第17話 異世界Vtuberは歌います!デビュー曲のお披露目で盛り上がるぜ!
俺は二日間徹夜して曲を完成させ、二人へと知らせた。
「どうだ、今の俺の最高傑作だ!!」
「社長、ふらふらしてますけど、大丈夫ですか!?」
「いいから、あんたは一回寝なさいよ!」
その後はベッドに押し込まれてしまったが、エルミアとカリーナは曲に満足してくれたらしい。
配信の合間に二人で歌の練習に励んでくれた。
◇ ◇ ◇
<<【バズリア】エルミアとカリーナのデビュー曲お披露目【今日は歌枠!】>>
この日、俺たちは再び草原フィールドに集結していた。
今度は配信カメラを繋ぎ、エルミアとカリーナもVtuber姿に変身している。
「社長だ! 今日も世界をバズらせるぜ!」
「あなたの悩みを杖でぽかん! ご覚悟! 物理エルフ、バズリア所属のエルミアです!」
「私の魅力に跪きなさい。カリーナよ」
【コメント】
「期待」
「デビュー曲って何?」
「久しぶりにきた」
「期待。楽しみー!」
「エルミアちゃんとカリーナちゃん、歌うの?」
「どんな歌なんだ。想像つかない」
「さて、タイトル通り、今日はエルミアとカリーナのデビュー曲お披露目だ。曲は、なんと――この俺が作ったんだぜ」
「凄いです、社長!」
「……まあ、不審者が作ったにしては、良い曲だったわ」
【コメント】
「社長の才能マルチ!」
「不審者呼びが定着していて笑う」
「どんな歌だろう」
「歌声楽しみ過ぎる」
「永久保存版だ!!」
「この世界の皆には馴染みがないかもしれないが、折角の配信環境があるんだ。Vtuberは歌って踊るものだからな。俺たちバズリアが、最高の熱狂を約束しよう!」
画面に向かって説明すると、俺は数個の球体魔導スピーカーをばら撒いた。
スピーカーはそれぞれ宙に浮かびながら、ぴかぴかと光を放つ。
これと音楽魔石を接続すれば、記録していた音が流せるという優れものだ。
――ちなみにこの装置は、全て魔導システム局のマッスル女将が構築してくれた。
持つべきものは、古参ファンだな!
「さあ、準備は良いか?」
「はいっ」
「良いわよ」
「それでは――『Twin Blaze ~空と雲のシンフォニア~』」
【コメント】
「ぱちぱちぱち」
「ドキドキ」
「配信で歌ってどんな感じだろ」
「不思議な感じだよねー」
「どうなるか楽しみ」
まずは、エルミアのパートだ。
「澄んだ空気 胸に吸い込んで 一歩ずつでも進みたいの
震える手でも離さない この想い 守りたいから――♪」
【コメント】
「天使だ」
「音質良いな!?」
「かわいいいいい」
「エルミアちゃん最高」
「歌うまっ、流石エルフ!」
「やばい、鳥肌」
ばっちり視聴者の心を掴んだところで、次はカリーナの出番だ。
「これまでの迷いは 切り捨てて 新しい世界に飛び込んでいく
広がる白い衝動 抑えない この想い 伝えたいから――♪」
【コメント】
「ええええええ」
「ええええ」
「うっま!え?びっくり」
「戦慄の詠唱姫→旋律の歌姫」
「マジか、カリーナ、印象変わったわ」
「コメ欄に天才いて草」
コメントの流れが一気に早くなっていった。
ここで畳みかけるように、曲は二人同時パートで盛り上がっていく。
「こわくてもいい 逃げたくない♪」
「 強くなりたい? ならついて来い♪」
「「 ぶつかるほど 輝くんだ 正反対で ちょうどいい♪」」
エルミアとカリーナが手を繋ぐ。
「「静かな願いと 動き出す鼓動 交わる瞬間 世界が変わる
譲れない想い 重ねたなら 最強の光になる――♪」」
