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第2話 いきなり誕生! 美少女エルフVtuberエルミア!


「え、えっと、それでは配信を、はじめま、す」


 とんがり魔女帽子を被ったエルフの少女が、杖を片手に浮遊魔導カメラに話しかける。

 コメント数は0、同接数は1。

 殆ど無風の配信だったが、彼女は健気に撮影を続けた。


「今日は、あの、お一人見て頂いて、嬉しいです。いつも、その、ゼロなので……」


 不器用ながらも一生懸命な笑みを浮かべて、少女はダンジョンの中へと進んでいく。


「私……エルフなのに、魔法が、苦手で……でも、頑張りま、ひゃうっ!?」


 ぴょこんと岩陰から現れたのは小さなスライムだ。

 初心者が最初に練習で討伐するような、いわゆる雑魚モンスターである。


「あ、あ、ああっ、ふぁ、ファイヤーボール!!」


 エルフ少女は狼狽えながらも杖を振る。

 ――ぽわん。

 杖の先に、指先程のか細い炎がともった。


「ふええええんっ」


 その炎も、風が吹けばあっというまに消えてしまう。

 スライムは不思議そうにぽよぽよ弾んだ後、無情にも少女へ襲い掛かってきた。

 

「ちょ、ちょっと、中断。中断しますね、ちょっとだけっ!」


 少女は叫び声をあげる。

 そしてカメラはオフになり、暫く配信は中断した。


 5分後、エルフ少女の配信が再開される。


「お、お待たせ、しましたっ」


 画面の中に、先ほど襲い掛かってきたスライムは見当たらない。

 

「ええと、あの、スライムは親切な方が、倒してくれて――ああっ!?」


 たどたどしく喋っていた少女が、絶望の表情を浮かべた。

 中断前に1だった同接数が、0へと戻っていたのだ。


「あっ、あぁ、そんな。折角、見て貰えるチャンスだったのに」


 少女は目に涙を溜めると膝をついた。

 必死に泣くまいと我慢しているようだが、ついに雫が頬を伝う。


「やっぱり、やっぱり、私には、無理なのかなぁ。同接10なんて、とても……」



 ――ざっざっざっ。

 そんなエルフ少女の元へ、俺は歩み寄った。



「見えたぞ、その輝き!!」


 撮影を続けている彼女の魔導カメラの画面に入りながら、俺は高らかに言う。



「へっ?」


 俺の声を聞いたエルフ少女が、おそるおそる顔をあげた。


「きゃあああっ、不審者ぁああ!!」


「不審者とは失礼な。社長だ!」


 悲鳴を上げるエルフ少女に、俺は言い返した。

 

 ちなみに素の俺は、まあまあガタイの良い男である。

 そして今は、真っ赤な髪を後ろで低く一つ括りにし、黒い貴族服に緑色のマント、そして白と黒のハーフマスクを付けている。


 ――うん、普通に不審者だったかもしれない。

 しかし無問題だ。配信は、インパクト勝負だ!

 

「さて、少女よ。君の先ほどまでの同接1は、何を隠そう俺のことだ」


「え、あの、不審……社長さん、が?」


「そうとも。そして、君からは大いなる可能性――輝きを感じた」


 俺が微笑みかけると、エルフ少女は驚いた顔を見せた後、すぐに表情を曇らせる。


「良いんです、慰めは。私、分かってました。配信も、冒険者も、向いてないって……」


「おや、それは勿体ない。でも、それならどうして、あんなに配信を頑張っていたんだい?」


「それは――」


 喋りかけたエルフ少女の視線が、魔導カメラへ向く。


「あの、カメラのない所で、お話を」


「君がそうしたいなら、無理強いはしない」


 不安げな少女へ、俺は優しく語り掛ける。


「しかし、視聴者が求めるのはリアル。作りものじゃない、心からの想い、情熱だ。君の思い、世界に届けて見ないか?」


「心からの……想い……」


 エルフ少女は声を震わせた。

 そして暫しの沈黙の後、話し始めてくれた。


「私は幼い頃から、魔法が苦手でした。でも、冒険者には憧れていたんです。勇者様のダンジョン攻略配信は、何度も何度も見返して――」


「なるほど。良いじゃないか、幼い頃からの夢!」


「だけど仲間のエルフ達のパーティには入れて貰えませんでした。攻撃も、防御も、状態異常系も、どの魔法も使えないから、足手まといだと」


 少女はぎゅっと小さな手で杖を握り締める。


「練習したんです、沢山。それでも上手くいかなくて……。そしたら、仲間に言われたんです。ダンジョン配信で同接10をとることができたら、試しにパーティに入れて貰えるって」


「同接10ね」


 相槌を打つ俺に、エルフ少女は苦笑する。


「……社長さんも、無理だと思いますよね。同接1ですら奇跡の私が、魔法も使えない私が、誰かに見て貰うなんて――」


「いいや。見てごらん?」


「えっ?」


 俺の声に、少女が配信者用画面の方へ顔をあげた。

 宙に浮かぶウインドウ上で、撮影中の映像と同接数やコメントなどが確認できるものだ。



【コメント】

「良い話じゃん」

「頑張れー」

「不審者出現で思わず見ちゃった」

「エルフちゃんかわいい。名前なに?」

「支援」

「社長が不審者過ぎて笑う」


 ――同接12。



「同接……え、じ、12!?」


「ははは、達成してしまったな!」


「そんな。嘘、夢みたい」


 唖然とするエルフ少女へ、俺は問いかける。


「さて、君の目的である同接10は達成した。だけど、これで終わりで良いのかい?」


「どういうこと、ですか?」


「俺の目は、君の輝きを見抜いている。君は、ここで終わるような存在じゃない!」


「へっ、え、あの」


「憧れていたんだろう? 勇者パーティに。冒険者に。モンスター討伐に!」


「は、はいっ」


「俺なら君を、望む姿にしてやれる」


「望む姿……ですか?」


「そう。ただし、姿だけだ。それをどう活かすかは、君次第だ」


「……!」


 エルフ少女が息をのむ。

 そして、彼女の表情が決意に満ちたものへと変化した。


「私、もっと頑張りたい。少し怖いけど、でも、自分の姿を、沢山に人に見てもらいたい!」


 そこに配信序盤の、おどおどと震える気弱な姿は無かった。

 エルフ娘はきらきらとした表情で声をあげる。


「そして見た人に勇気を与えたい。私が、勇者様にそうしてもらったように!」


「よく言った! ならば契約だ。覚悟は良いか?」


「はい!」


「よし。了承するなら、名前を教えてくれ」



「私は、エルミア。勇敢なるエルフの戦士、エルミア――!!」


 スキル『理想投影』発動!!

 俺がスキルを使用すると、エルフ少女――エルミアの姿が眩い光に包まれる。



 元は黒いローブととんがり帽子の魔女姿だったエルミア。

 しかし光が消え去ると、彼女は白銀の鎧と青いミニスカート姿の戦士へと変化していた。



Fever Gage ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

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