルを使っていないので、今の皆はオフの姿である。
エルミアはとんがり帽子の魔女スタイルだし、カリーナも黒いワンピース姿だ。
スラ子に至っては、クリスタルスライムの状態でエルミアの胸に抱かれている。
首をひねる俺を、カリーナが呆れたように見つめた。
「あのね! アンタのせいよ。目立つのよ、この不審者!」
「……!!」
言われて気が付いた。
確かに俺だけは、ハーフマスクの赤髪大柄男と言う、配信の時と変わらない上に、どこにいても目立つ不審者スタイルだ。
「えへへ、やっちゃったにゃん」
「ルピアの声は良いから、何とかしなさいよ!」
「分かった、分かった。……よいしょっと」
俺は人の波に翻弄されて、完全に目を回しているエルミアを抱き寄せながら声をあげた。
「視聴者のみんな、集まってくれてありがとう。社長だぜ! すまないな、全員に対応したいんだが、今は時間がないんだ。これから――王城へ向かうからな!」
俺の宣言に、集まっていた人たちからどよめきが起こる。
「おおっ、ついにか!」
「あの動画でやってた奴?」
「きゃー、生で見る社長×エルミアたん萌え!!」
「勇者パーティから呼び出されたヤツだろ」
「社長、逮捕かって話題だったよな」
「勿論その様子は、これから配信するぜ。だからここで、応援していてくれよな!」
笑顔でそう叫ぶと、歓声が沸き上がった。
その応援の声に後押しされるように、俺たちは王城へと辿り着いたのだった。
◇ ◇ ◇
<<【バズリア】王子からの呼び出し!【緊急中継!】>>
「社長だ。今日も世界をバズらせるぜ! 謁見の間にやってきたぞ。これから王子と対面だ」
俺たちは王城内の、煌びやかな謁見の間に通されていた。
事前に許可は得ていたので、待機時間中に魔導浮遊カメラを動かし始める。
勿論、メンバーも全員『理想投影』でいつもの姿に変身済みだ。
【コメント】
「枠乙」
「おおお、本当に王城だ、すげー!!」
「社長逮捕配信きたー!」
「王都でちょっと騒ぎになったんだって?」
「現場に居ました。応援してます!」
「エルミアちゃんに会えた奴、羨ましすぎる」
「ふふん。社長が逮捕されたら、このスラ子が跡を継いで見せるわ!」
「なんで一番の新入りが跡継ぎなのよ!」
「まあまあ、スラ子ちゃんは頑張り屋さんなんですよ。ねっ」
「えっへん」
いつも通り楽しく掛け合いを行う皆だが、やはりスラ子の表情はどこか固い気がした。
心配ではあるが、今はこのまま進むしかない。
「王子と聖女様、ご入場です!!」
しばらく待っていると、役人の掛け声がかかった。
俺たちは雑談を止めて、慌てて姿勢を正す。
ファンファーレの音と共に、豪奢な衣装を纏った金髪の王子と、桃色のカールヘアの聖女が現れた。
二人は高座の上に並んで、俺たちをじろじろと見降ろした。
それから王子がふんぞり返って、声をあげる。
「やっと来たか。まあ、歓迎しよう、バズリア諸君! 俺はこの国の第一王子、ピエールだ」
そのまま、王子が隣へと視線を向ける。
「そして、俺のパートナーであるこの国の聖女だ」
「私は聖女アリスですぅ。国で唯一、女神さまの神託を受けられるんですよぉ」
【コメント】
「ドキドキ」
「本物の王子だ。なんか偉そうだな」
「いや、偉いんだよ。王子だから」
「聖女様、美しい!」
「不敬な発言はBANされるって聞いたぞ」
「マジか。さよなら…」
「社長逮捕の前に、脱落した奴がいるようだな」
王子と聖女に続いて4人の勇者パーティ達も部屋に入ってくる。
彼らは高座ではなく、俺たちの隣へと一列に整列した。
「このたびは、お声がけありがとうございました」
俺がバズリアを代表して王子へ答えると、彼は含みを持ったように目を細めた。
「ああ。うちの勇者パーティに迫る勢いの冒険者がいると耳にしてな。実際、目にしてみたかったんだが――成程。そこのエルフの女は、なかなか良いな」
王子に指名されて、エルミアは驚きながら顔をあげた。
「えっ、わ、私ですか!? あああっ、ありがとうございます!」
「うん、その初心な感じ、実にいい。可愛がってやるよ。どうだ、この後、俺の部屋に――」
「へ!?」
エルミアの顔が、一瞬で真っ青になる。
当たり前だ。戦士として褒められたのかと思って喜んでいたら、露骨なセクハラが飛んできたのだ。
「おおっと、王子。冗談は其処までですよ」
俺がエルミアを庇うように一歩前に出る。
本来ならしばき倒してやりたいが、相手は王子だ。流石に無礼を働くのは不味い。
「そうよ、このど変態!!」
駄目だ。カリーナが全力で無礼を働いてしまった。
でも、よく言った!
【コメント】
「王子ヤバすぎ」
「そういえば女好きって聞いたことあるな」
「エルミアちゃんは俺が守る!!」
「社長、カリーナ、エルミアを守ってくれ!」
「王子は有能だから、私生活の自由を見逃されている印象」
「おまえら全員BANされるんか…」
「ああん? お前みたいな気の強そうな女は要らん!」
王子が蔑むような視線をカリーナへ向けると、カリーナは怒りでわなわな声を震わせた。
「はぁ!? 願い下げだわ! 私の魅力が分からないだなんて――」
「大丈夫や、カリーナの姉御は可愛いで!」
「スラ子は黙ってなさい!」
「もー、王子ってば、私がいるでしょう? 浮気はだめだめですよぉ」
甘ったるい声が謁見の間に響く。
王子の隣にいた聖女が、彼の腕に抱き着きながらにっこり微笑んだ。
「それに、今日の要件は別でしょう?」
「ああ、そうだったな。悪い悪い」
王子は悠然と俺を見下ろしながら告げた。
「喜べ! お前達のパーティをS級認定――王国直轄にしてやろう!」
「……!!」
「平民風情には過ぎた栄誉だ。勇者パーティと同格の、素晴らしい立場だぞ!」
勇者パーティたちは、驚くことなく様子を見守っている。
おそらく、事前にこのことは知らされていたのだろう。
俺はバズリアの皆へ視線を向けた。
エルミアは先ほどの出来事の為か、怯えたように震えている。
カリーナも怒りの表情で、王子を睨みつけている。
スラ子は硬い表情で、拳を握り締めていた。
俺は決意して、王子へ顔を向けて叫ぶ。
「断る!!」
Fever Gage ★★★☆☆☆☆☆☆☆




