第25話 バズリアグッズができました!皆はどれが欲しい?
四天王ルーベウスとの死闘から数日後、俺たちの元に嬉しい来訪者があった。
「みんな、お疲れさま!!」
「配信見てたよ」
「凄かったじゃない、エルミア」
「わっ、本当に詠唱姫のカリーナさんだ!」
エルミアの故郷であるエルフの里の仲間たちが、宿を訊ねてきてくれたのだ。
「皆さん、お久しぶりです!」
皆に祝福の言葉をかけられて、エルミアは嬉しそうに微笑んだ。
彼女の膝の上で、クリスタルスライムもぽよぽよ飛び跳ねている。
「エルミア、そのスライムは何だい?」
エルフパーティのリーダーであるリュシエルが問いかけると、エルミアは顔をあげる。
「スラ子ちゃんです! この子、水晶の洞窟から付いてきちゃったみたいで」
「何度ダンジョンへ戻しても追いかけてくるから、ここで世話しているんだ」
俺が説明を付け足すと、スライムは誇らしげに煌めく身体を揺らした。
「ぷるるん」
「へえ、テイムしていないモンスターが懐くのは珍しいね」
ルミエルが感心したように呟きながら、スライムを指でつつく。
スライムは抵抗することなく、大人しくぷるんとしていた。
「まあ、カリーナが特に熱心に面倒を見ているからな」
「凄いんですよ。スライムちゃん用に、可愛いリボン付のベッドまで用意してあげて――」
「余計なことは言わなくていいのよっ!」
団欒を邪魔しないようにか、部屋の隅で大人しくしていたカリーナが叫んだ。
顔を真っ赤にしている。恥ずかしかったのだろう。
そんな様子に俺とエルミアは顔を見合わせてくすくすと笑う。
それから俺は、エルフたちに問いかけた。
「折角こうして来てくれたんだ。一緒に食事でも行かないか? カメラも回していいなら最高なんだが」
「相変わらずだな、社長」
半ば呆れたように笑うリュシエルに代わって、セレスティナが話し出す。
「カメラも食事も構わないわ。でも、先に見せたいものがあるのよ」
「見せたいもの?」
「これよ!」
セレスティナが収納魔法からアイテムを取り出すと、机の上が沢山の品で溢れかえった。
「わぁ!」
「これは凄いな!」
「まあ……!」
そこには、ルピアとエルミアとカリーナのぬいぐるみや、フィーバーゲージの柄のブレスレット、配信応援用の鉢巻や団扇が並んでいる。
「エルフの里の皆で作ったの。なんとか、エルミアを応援する方法はないかしらって」
ひとつひとつ、丁寧に作られた品を手に取って、エルミアは感動で声を震わせた。
「ありがとうございます。本当に、本当に、こんな、素敵な……」
「確かに素晴らしい出来だな。これはグッズ販売すれば人気が出そうだ! 特にぬいぐるみの造りが繊細だ」
「それはガルディアスが作ったのよ」
「ええっ、ガルディアスさんが!?」
エルフの中では大柄で体格がよく、戦闘でもタンク役のガルディアスの意外な特技にエルミアは驚いているようだった。
「……別に、良いだろう」
「良いですとも。凄いですっ!!」
照れ隠しに俯くガルディアスの手を、エルミアが目を輝かせて握り締めた。
真正面から褒められて、ガルディアスは更に狼狽えながらも嬉しそうだ。
そんなエルミアへ、セレスティナがひそひそと囁く。
「それからこれは、特別に貴女へ」
「へっ?」
彼女が渡されたのは――なんと、ルピアではなく今の姿の俺のぬいぐるみだった。
「貴女、あの社長との仲はどうなったのよ?」
「ふえええっ!? ど、どうもありませんよ!?」
「全く……駄目ねぇ。もっと攻めていかないと。ああいうタイプはね、押しに弱いのよ!」
「セレスティナ、エルミアに変なことを吹き込むんじゃない」
「だって、見ていてやきもきするじゃない。もっとこう、ガッと!」
「わ、わわわ、私はその、社長のことは、本当に、大好きで、尊敬していますけれども!?」
「ほら、好きなんでしょ? 好きなんでしょ? もっと全力で――」
「はわわわわわ……!」
「セレスティナ、エルミアが壊れてしまう。それ位にしておけ」
エルミアとセレスティナ、ガルディアスの内緒話は、俺には聞こえてこなかった。
しかし、同郷の者同士、仲が良いというのは良いことだな!
「不審者って、変な所で鈍いわよね」
「……え?」
カリーナが呆れ果てた顔で俺を見つめている。
どういう意味だろうと考えかけたが――それよりも、今の俺にはすべきことがあった!
「よし、グッズの紹介もかねて配信だ。みんな、行くぞー!!」
◇ ◇ ◇
<<【大事なお知らせ】バズリアのグッズが出来ました!【特別ゲストあり!】>>
「社長だ! 今日も世界をバズらせるぜ!」
「あなたの悩みを杖でぽかん! ご覚悟! 物理エルフ、バズリア所属のエルミアです!」
「私の魅力に跪きなさい。カリーナよ」
「今日は特別ゲストがいるぜ。ドラゴン討伐の時の、エルフパーティメンバー達だ!」
リュシエルたちが配信画面に映ると、コメントは一気に盛り上がった。
【コメント】
「わーっ、懐かしい!」
「タイトルを見て飛んできました。グッズって本当ですか?」
「突然の配信嬉しい」
「グッズ期待」
「セレスティナちゃんかわいいー!」
「今日はエルフの皆に色々と話も聞いていきたいんだが、その前に、大事なお知らせだ」
俺が目線で合図を送ると、エルミアとカリーナが頷く。
「えー、皆さん、なんと! 私たちバズリアのグッズが出来ました!」
「エルフの里の人たちが作ってくれたの。よくできているわ」
二人が話している間に、俺は画面に見えるようにグッズを並べていく。
その出来の良さは画面越しでも伝わるらしく、コメントも大賑わいだ。
【コメント】
「凄すぎない?ぬいぐるみ欲しい」
「ルピたん可愛い!」
「フィーバーブレスレット御利益ありそう」
「めっちゃいいじゃん」
「欲しいけど、どこで買えるの?」
「エルフの里の人たちが、これからグッズを量産してくれるみたいだ。欲しい人には届くように販売方法も考えるから、みんな、楽しみにしていてくれ!」
俺がそう説明したところで、ぴょこんぴょこんと配信画面に飛び入ってきた影があった。
――あの、クリスタルスライムだ。
「おっと、スラ子、どうした。君もグッズが欲しいのか?」
冗談めかしてそう言う俺に、スライムは必死にぽよぽよ跳ねて何かを主張している。
「……?」
「どうしたんですか、スラ子ちゃん」
「何か言いたいことがありそうだけど」
暫し思案した後、俺はふと思いついてクリスタルスライムへ向き直った。
「もしかして――スキル『理想投影』!!」
普通に考えれば、モンスターに理想投影の効果がある可能性は低い。
ただ、このスラ子は、ずっと何かの意志を持っているようだった。
――ぽわん!
そしてその予想が当たったのか、クリスタルスライムはふわふわの泡に包まれて――それが晴れた頃には、三つ編みおさげの小柄な美少女の姿に変化していた。
「社長、商いは本気出さなあかんで!」
ふふんと、スラ子は好戦的な笑みを浮かべる。
「グッズ販売なら、うちに任せてや!!」
Fever Gage ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆




