第23話 四天王だって笑顔にさせるよ!だって最強Vtuberだから!!
「アンコール!!」
俺が声を上げると、止まっていた音楽とライトが再び動き出す。
「リベンジマッチにゃ。いっくよー!」
宣戦布告するように、俺は不敵に笑いながらルーベウスをビシッと指差す。
ルーベウスも負けじと声を張り上げ、俺を睨みつけた。
「いつまでも貴様のおふざけに付き合うと思うな。黒詠・断罪の雷!!」
黒く鋭い稲妻が洞窟内に走り、無差別にその空間内の者を襲うが――、
「なんのっ、ハッピー爆弾!!」
俺は素早く巨大なクラッカーを錬成し、それをパーンと弾けさせた。
中から溢れ出すのは、熊や兎や猫やユニコーン――とにかく愛くるしい姿の大量のぬいぐるみだ。
ぬいぐるみたちは稲妻に突撃し、その電撃に触れるとピカピカ虹色に光り輝き踊り出す。
【コメント】
「アンコール!アンコール!!」
「ルピたんがんばれー!」
「ぬいぐるみ爆弾、かわいいけど笑った」
「これにはルーベウスもにっこり」
「いや、無理でしょ!」
「笑顔の法則その1! 可愛いもの! 可愛いは正義! ねっ、カリーナ!」
「なんで私に言うのよ!!」
自分の魔法を意味の分からない方法で無効化されたルーベウスは、暫し唖然として硬直した。
しかしすぐに我に返ると、俺に向かって追撃しながら怒鳴りつけてきた。
「き、貴様、なんのつもりだ! 魔力奔流!」
俺はその攻撃をぬいぐるみ盾で受け流しつつ、首を傾げる。
「うーん、可愛いのは駄目だったにゃ? 猫動画とか見ないタイプ?」
「非効率的だ。これだけの力があるなら、全て攻撃に使えばもっと戦えるだろう! 貴様、私を舐めてるのか!?」
「にゃはは、そんなのバズらないし駄目にゃ。それに――」
「煉獄火雨!」
「ハッピー団扇!!」
強烈な炎の嵐を、俺は巨大団扇を振り回して消火した。
可愛くデコった団扇には、『ルーベウス♡』『笑って♡』と書いてある。
「暗い顔は笑顔にさせたくなるのが、Vtuberってもんだにゃ!」
「まだそんなふざけたことを――」
「ルーベウスさん、ご覚悟!!」
声を荒げるルーベウスの背後から、エルミアが全力で殴りかかった。
完全に殺気のこもった拳だが、彼女の頭にも、『ルーベウス♡笑って♡』と書かれた鉢巻が巻いてある。
【コメント】
「ここでエルミアちゃん!」
「きた、俺の推し!!」
「ご覚悟!」
「殺意と笑いの奇跡のコラボレーション☆」
「冷静に考えて怖いけど可愛いからOKです!」
「やっぱり拳だー!」
「くっ、詠結界! 貴様は自分の行動に疑問を抱かないのか!?」
「私は社長を信じます! 全てに全力投球です!」
魔法で拳を防がれても真っ直ぐな瞳で答えるエルミアに、ルーベウスが眉を寄せる。
「少しは立ち止まって考えろ!」
「天火降臨!!」
叫ぶルーベウスの頭上から、巨大なハート型の火の玉が、ふわふわエフェクトと共に落下してくる。
「どうです、ルーベウス様。うちのエルミアの天然はなかなか凄まじいでしょう!」
大技と共にドヤ顔で声をあげるカリーナに、ルーベウスが更に顔を歪めた。
ルーベウスは防御障壁を撃ち出すことで、火の玉を相殺して無効化する。
「くそっ、どうして少し誇らしげなのだ! というかカリーナ、お前の魔法は一体どうしてこうなった」
「仕様です!!」
【コメント】
「ラブリー仕様です!」
「うちのカリーナちゃんはこうなんです!」
「ルーベウス流石に強い」
「笑ったか!?」
「困ってはいるな!よし!」
「ルーベウスの突っ込みが割と冷静で草」
ルーベウスのペースが乱れてきつつあることを感じた俺は、次の作戦へと移行した。
ここで一気に畳みかける!
「笑顔の法則その2! 笑えるギャグや小咄! ふっふっふ、遂にルピアのトークスキルを披露する時が来たようだ――」
「聞くか! 煉獄火雨!!」
「う”にゃー!!」
不意打ちの強烈な炎の嵐に、俺は防ぐ間もなく包み込まれて炎上した。
「社長!!」
「不審者!?」
エルミアとカリーナが悲鳴を上げる。
そして炎が収まって露になった俺は――頬が黒く煤焦げて、ボンバーヘッドと化していた。
古き良き、爆発落ちスタイルである。
「配信の炎上に比べれば、これくらいどうってことないにゃ!!」
胸を張る俺に、ルーベウスが困惑の色を深める。
「な、なんだその恰好は……」
「ええっ。この爆発スタイルの面白さが伝わらないにゃ!? 分かるよね、エルミア!」
「??????」
エルミアは申し訳なさそうに、曖昧な笑みを浮かべている。
「くっ、そうか、異世界では爆発落ちは存在しないのかにゃ。これぞ異文化コミュニケーション。失敗、失敗にゃ!」
てへっと自分の頭をコツンとすれば、俺は元通りの赤猫ルピアの姿に戻る。
そして今度は、大砲を錬成して掲げた。
「――さあ、ここからは視聴者参加型だよ。みんな、ルーベウスを笑わせるコメントを打つにゃー!!」
【コメント】
「うおおおおおお」
「大喜利始まった!」
「ルーベウスちゃん♡笑って♡」
「無茶ぶりだ!」
「ふとんがふっとんだ」
「おい、寒くなったぞ!!」
ルーベウスは険しい表情で、配信画面を高速で流れていくコメントを見つめている。
握り締めた拳が、怒りからか、わなわなと震えている。
「貴様は……、本当に、私を馬鹿にしているのか!?」
「してないにゃ!」
俺は大砲を担いだまま、ニイッと笑う。
「ルピアは頑張る人を馬鹿にしないにゃ。でも、苦しいままって嫌じゃない?」
「余計なお世話だ!」
「いいや、お世話する!! ――ルーベウス、君にも光を見せてあげるにゃ」
コメントもたまってきたところで、俺は勢いよく地面を蹴る。
俺に続いてエルミアとカリーナ、そして踊っていた魔物や人形たちもルーベウスに向かっていく。
音楽と光を引き連れた大行進、さながら華やかなパレードだ。
「いっくよー!! ルピア砲!!」
集団の先頭である俺の大砲から、コメントの文字列がそのまま魔力の塊となって射出されていく。
『ね、ネコがねこんだ!』
『ルーベウス、笑ってー!』
『筋肉は全てを解決する!!』
『これは私が子供の頃の話なんだけど、ある朝起きたら枕元にスライムがいて、びっくりしておきたら階段にもスライムがびっしりいて、階段が滑り台みたいになってたの。それで気を付けて降りようと思ったら見事にすっころんで、ツルーンって!で、落ちた場所にはパパもママも転がっていて、みんなツルーン!ってなっちゃったんだって。困ったねえって笑っていたら、今度は弟までツルーンって』
『上の奴、長くて読めねえよ!!』
「ぐっ、気が散る……、魔弾掃射!!」
ルーベウスが顔を顰めながらも、魔弾を一斉射出して、コメント爆撃を打ち落としていく。
魔力と魔力がぶつかり合って辺り一帯で爆発音が響き渡り、火花と煙が舞う。
「まだまだいくにゃー!」
「はいっ!」
「行くわよ!」
魔弾を潜り抜けてきたエルミアとカリーナが、同時にルーベウスに飛び掛かる。
「馬鹿め、貴様らの攻撃など私には届かん!」
彼らの攻撃に対応しようとしたルーベウスは、ハッとする。
状況の異常さに困惑していた彼の、僅かな判断ミス。
「光条乱反射!!」
エルミアの後押しにより前に出たカリーナが放ったのは、攻撃ではなく目くらましの魔法。
「……なっ!?」
一瞬止まったルーベウスの動きを見逃さず、物量で魔弾を潜り抜けてきた魔物達が雪崩れ込む。
そこに、俺はルピア砲を追撃で撃ち込む。
『ルーベウスちゃん♡ウインクして♡』
『家族全員がスライムで滑ってきちゃったんだけど、もう、どうにもならないじゃない。だから掃除しようとして立ちあがったんだけど、そこでも全員ツルーン!ってなって立てなくってさ。仕方がないから近所のおじさんに助けを頼んだんだけど、おじさんもドアを開けた瞬間、床のスライムでツルーン!って』
