第22話 特別開催、延長ライブ!赤猫ルピアが大暴れ!あなたの心にルピア砲☆
瞬く間に水晶の洞窟は、爆音が響き、虹色ライトの煌めくライブ会場へと様変わりした。
「なっ……、な、なんだ。何が起きている!?」
愕然とするルーベウスに、赤猫ルピアの姿となった俺は不敵に笑った。
「説明しよう! 配信で盛り上がるごとにFever Gageが溜まっていき、熱狂が臨界点に達したとき、私の裏スキルである『フィーバータイム』が発動するのにゃ!」
「なんだと!?」
「その可能性は――無限大!!」
俺の言葉と共に、巨大な花火が何発も派手に打ちあがる。
「今日はルーベウス! 貴方に最高の特別ライブをお届けしちゃうにゃ。勿論、視聴者の皆も盛り上がっていくよー!」
【コメント】
「うおおおおおおおおおお」
「ルピア!ルピア!ルピア!」
「社長の狙いはこれか」
「これが噂のフィーバータイムか」
「エルミアちゃんとカリーナちゃんも無事だ!!」
「凄いじゃん、何これ格好いい!」
「ルピたん、いっけー!」
「行くよ、エルミア、カリーナ。準備は良いかにゃ?」
「はい!」
「勿論よ!」
俺はエルミアとカリーナと一度手を繋ぎ、意思を確かめ合うとそっと手を離した。
そして、真っ直ぐに、強気に輝く瞳で、ルーベウスを見据える。
「エルミアとカリーナの頑張りは無駄なんかじゃない。それを見せてあげるにゃ!」
ルーベウスは俺を鋭い眼差しで睨み返してくる。
「くだらん。貴様がどんな姿に変化しようと、私の敵ではない!!」
――俺はニイッと笑みを深めると、指を鳴らす。
その合図で、『にゃにゃっと参上、ルピアタイム!』のイントロが流れ出した。
「ぴょこんと猫耳! きらっと赤髪!
今日もあなたにルピア砲!
赤猫ルピア、配信開始にゃ――♪」
歌いながら俺はスカートを翻し、全力でルーベウスへ向かって駆けだす。
「行け!!」
それを迎え撃つように、ルーベウスが魔物たちへ俺を襲うように指示を出した。
しかし――、
「おい、貴様ら! 何をしている!?」
魔物たちはルーベウスの指示を聞かず、音楽に合わせてノリノリで踊っている。
クリスタルスライムはぽよぽよ飛び跳ね、クォーツゴブリンは水晶をペンライトのように振っていた。
【コメント】
「ひゃっほううう!」
「ルピたん最高だぜ!」
「いっけー!」
「ルピア!ルピア!」
「一匹すごいリズミカルなスライムいて草」
「ルーベウス困ってる!」
「ルピア砲期待!!」
「さあさ集まれ画面の向こう 寝不足上等ついてきな!
しょげてる顔は禁止だよ 全部まとめて撃ち抜くにゃ♪」
尻尾を振ってきたシャードウルフの背に乗って、俺は更にルーベウスへ接近していく。
今や水晶の洞窟内一帯は、完全にライブの熱狂に包まれていた。
ルーベウスは困惑を滲ませながら、悔し気に顔を歪める。
「ウインク一発 バフ発動! テンション急上昇↑↑
キミのハートに一直線 逃げても無駄だよロックオン――♪」
ルーベウスの目の前まで辿り着いた俺は、思い切り手を振り上げた。
歌のサビに差し掛かるところで、ルーベウスの頭上に巨大な渦が出現する。
「みんな、力を貸して!! ルピア砲、いっくよー!」
エルミアとカリーナが、コメントの弾幕を促すように声を張り上げる。
「「せーのっ!」」
【コメント】
「ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆」
「ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆」
「弾幕!」
「ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆」
「ルーピルピルピ☆」
怒涛の勢いでコメントが流れていく。
その文字がそのまま渦の中から弾丸のように射出され、ルーベウスに直撃していく。
「まだまだいくにゃー!」
【コメント】
「いっけー!!」
「ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆」
「るーぴるぴるぴ」
「ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆」
「ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆」
絶え間ない攻撃で水晶が砕けて舞い散り、光が乱反射する。
砂埃と光で、ルーベウスの姿すら確認ができない程の猛攻だ。
「ラスト、もういっちょ!」
【コメント】
「ルーピルピルピ☆」
「ルピたん可愛い!」
「ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆」
「ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆」
「ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆ルーピルピルピ☆」
一際激しい攻撃が、とどめとばかりにルーベウスへと降り注いだ。
コメントには歓声が上がりかけるが――、
「成程、これは、”女神の力”か」
俺たちが最終弾幕の攻撃を終えた瞬間、地に轟くような低い声が音楽を切り裂いた。
それは忌々し気な、深い恨みを感じさせる声色だった。
――――カッ!!
眩い光と共に、砂煙も水晶の欠片も一瞬で全て吹き飛ばされる。
その中心には涼やかな顔で佇む、無傷のルーベウスの姿があった。
「……!!」
これが決定打にならない可能性は考えていたが、まさか完全に防がれるとは思わなかった。
俺は内心で焦りつつも、笑みは崩さない。
「流石だにゃ。これが四天王の実力って訳ね」
「そうだ。こんな紛い物に、私が敗北するはずがない」
「確かに貴方は強い。でも、私の力だって、紛い物なんかじゃないにゃ!」
俺は近くにいたエルミアとカリーナの肩を引き寄せて、自信満々に声をあげる。
「私たちの熱狂は、本物で最強なんだから!」
「ふぇっ!? あ、そ、そうです!」
「えっ!? そ、そうね。そうよ!」
困惑しながらも、エルミアとカリーナは頷いてくれた。
うん、良い仲間たちだ。
「ふん。だが、弱いではないか」
嘲るように言うルーベウスの顔を、俺はじっと見つめた。
彼と対峙してから、ずっと気になっていたことがあるのだ。
強硬な態度、含みのある言動、冷徹な表情。
「――ルーベウス。貴方、最後に笑ったの、いつ?」
「はっ?」
俺の唐突な質問にルーベウスは訝し気に眉を寄せる。
「確かに貴方は強い。でも、全然楽しくなさそうにゃ」
「くだらない。楽しさなど堕落の元だ。この世界に必要ない」
「本当に、そう思ってる?」
「なんだと」
「貴方が大切にしている魔王さまも、ずっと楽しくなくていいの?」
「……!」
ルーベウスの表情が、一瞬だがはっきりと崩れた。
俺はそれを見逃さなかった。
唯一の光明は――おそらく、これだ!
「良いにゃ、ルーベウス。まずは貴方を笑顔にして見せる」
改めて宣戦布告するように、俺は不敵に笑った。
「何故なら私は最強のVtuberだからにゃ。笑わせることなら――誰にも負けない!」
Fever Gage ★★★★★★★★★★




