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第1話 強火ファン女神のせいで、うっかり異世界転生!?


「ここは!」


 俺が目を覚ましたのは、巨大な祭壇の上だった。


 壁には所狭しと「赤猫ルピア」のポスターが貼り付けてあり、棚には限定商品を含めたあらゆるルピアグッズが敷き詰められている。


「本当にどこだ!?」


 俺は確か、引退配信の真っ最中のはずだった。

 ――そう、この俺『皆月聖夜』は赤猫ルピアの中の人である。 


 今日はVtuber引退と同時に華々しく社長デビューして、これから理想のV事務所を作っていくつもりだった。

 でも、もう配信画面も見えないし、ルピメイト達のコメントも流れてこない。

 動揺と同時に、大きな喪失感に襲われる。


「ごっ、ごめんなさい、ルピたん……」


 困惑する俺の視界に、ちんまりと土下座する女の姿が映った。

 虹色に煌めく美しい長髪を床に擦りつけて、美しい角度で頭を下げ続けている。


「ええと、どちら様?」


「女神ですぅ。ラブルピ女神……」


 その名前に、俺はすぐにピンときた。

 リスナーのコテハンを記憶するのは得意だ。


「最古参ファンの一人じゃないか! いつも楽しいコメントありがとにゃ」


 俺がルピアの声色ですぐさま返事をすると、女は目を輝かせながら顔をあげた。


「きゃー!! 生ルピたん。あの、いつもの。いつものお願いしますっ!!」


「いつもの? 仕方がないにゃぁ」


 ふふふ、と少しだけ勿体ぶりながらも、俺はばっちり決めポーズをとる。

 そして配信開始の口上を披露した。



 「ぴょこんと猫耳!

  きらっと赤髪! 

  今日もあなたにルピア砲! 


  赤猫ルピア、配信開始にゃ!」



 ちなみにお気づきの通り、俺はネカマVtuberである。

 男だが女のアバターを使って配信していた。

 これは大々的に公表しており、周知の事実である。

 

「きゃー、ルピたーん。尊いいいっ、もう昇天! 蒸発、女神蒸発しますううぅ」


「まてまて、昇天するな!? ここがどこなのか説明してくれ!」


 きらきらエフェクトを伴って本当に光の粒になりかけている女神を、俺は必死に止めた。

 女神は我に返ると、改めて俺に向き直る。


「……取り乱して失礼しました。私はこの世界の女神。そしてここは、私の個人的なオタ活部屋」


「オタ活部屋」


「はい。女神生活も色々とストレスがありまして……そんなとき、地球で活動するルピたんの配信を見て元気をもらったんです。ファンです。一生推します!!」


「それはありがと――って、待て、この世界? 地球? え、ここは地球ではない感じ?」


「はい、あの、その。とっても言い難いんですが」


 女神はもじもじとしながら俺に告げた。


「ルピたんは引退配信中に、死んでしまいました」


「ええ!? なんで!?」


「私が配信に興奮し過ぎて……、うっかりスパチャと間違えて、地球に魔力を送ってしまった衝撃で」


「そんな間違えることある?」


 それは、あまりに現実離れした話だった。

 しかし今のこの状況が、女神の説明に妙な説得力を与えている。


「ごめんなさいいっ。もう、謝っても謝り切れないです。やっぱり女神、ケジメを付けて蒸発します」


「まてまてまて!」


 儚い笑みを浮かべて再び光の粒になっていく女神を、俺は慌てて引き留めた。


「要するに、異世界転生って奴か? 俺はそこまで詳しくないが――」


「……そうなりますね。死んでしまったルピたんの魂を、急いでこちらの世界に引き寄せたので。残念ながら、元の世界に戻してあげることはできないのですが」


「ふむぅ」


 俺は思考を巡らせた。

 夢の半ばで死んでしまったというのは正直、辛い。

 だが、嘆いていたところで始まらない。 

 

 俺が死んだのも完全に事故のようだし、推してくれていた女神を責めるのも気が引ける。

 それに俺の――ルピアの長所は、いつでも全力前向きな所だ。


「ラブルピ女神、この世界には配信はあるのか?」


「配信ですか? あります、ダンジョン配信ですが」


「ダンジョン配信?」


「はい。冒険者がモンスターを倒すところを配信して、そこで収益を得て資金源にするのです。全国どこからでも自由に配信可能な魔法システムが出来上がっていて、視聴者は全国民! 魔族や高知能の魔物も配信を見ることがあるみたいですよ」


「ほほう、面白そうだな!」


「ルピたん! ダンジョン配信に興味ありますか? それなら壮絶チート能力で、最強冒険者に――」


 女神が声を弾ませかけたところで、ハッとしてまた落ち込んだ。


「……駄目でした。女神、そこまでの力はないのでした。世界へ干渉する力が弱まっていて」


「問題ない。最初から、チート能力なんて望んじゃいないさ」


 俺は不敵に笑うと、女神へと手を差し出す。


「その代わり、欲しい『能力スキル』がある。多少の制約があっても構わない」


「欲しい力ですか?」


「そうだ、『理想投影――相手が望んだ姿に、対象者の見た目を変えることができる能力』が欲しい」


「そ、それなら、お役に立てると思います。でも、本当に変わるのは見た目だけで、能力はそのままですよ。その力でどうするのですか?」


「決まっているじゃないか! この世界で、最強Vtuber事務所を作る」


 俺は高らかに宣言する。


「どこに居たって、やることは同じさ。俺は夢を諦めない! エルフ、獣人、ドワーフ、なんでもこいだ。異世界に眠っている才能を発掘して、輝かせてみせる」


「ルピたん! それでこそ、ルピたんです――いえ、社長!!」


 落ち込んでいた女神の顔が、ぱっと明るく笑顔になった。

 やっぱりいいな。

 誰かを笑顔にするこの瞬間――最高だ!


 俺はビシッと指を空高くへ突き付ける。


「さあ、世界をバズらせるぞ!!」


 俺の身体が、異世界の地上へと転移され始める。

 これで女神ともお別れだと、直感的に悟った。


「頑張ってくださいね、ルピたん。私は地上へ直接干渉することはできないのですが、いつも見守っていますから!」


「ああ、任せてくれ」


「せめてものお詫びで、装備などは一通り揃えさせて頂きます。あと……」


 俺が女神の世界から消え去る直前、女神はにっこりと微笑んだ。


「スキルにちょっとだけ『おまけ』をしておきました。上手く活用してくださいね!」

赤猫ルピアだよ!

ここまで読んでくれてありがとうにゃ!

面白かったらいいねとチャンネル登録ブクマを宜しくね!

赤スパ(★評価)やコメントもお待ちしているにゃ!


ちなみに、プロローグに女神ちゃんのコメントが紛れ込んでるにゃ。

探してみてね!!

次回から、私の大活躍がはじまるよー!

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