『コーディネートは、こーでねーと!』
『ルーベウスもふりふりアイドルになると良いよ』
『スライムの話、いつまでやってんだよ!』
「い、いい加減にしろ!! 魔力奔流」
魔力の波動で、ルーベウスの周囲の魔物たちもコメント砲弾も全て弾き飛ばされる。
しかし、先程までよりも明らかに出力が落ちている。
そのおかげでその場に踏みとどまれた俺は、ルーベウスにビシッと指先を突き付けた。
「どうだ、熱狂の力は!!」
「どうもこうもあるか、こんなもの!」
「ルーベウス、確かに理想は人を堕落させることもあるよ。そう言う人、ルピアもいーっぱい見てきた!」
「……ならば!」
「だけど、ルピアの配信は違う! 見てよ、みんなの熱狂を! 輝きを!」
「――そんな、もの……」
「馬鹿みたいだけど、一生懸命なの。それって最高じゃない?」
「……」
「さあ、最後の仕上げ――笑顔の法則その3! やっぱりノリノリのライブでしょ」
【コメント】
「やったー!!」
「きたきたきた、まってました!」
「ルピたーん」
「もうギャグは要らないの!?」
「いけー!」
「うおおおおおおおおお」
パッと照明が切り替わって、俺とエルミアとカリーナの三人が照らされる。
流れる音楽の音量もガンガンに上がって、水晶の洞窟全体がミュージックボックスのようだ。
曲に合わせてキレキレの踊りを披露してから、俺は笑顔で歌い始める。
「ぴょいっとジャンプ!最前列! スポットライト独占中☆
でもね主役はキミもだよ。 一緒じゃなきゃ意味ないにゃ――♪」
そこに、エルミアとカリーナの歌も加わる。
「やらかしだってご愛嬌 それも含めてエンタメでしょ?」
「笑ってくれたらそれで勝ち! 今日も伝説更新にゃ!」
俺たち三人は水晶の洞窟内をステージにして、跳ね回るようにパフォーマンスを魅せる。
更に魔物ダンサーズとペンライト部隊も乱入して、パーン、と大きな花火が上がった。
コメントも一体となって盛り上がっていく様子を、ルーベウスは呆然と見つめていた。
彼の深く皺の刻まれた眉間に、虹色のライトが明滅する。
「……」
ルーベウスはステージに向けて魔術を放つ準備をするように手を翳し――しかし、その腕をゆっくりと下ろした。
俺はその姿に気づき、ウインクする。
ルーベウスは複雑そうな硬い表情で、俺を見つめ返すばかりだった。
それでも、そんな彼へ、俺たちは歌い続ける。
「ねぇ ちょっと静かにして? ……なんてウソだよもっと騒ごう!
キミの熱がエネルギー ルピア、フルチャージ完了――♪」
俺とエルミアとカリーナが手を繋ぎ、声を張り上げる。
「「「ラストいくにゃー!」」」
コメントの弾幕も最高潮だ。
煌めく水晶の洞窟の壁のいたるところに、弾幕コメントが縦横無尽に流れ出す。
『ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆』
「「「同接欲しい!」」」
『ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆』
「「「撮れ高欲しい!」」」
『ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆』
「「「でも、一番は!」」」
『ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆』
「「「笑顔が欲しい!」」」
「キミと騒げば無敵だよ! 全部ぜんぶ巻き込むにゃ!
次回も、見逃さないでね。 チャンネル登録、宜しくにゃん――♪」
――――パァン!! 最後に紙テープと花吹雪が派手に舞い上がって、ライブは終了した。
Fever Gage ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




