第15話 氷のダンジョンで大暴れ!名コンビ、エルミア&カリーナ誕生!
<<【配信2枠目】エルミア&カリーナで氷ダンジョン攻略!【バズリア】>>
俺とエルミアは新加入したカリーナと共に、氷のダンジョン攻略に挑んでいた。
「あっ、カリーナさん、後ろ!!」
「今度は何なのよ、もう!」
ダンジョン入り口の氷の床で転倒したカリーナに、フロントウルフの群れが襲い掛かる。
「ふん。こんな魔物、私の手にかかれば――」
落ち着き払って詠唱しようとしたカリーナが、硬直した。
「待って。でも、魔法を使えば、またあのラブリーエフェクトが……!?」
【コメント】
「ちょ、躊躇してる場合じゃないぞ」
「可愛い魔法みせてー!」
「危ないっ」
「トラウマになっていて草」
「詠唱して!!」
「カリーナさんは私が守ります。ご覚悟!!」
詠唱を躊躇うカリーナの前にエルミアが飛び込んでくる。
彼女は華麗な杖捌きで、獰猛なフロストウルフを殴り飛ばした。
「ぽかん!!」
――ドゴオオオオォォ!!
当人の口から発せられる可愛い擬音とは比較にならない、えげつない轟音が響く。
先頭の仲間が一撃で倒されたことで、残りのフロストウルフ達は怯えた子犬のように逃げ去っていった。
【コメント】
「やっぱりエルミアちゃん最高!」
「ご覚悟」
「ご覚悟きたー!」
「フロストウルフが雑魚扱い、流石です」
「ご覚悟!!」
「やるじゃない、貴女」
起き上がったカリーナが、エルミアの方へ向く。
エルミアはにっこりと笑顔を浮かべて、胸を張った。
「いえ、仲間として当然のことです!」
「そう。……あ、ありがと」
【コメント】
「カリーナちゃんの貴重なデレシーン」
「てぇてぇ」
「エルミアちゃんの笑顔、今日も最高!」
「仲良し!」
「二人とも可愛いー!」
俺はコメント欄の盛り上がりに、ニヤリと笑った。
Vtuberの醍醐味と言えばコラボ!
エルミアとカリーナは、想像以上に相性が良さそうだ。
俺が目指していた箱は、お互いが魅力を引き立て合うメンバーの集う場所だ。
その夢が大きく一歩前進したことに、俺は喜びを抑えられなかった。
「くくくくっ、やはり配信は最高だ! この調子でどんどん世界をバズらせるぜ。その為に、エルミアとカリーナに必要なものは」
盛り上がった俺は、無意識に壁へ独り言を喋っていたらしい。
その間に周囲の魔物を殲滅したエルミアとカリーナが、奥へ続く通路の前から呼びかけてくる。
「社長、先に行きますよー!」
「何をぶつぶつ言っているのよ、不審者!!」
俺はハッと我に帰ると、颯爽と二人の元へ駆けていく。
「はは、すまない! 次の活動の素晴らしい構想が浮かんでな――」
「あ、馬鹿、走るな!!」
「社長、駄目です、そこは!!」
「え?」
【コメント】
「あっ」
「あ」
「社長!!」
「転んだ」
「何やってんだ不審者ー!!」
「止まらない、止まらない、避けてくれえええええっ!」
「む、無理ですよぉ!!」
「来るな来るな来るな!?」
――ツルーン、と見事に滑った俺は、そのまま勢いよくエルミアとカリーナへ突っ込む。
「うわあああっ!?」
「きゃああああ!?」
「いやああああ!?」
団子状態となった三人は、トップスピードのまま凍った通路を爆走した。
行き着く先は――崖だ!
「いやあああ、落ちるううううっ!」
エルミアの絶叫が響いた、次の瞬間だった。
「くっ……やむを得ない、詠鎖・拘束節!」
カリーナの詠唱と共に、キュートなハートマークの鎖が連なって俺たちを捕らえる。
鎖の反対側は崖の上の壁に、真っ赤なリボンで繋ぎ止められていた。
【コメント】
「うおおおおお」
「流石!詠唱姫!!」
「ラブリー魔法!」
「助かったぁ」
「無事でよかったよー」
「ありがとう。助かったぜ、カリーナ!」
「ふんっ。私が助かるためのついでよ」
俺たちは鎖を伝って、何とか崖の上に戻ってこれた。
お礼を言われて照れたようにそっぽを向いたカリーナへ、エルミアが詰め寄る。
「凄いです、カリーナさん!!」
「そ、そんな、大げさね」
「いえ、本当に素晴らしいです。私、魔法は使えませんが、魔法の勉強は一杯したので貴女の凄さが分かるんです……!」
きらきらとした憧れの眼差しをエルミアに向けられて、カリーナも満更でもなさそうだ。
「ふふん。まあ、そうね。私は、仮にも魔王軍幹部の実力者だし?」
「魔法は沢山練習したんですか?」
「そりゃあね。でも、貴女の体術だってなかなかのものよ」
「本当ですか? でも、この前は、カリーナさんに全然敵いませんでした」
「実戦の経験が足りないだけよ。すぐにもっと強くなるわ」
「……!!」
カリーナの言葉に、エルミアの目がやる気に燃える。
「ありがとうございます。私、頑張ります!!」
「ええ。そして、私が出来るだけ魔法を使わなくても良いように、敵を倒して頂戴」
【コメント】
「良い関係」
「なんだろう、姉妹?師弟?」
「二人の会話が尊い」
「なんか俺も頑張ろうって思った」
「エルミアちゃん、頑張れ!!」
こうして更に心の距離が縮まったエルミアとカリーナは、協力してダンジョンを攻略していった。
そして俺たちはついに、ボスであるフロストハウンドのエリアまで到着した。
――したのだが。
「こいつ、速いぞ!?」
「追いかけようにも、氷ブレスで足元が凍らされて追いつけないです!」
フロストハウンドは、氷の魔力を纏った巨大な狼のモンスターだ。
自身は俊敏な機動力を備えているのに、こちらの移動は妨害してくる厄介さがある。
「カリーナ、もう一回、ラブリーチェインを頼む」
「リリック・チェインよ!! そう何回も、ラブリー魔法を使いたくないわ!」
「大丈夫です、カリーナさん。私が何とかします。はああああっ!!」
エルミアが杖を上手に使って氷の床を駆け抜け、フロストハウンドの頭上へ跳び上がった。
そのまま拳で殴りかかろうとしたが、アイスリザードの群れが飛び出してきて邪魔をする。
――ドガドガッ!!
