第18話 初の歌ライブは波乱の開幕!?カリーナがいません!!
<<【公開初ライブ】Twin Blaze~空と雲のシンフォニア~【in 水晶の洞窟】>>
「社長だ! 今日も世界をバズらせるぜ!」
「あなたの悩みを杖でぽかん! ご覚悟! 物理エルフ、バズリア所属のエルミアです!」
「今回はついに告知してた初ライブだ。盛り上がっていくぜ――と、言いたいところなんだが……」
「じ、実は、カリーナさんが来てませんっ!」
【コメント】
「始まった!楽しみ!」
「あれ、二人?」
「ライブってどんな感じだろう」
「エルミアちゃーん!!」
「えええ。カリーナ不在?なんで?」
「水晶の洞窟きれい」
「今朝からカリーナと連絡がとれていないんだよな」
「その割には社長、焦っていませんね?」
「はは。Vtuberが配信に遅れるなんて、通常進行だぜ。むしろ今までが順調すぎたんだ」
「そうなんですか!?」
「懐かしいなぁ。5人でゲーム企画したら4人にドタキャンされて、結局9時間耐久で一人雑談配信したあの日……」
「どんな壮絶な世界なんですか!?」
「今日の集合時間は朝早かったし、まあ、寝坊とかだろ。カリーナ! 全然大丈夫だから、配信に気付いたらとにかく連絡してくれ。視聴者と一緒に待ってるぜ!」
「待ってます!」
「それじゃ、折角だから特別に、デビュー曲の裏話でもしながら待っていようか」
「わあ。教えてくださいっ!」
待ちに待った初ライブ配信の日、なんとカリーナと音信不通になってしまった。
しかし、Vtuberの大らかなスケジュール管理に慣れている俺は特に焦ってはいなかった。
――むしろこのアクシデントも同接数に変換して、ライブを成功させてやるぜ!
カリーナは繊細な所があるし、ライブ前に緊張して寝坊したのかもしれない。
そんな風に予測して、とにかく場を繋いで温めることに集中していた。
◇ ◇ ◇
15分ほど経過したところで、エルミアが声をあげた。
「あっ、カリーナさん!」
「本当だ。直接来てくれたのか!」
浮遊魔導カメラが俺たちの声に反応するように、水晶の洞窟に到着したカリーナを映す。
【コメント】
「きたー!」
「社長トーク面白かったけど、やっぱライブ楽しみ!」
「カリーナちゃんいらっしゃい」
「待ってたよ」
「なんか顔色悪くない?」
「黒服カリーナちゃんだー」
「まさかの体調不良?無理しないで欲しい」
姿を現したカリーナは、確かに普段よりも重い雰囲気を纏っていた。
だが、それは緊張や、遅刻への罪悪感からかもしれない。
俺は出来るだけ彼女が気を病まずにすむように、明るい声で告げた。
「カリーナ、合流できて良かったぜ。早速、スキル『理想投影』を――」
「馴れ馴れしく話しかけてこないで!!」
駆け寄る俺たちを制止するように、カリーナが声を張り上げる。
「か、カリーナさん? どうしたんですか……?」
思わず足を止めたエルミアが、困惑したように呟く。
「まだ分からないの? くだらないお遊びは、ここまでだと言っているの」
「くらだない……遊び……?」
「”配信ごっこ”は、もう終わりよ」
「……!!」
突然のカリーナの豹変に俺は戸惑った。
しかし、冷たく見える彼女の表情には、葛藤するような苦悶が滲んでいる。
その原因を必死に考え、ひとつの推測に辿り着いた。
「カリーナ、まさか、四天王に何か言われたのか?」
図星だったのか、カリーナが小さく息をのんだ。
だが、彼女の強硬な態度は崩れない。
「昨夜、四天王ルーベウス様から連絡があったわ」
カリーナは決別を表明するように、続けてきっぱりと言い放った。
「――四天王ルーベウス様は、私の失態に対して、寛大にも最後の慈悲を与えてくださったの。これが魔王軍に戻るための、ラストチャンスだと」
カリーナの周囲に魔力が張り詰め、一気に空気が震えだす。
「バズリアを潰す!! 炎詠・降句」
「いけません、社長っ!」
素早い詠唱と共に、無数の火の玉が灼熱と共に降り注いでくる。
圧倒されて動けないでいる俺を、エルミアが抱えてなんとか回避してくれた。
二人は逃げた勢いで、水晶の洞窟の壁に勢いよくぶつかる。
カリーナの攻撃の威力は凄まじく、その周囲には大きな穴が形成され――彼女の本気を物語っていた。
【コメント】
「まって、どういうこと」
「ドッキリ?」
「いや、流石に本当なんじゃないの」
「大丈夫!?」
「カリーナの攻撃威力やばい」
「どうしたらいいの?エルミアちゃん応援?」
「カリーナちゃん、戻ってきて!!」
「カリーナさん、私、貴女と戦いたくないです。やめてください!!」
エルミアが悲痛な声をあげるが、カリーナの攻撃は止まない。
「そう。なら、そのまま大人しく死になさい! 詠鎖」
「――ッ、それも出来ません。私には、夢があるから」
絡みついてくる魔法の鎖の動きを、エルミアは見切って素早く躱した。
そのまま、杖の強烈な突きで鎖を打ち砕く。
「私はVtuberになって世界を熱狂させる! 社長と! そして――カリーナさんと!!」
「……っ。私の鎖を――やるわね」
エルミアの回避が予想外だったのか、カリーナが少し表情を硬くした。
そんなカリーナを見つめつつ、エルミアは泣き出しそうな顔で笑う。
「はい。私、強くなったでしょう? カリーナさんのおかげですよ」
彼女はきっと思い出しているのだ。
今まで、カリーナと共に過ごした時間を。
――配信したり、歌の練習をしたり、ダンジョン攻略したり。
それは決して長い期間ではなかったけれど、とても充実したものだったはずだ。
「私、もっともっと、頑張りますから。歌も上手くなるし、強くもなりますから。だから、お願いです、戻ってきてください。きっと、後悔させませんから!」
カリーナが唇を噛む。
「……関係ないわ」
絞り出すような冷たい声で、彼女は続ける。
「魔族は所詮、人とは分かり合えないものなの。愚かな人間を恐怖で慄かせ、従わせるのが――私」
カリーナが魔力を練り上げ始めると、洞窟の上空に巨大な渦が出現した。
「『戦慄の詠唱姫カリーナ』それが、私。天火降臨!!」
「くっ……あ、諦めません!!」
轟音と共に炎が雨のように降り注ぎ、被弾した水晶が砕け散った。
砕けた水晶が火を反射して煌めく中、カリーナとエルミアの激しいバトルが始まった。
【コメント】
「これ、マジなの?」
「エルミアちゃん…」
「ほらみろ。カリーナ裏切ったじゃないか」
「こんな戦い見たくないよ」
「カリーナも辛そうじゃない?」
「社長、なんとかして!!」
「所詮は魔族ってこと」
「……悪いな、みんな。これはドッキリでも仕込みでもない」
二人の戦いを見守りながら、俺は配信画面に呼びかける。
「だが、それでも俺はカリーナを信じている!! だからこそ――頼みがある」
俺は歌ライブ配信に使う予定だった、浮遊魔導スピーカーを取り出した。
「もし、同じように信じてくれるなら……”みんなの声”を、カリーナに届けようぜ!」
Fever Gage ★★★★★★★☆☆☆




