第14話 期待の大型新人。カリーナ加入回は大波乱!
<<【緊急配信】戦慄の詠唱姫、バズリアに電撃加入!【バズリア】>>
「みんな、今日も世界をバズらせるぜ。社長だ!」
【コメント】
「タイトルまじ?」
「タイトルに釣られてきました!」
「エルミアちゃんは?」
「カリーナ加入って正気か!?」
「このチャンネル通報されない?」
「はは、まあ待て。エルミアはもう少ししたら来るはずだ。何せ緊急配信だったからな!」
俺がニヤリと笑ってダンジョンの一角を指さすと、猛烈な勢いで吹き飛ばされていくモンスターたちの残骸が見えた。
その中心にいるのが、こちらに駆けてくるエルミアだ。
「社長ー! お待たせしましたっ!!」
「ナイスだエルミア、時間通りだぜ」
「……って、あれ。もう配信始まっているんですか!? はわわわわっ」
普段の騎士衣装ではなく、とんがり帽子の魔女服姿のエルミアは、照れたように俯いた。
【コメント】
「徒歩移動で草」
「可愛い!」
「物理エルフは移動も物理!!」
「普段着エルミアちゃん尊い」
「エルミアちゃんおつかれー」
「相変わらず強い」
「悪い悪い。たまにはこっちの姿を見て貰うのも良いかもと思ってな」
「は、恥ずかしいですよ、社長!」
「そうか? 可愛いぞ?」
「……!!」
真っ赤になるエルミアにコメントが盛り上がってきたところで、俺はスキル『理想投影』をかけた。
ぽふん、と彼女の姿が、凛々しく美しい女エルフ騎士の姿に変化する。
「やっぱり配信はこの姿ですね。改めまして――あなたの悩みを杖でぽかん! ご覚悟! 物理エルフ、バズリア所属のエルミアです!」
「挨拶ありがとう。さて、今日の配信内容なんだが、タイトルを見てくれ、エルミア」
「そういえば何の配信か聞いてませんでしたね。タイトルは、ええと……」
【コメント】
「理由も言わずに緊急呼び出し!」
「それでも走ってくるエルミアちゃんの健気さよ」
「社長ブラック!」
「エルミアちゃんいい子過ぎる」
「特別手当もらうんだぞー」
「ええっ、戦慄の詠唱姫、加入!? あの、え、どういうことですか!!」
エルミアは衝撃を受けすぎて、おろおろとし始めた。
良いリアクションがとれたところで、俺は間髪入れずに紹介する。
「さあ、登場して貰おう。バズリア期待の大型新人! カリーナだ!!」
ばーん!!
宣言と共に、カリーナへ待機を指示した大木の前へカメラを切り替える。
しかしそこには、誰の姿も無かった
「んっ?」
「えっ?」
【コメント】
「>>無人<<」
「社長ちゃんとしろー」
「嘘だったってこと?」
「カリーナちゃーん」
「いやまて、木の向こうに何かふわふわ見えない?」
「ふわふわですか? ――あっ」
エルミアがコメントを読みながら首を傾げつつ、大木に近づいていく。
その裏手に回り込んだと同時に、声をあげた。
数十秒の後、エルミアが隠れていたカリーナを引っ張り出しながら画面へ戻ってくる。
「皆さん、いました。いましたよ、カリーナさんです!!」
「人を珍獣発見みたいに言うんじゃないわよ!」
叫ぶカリーナは、当然、白いフリフリワンピースのアイドル衣装だ。
微妙に抵抗はしているが、エルミアの怪力の前では無力だったらしい。
結局、ずるずるとカメラの前まで引きずられてきた。
【コメント】
「本当じゃん!」
「戦慄の詠唱姫、御本人で草」
「地味にエルミアちゃんの怪力すごい」
「ほんとうにふりふり着てる!」
「これ、大丈夫?」
「どういうことなの!」
「可愛いからオッケーです!」
「ちょっとカリーナは照れちゃったみたいだな。案外、繊細な子なんだ」
「余計なことは言わなくていいのよっ! ああ、ああ、もう!」
超高速で流れていくコメント欄に、カリーナは圧倒されているようだ。
それでも、もう一度隠れようとはしなかったのは、彼女の覚悟の表れだろう。
「大丈夫です、カリーナさん。最初は緊張しますよね。でも、私が付いていますから!」
エルミアがカリーナを元気づけるように声をかけ、胸を張る。
「いえ、あの、私はこの前、貴女を殺そうとしたのよ? どうしてそんなに、すぐに適応できるの?」
「ふっふっふ。それは――Vtuberだからです!!」
「これも俺の指導の賜物さ!」
「「ねー?」」
顔を見合わせてハイタッチする俺とエルミアに、カリーナは頭を抱える。
「私は……私は、選択を誤ったのかもしれないわ……」
【コメント】
「社長、そこ変われ!」
「すっかり逞しくなったエルミアちゃん」
「カリーナちゃんツッコミ役になってる」
「まさかの常識人ポジ!?」
「しかし、衣装はフリフリだ!」
「楽しそうで何より」
「俺はまだ信用できないね」
「わかる。というか、魔族って敵じゃん」
バズリアの視聴者は、基本的にはノリがよく明るいコメントをくれる人が多い。
だが、流石に魔王軍幹部の加入には抵抗を示す声も少なくなさそうだ。
警戒や不信感を露にするコメントに、カリーナの表情が硬くなる。
エルミアも不安そうな顔になった。
俺はすかさず、前に出る。
「そうだな、魔族と人間は、この世界ではずっと敵対している。だが、ゼラやカリーナと出会って俺は思ったんだ。決して話の通じない相手なんかじゃないって」
「……!」
「勿論、魔王軍に被害を受けた人もいるだろう。辛いと感じるなら、無理に応援してくれなくてもいい。だけど、カリーナを加入させるという俺の判断は変わらない」
俺はきっぱりと断言して、言葉を続けた。
「だって、彼女の夢を知ってしまったからな!」
【コメント】
「まあ、難しい問題というか、前代未聞だよな」
「夢?」
「エルミアちゃんは推したいけど…」
「俺はカリーナも良いと思うけどな。味方なら心強いし」
「でも、いつ裏切るか分からないって話じゃない?」
「カリーナの夢って何だろう」
「社長の判断、信じるよ」
「もし、少しでも可能性を感じてくれるなら、まずはこのチャンネルを見守って欲しい。そして、俺たちを見て判断してくれ。決してがっかりはさせない」
「あの、私からもお願いします。今のカリーナさんからは、敵意を感じません。仲良くなれるかもしれないって――そう思うんです」
「あんた達……」
「ちなみにバズリアの全責任を負うのはこの俺、社長だ! だから批判も通報も、全部俺が引き受けるぜ」
【コメント】
「よし、通報だ!」
「不審者の罪で通報か…」
「エルミアちゃん独占罪も追加で」
「真面目に聞け、お前ら」
「うーん」
ひとまず、コメントの否定的な流れは止まった。
同接数がやや落ちたのは、受け入れられない視聴者が脱落したのだろう。
これは仕方がないことだ。だが、それも配信で取り戻してみせる。
「それじゃ、改めてこの三人で動画を配信していくぜ!」
「やった。楽しみです。宜しくお願いしますね、カリーナさん!」
「ええ、まあ、……よ、よろしく」
「それじゃあ早速、ダンジョン攻略を始めるか!」
「でも、カリーナさんは魔族なんですよね。ダンジョン攻略しちゃって大丈夫なんですか?」
「それは問題ないわ」
エルミアの疑問に、カリーナは平然と答えた。
「ダンジョンは高位魔族が管理しているけど、四天王ごとに管轄が違うの。私の仕えるルーベウス様以外の管轄ダンジョンなら、どれだけ暴れても問題ないわ」
「なるほど。勉強になります!」
「お、大袈裟よ。それじゃ、適当なダンジョンに転移するわよ。裂界門陣」
カリーナが魔法を唱えた瞬間、辺りにラブリーなハートエフェクトが溢れた。
ハートはふわふわ浮かんで虹色に輝き、一瞬で俺たちを転移させる。
【コメント】
「さらっと最上級魔法詠唱してる」
「それより様子が可笑しすぎるが!?」
「レクサリオン(ハート)」
「画面が全部可愛い」
「だめだ、可愛い中の社長が不審者過ぎる」
「待って、何なのよ、今のエフェクトは!!」
転移先で、カリーナが愕然とした様子で叫ぶ。
「可愛かったなぁ」
「可愛かったですねぇ」
俺とエルミアがにこにこしながら彼女を見つめると、カリーナの顔が真っ赤になった。
「う、うるさいっ。まさかスキル? あんたのスキルのせいね!?」
「魔法を使うと可愛くなっちゃうみたいだな」
「どうするのよ、魔法、使えないじゃない!!」
「カリーナさん、私は可愛くて良いと思いますよ!」
「よくないっ。……なんか恥ずかしい」
「まあまあ、とにかく攻略していこうぜ。ここは――氷のダンジョンか」
洞窟の入り口は凍り付き、霧と霜柱が光を反射している。
床も凍っていて、滑りやすそうだ。
「もう、何でもいいから、さっさと行くわよ! あっ!?」
居た堪れなくなったのか駆けだしたカリーナが、ダンジョンの入口で見事に転倒した。
彼女の短いふりふりワンピースが、ひらりとめくれ上がる。
【コメント】
「見えた!」
「見えた!」
「見えた?」
「見えた!」
「ヤバい奴しかいないのか…白!」
「あっ、あんたたちー!!」
「大丈夫です、カリーナさん。熊ちゃんのフリフリパンツ、可愛いと思います!」
「ひゅっ」
エルミアの純粋なフォローと言う名のとどめで、カリーナは倒れ伏した。
「あれ、カリーナさん? カリーナさーんっ!!」
――配信は、まだまだ続くぜ!!
Fever Gage ★★★★☆☆☆☆☆☆