小柄なアイスリザードは簡単に吹き飛ばされていくが、数が多く半ば無限にわいてくる。
「ちょっと、トカゲさん、どいてください!!」
その処理にエルミアが手間取っている間に、フロストハウンドは体制を整えてしまった。
隙が出来た彼女へ、鋭い牙の攻撃が迫る。
「エルミア、危ない。こっちよ!」
間一髪のところで、カリーナがエルミアの手を引いて攻撃を回避した。
【コメント】
「あぶねえええ」
「大丈夫?エルミアちゃん!!」
「氷トカゲの数多過ぎるだろ」
「やっぱり社長が盾になるか?」
「カリーナないす!」
「フロストハウンド自体も厄介そうだよなぁ」
俺たちは一度、フロストハウンドから距離をとって作戦会議を始める。
そんな中、コメントをじっと眺めていたカリーナが、何かを思いついたらしい。
「良い攻略法があるわ」
「本当ですか、流石カリーナさん!」
「魔法を使うのよ」
「お、ついに詠唱を見せてくれるのか」
「そうね。ただし、対象はフロストハウンドじゃないわ」
カリーナはふりふりの衣装とツインテールを愛らしく揺らしながら、にこりと笑みを浮かべて俺を見た。
「……えっ?」
◇ ◇ ◇
「さあ、エルミア! 容赦無用、思い切りやりなさい!!」
「あ、あの、本当に良いんですか、社長!?」
「構わない。同接数の為だ。ひと思いにやってくれ!」
少しの配信中断の後、画面には決意に満ちた表情の俺と、困惑するエルミアが映し出されていた。
【コメント】
「配信再開?」
「どういう状況だ、これ」
「エルミアちゃん可愛い」
「どうやって攻略するのか楽しみ」
「社長が何かするの?」
予想で盛り上がるコメント欄に応えるように、エルミアが思い切り助走をつけて駆ける。
「では、いきます! 社長、――ご覚悟!!」
そして全力で、氷の床の上にいる俺をフロストハウンドに向かって、杖で撃ち出した。
――ドオオオオオォォン!!
「ぐはぁっ!」
「大丈夫、私が魔法で防御バフをかけているから、死なないわ!」
カリーナの言葉通り、俺の周囲にはよく見ると、キラキラのハートエフェクトが舞っている。
防御上昇魔法をかけて貰った結果である。
しかし、確かに死にはしないが痛い。滅茶苦茶痛い!
【コメント】
「草」
「ひどい作戦過ぎて草」
「おめでとう!社長は盾から弾丸に進化した!」
「【悲報】痛そう」
「エルミアちゃん強い!」
「まだまだ、いくわよ!」
高速でフロストハウンドと無限湧きするアイスリザードへ突撃していく俺へ、カリーナが向き直る。
「多層防壁」
俺の周囲を舞うハートのサイズと煌めきが増し、お星さまも輝きだした。
「詠唱装甲」
お星さまの上に、キュートな鎧姿のくまやうさぎが出現し、むん、と剣を構えた。
「炎句付与」
さらに周囲に七色の炎が出現し、メルヘンな曲まで流れ始める。
こうして俺は、ダンジョンボスへ飛んでいくラブリー兵器へと変貌した。
【コメント】
「社長、可愛いいいい」
「不審者!!」
「フロストハウンドが可哀想で草」
「なんか夢に出てきそう」
「爆笑した」
「アイスリザードも困惑してるじゃん…」
「カリーナからの絶妙な恨みが感じられて笑う」
「とどめよ!! 加速句加速句加速句」
「ぎゃああああああ!?」
最後の連続バフで超高速になった俺は、無限湧きアイスリザードを全て弾き飛ばし、フロストハウンドへダイレクトアタックした。
――ドガガガガガ、ドッカーン!!!!
フロストハウンドは一撃で倒れた。
そして俺はそのまま、氷ダンジョンの壁をも突き抜け、吹っ飛んでいった。
「社長おおおおおっ!!」
エルミアの叫び声が、遠くから聞こえる。
「ふっ……今日の配信はここまでだ。みんな、次回も、世界をバ――」
後で配信を見返したが、ここで俺の声は途切れ、完全に画面アウトしていた。
「ええ、えええ!? ええと、きょ、今日はこれでおしまいです!!」
「あんた達、次回も見なさいよ!」
俺は配信を終えた後、エルミアとカリーナに無事救出された。
Fever Gage ★★★★★☆☆☆☆☆