――――――
――――
――
二人が歌い終えた時、配信の熱狂は最高潮に達していた。
エルミアとカリーナが練習を重ねて積み上げた想いが、皆の心を動かしたのだ。
【コメント】
「やばい、泣いてる」
「凄すぎた」
「最高じゃん…」
「曲も良いけど、何より二人の歌が良すぎた」
「一生応援する!エルミアちゃん!カリーナちゃん!」
「最高!!」
エルミアとカリーナは歌うことに集中していた為、コメントを読んだのは一曲終えた後だった。
信じられない数の絶賛の嵐に、彼女たちは戸惑いつつも、自然と表情が綻んでいく。
「わ、わわっ。皆さん、聞いてくださり、ありがとうございました!」
「……ふん。最高で当然よ。この私が、歌ったんだから……」
エルミアが何度も深々と配信画面へ頭を下げる隣で、カリーナが顔を隠しながら俯いている。
【コメント】
「エルミアちゃん、また歌ってねー!」
「社長、良い仕事したな」
「こちらこそ、ありがとー」
「あれ、カリーナ泣いてる?」
「泣いちゃった?」
「可愛いじゃん」
「ば、馬鹿言わないでよ。泣いてないわよっ! う、うう……」
叫んだカリーナは、しっかり涙声だった。
でも、どこか晴れ晴れとした雰囲気も纏っている。
「皆さん、カリーナさんは、凄く練習して今日に臨んだんですよ。勿論、私も」
エルミアがカリーナをぎゅっと抱きしめる。
コメント欄には「てぇてぇ」の文字が並んだ。
俺はそんな二人に目を細めてから、配信画面へ声高らかに呼びかける。
「どうだ、バズメイトの皆。最高の熱狂だっただろ?」
【コメント】
「おー!」
「バズメイトって何だよ、笑」
「最高だ!!」
「ありがとう!」
「熱狂だ―!!」
「そういえば、社長は歌わないの?」
「ん? 俺か? ……まあ、声だけルピアで良いなら歌っても良いぜ?」
【コメント】
「ざわざわ」
「誰だ余計なこと言ったのは」
「期待」
「早まるな、社長」
「いや待て、今はルピアじゃなくて社長だぞ??」
俺はコメントの期待に応えて、ルピアの声でアカペラ熱唱し始めた。
「さあさ集まれ画面の向こう 寝不足上等ついてきな!
しょげてる顔は禁止だよ 全部まとめて撃ち抜くにゃ!
ウインク一発 バフ発動! テンション急上昇↑↑
キミのハートに一直線 逃げても無駄だよロックオン――♪」
勿論、踊りもキレキレで完璧に披露している。
ただし見た目は可憐な猫耳少女ではなく――180cmの大柄赤髪ハーフマスク男だ。
【コメント】
「ぎゃあああああ」
「脳がバグるううううう」
「うまあああい、なんかいやああああ」
「いや、案外いけるな」
「誰か止めてええええ」
「おい、なんか目覚めた奴いるぞ」
「ちょっ、ちょっと、この社長どうしましょう!?」
あまりにカオスな状況に、エルミアがおろりと狼狽える。
「はあ、全く……!」
収拾がつかなくなった事態に、カリーナが復活した。
彼女はぐっと涙を拭うと顔をあげて、俺の頭を思い切り叩く。
「この不審者、エルミアも怯えてるでしょ。いい加減にしなさいっ!」
「いでっ!!」
殴られた衝撃で、俺のハーフマスクが転がり落ちた。
その瞬間、配信画面が美しいお花畑の背景へと切り替わる。
色とりどりの花を使った花文字で、画面にはこう描かれた。
~提供~
この世界は、女神さまの力でお送りしています。
皆さん、感謝してください。
そしてその画面が5分間ほど続いてから、ぱっと告知が表示される。
『緊急予告! エルミア&カリーナ、ダンジョンでの公開初ライブ!』
Fever Gage ★★★★★★☆☆☆☆




