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第13話 見えたぜ、その光!詠唱姫の大勧誘!

 俺のスキル『理想投影』の力で、クール美女だった魔王軍幹部カリーナが、ふりふりワンピースのアイドル姿になってしまった。



【コメント】

「!?!?!?」

「なにこれ!」

「草」

「かわいい!?」

「カリーナちゃん、いえーい」

「きゃわわ」

「ギャップ萌えか…、ごくり」



 コメントが大荒れの中、俺もエルミアも、あまりの衝撃で硬直していた。

 

 カリーナも暫く放心状態だったが、やがて配信画面に映る自分の姿を改めて確認した。

 そして、そこに高速で流れていくコメントも。


「……ちょっと、あんた」


 大きなフリル付きリボンを揺らしながら、カリーナが声を震わせる。


「あっ、はい」


 俺は思わず、敬語で返事した。


「これは……この戦闘は、配信されているの?」


「ええ、それはもう」


「全世界に?」


「全世界に」


 深く頷いた俺の答えを確認すると、カリーナの顔がみるみる真っ赤に染まっていった。

 そして――、



「いやあああああああああっ!!!!」


 ――バチーン!!



 俺に強烈なビンタをお見舞いして、彼女は短いスカートを押さえながらダッシュでその場から立ち去っていった。



「ぐはぁっ」


「社長ぉおおー!!」



 殴られた俺は、華麗に宙を舞った。



【コメント】

「草」

「社長、安らかに眠れ…」

「カリーナいっちゃったー」

「いや助かったんかこれ?」

「エルミアちゃん大丈夫?」

「代わりに社長が大丈夫じゃない」

「エルミアたん無事で良かった!」



 こうしてこの日の配信は、幕を下ろしたのだった。


◇ ◇ ◇


「はあ……。もう、ルーベウス様の所には戻れないわ」


 数日後、森林ダンジョンの奥地で膝を抱えるカリーナの姿があった。


「あんなに情けない姿をさらして、どう生きていけばいいの」


 彼女は絶望の表情で俯いている。

 勿論、衣装は元々のシンプルな黒いドレス姿に戻っていた。


「……駄目ね。少しでも元気を出さないと。こんなときは――」


 しばらく地面をぼんやり見つめていたカリーナは、ゆっくりと立ちあがる。

 そして、静かに歌い始めた。


「――――♪」


 それは揺らぎのない、真っ直ぐで美しい歌声だった。

 高速詠唱で鍛えられている彼女の発声は、歌に生き生きとした力強さを添えている。



「見えたぞ、その輝き!!」



 一連のカリーナの行動を物陰で見守っていた俺は、颯爽と姿を現す。

 俺の姿を見た瞬間にカリーナは歌を止め、その表情は般若のように変化した。


「あ、あんた。諸悪の根源! よくも私の前に姿を現せたな、八つ裂きにしてやる!!」


「わーっ、待った、待ってくれ、話し合おう!」


「問答無用よ。死ねえええっ! 炎弾丸えんだんがん!」


「ぎゃああ。なら、せめて、せめて死ぬなら死亡配信をさせてくれ! 絶対バズるから」


「あんたのその配信のせいでこうなっているのよ!? 反省をしろぉ!」


 掌からばかすか炎の玉を射出してくるカリーナに、俺は全力で土下座した。


「いやその、この前は本当に悪かった。あれはその、反省している!」


 俺の言葉に、カリーナの攻撃が一旦止む。

 攻撃の代わりに、彼女のジトリとした視線が俺に突き刺さる。


「……あんたのせいで、私はもう魔王軍に戻れなくなったのよ?」


「えっ、なんで?」


「何故って当たり前でしょう。あんな姿をさらして、みっともない!」


「みっともない? どこがだ?」


「全てよ! あの、ちゃらちゃらした衣装も、リボンも、髪型も――」


「どうしてだ、似合っていたじゃないか」


炎弾丸えんだんがん!!」


 俺の言葉を封じるように、火の玉が再び射出された。

 ただしその軌道は俺からは僅かに逸れて、当たることなく地面に着弾した。

 カリーナは怒りの表情を見せているが、何処か照れているようでもあった。


「い、いい加減なことを言わないで! 私は魔王軍でも冷酷と恐れられる女よ」


「本当さ。コメントでも可愛いって言われていたじゃないか」


「あんなもの、私を馬鹿にしてただけでしょう!?」


「いやいや、なかなか人気だぜ、カリーナ。切り抜きを見てごらんよ」


「切り抜き?」


「この前の配信を、動画にしたものさ」



 俺は魔導板で、カリーナに切り抜き動画を提示した。


<<【切抜】戦慄の詠唱姫、まさかの変身!【可愛い】>>


【コメント】

「めちゃくちゃ可愛いじゃん」

「似合ってるー」

「俺は元のも好き」

「ギャップ最高じゃん」

「この焦ってる表情たまらん」

「わかる」



 カリーナはまじまじと数件の動画とコメントを確認すると、俺に魔導板を返してきた。


「……こ、これが、私への反応なの?」


「そうとも。君のおかげでバズらせて貰ったぜ!」


「何かあんたの利益になるのが、微妙に納得いかないんだけど」


「なら、自分の利益にしてみたらどうだい?」


「は?」


「カリーナ、俺のVtuber事務所『バズリア』に入らないか?」


 俺がニッと笑いながら手を差し出すと、カリーナは唖然とした表情を見せた。


「はぁ!? あんた、正気なの。私は魔王軍の幹部よ!」


「でも、もう戻れないんだろ?」


「ぐぬぅ、そ、それはそうだけど」


「それに『理想投影』は、自分のなりたい姿になるスキルだ」


 俺は、動画の中のフリフリ衣裳のカリーナを指さした。


「俺なら君の夢を叶えられる。君は自分の理想の姿で、全世界へ羽ばたける!」


「わ、私は別に、あんな格好をしたい訳じゃ……!」


 焦ったように叫ぶカリーナの声が、だんだん小さくなっていく。


「さっきの歌、最高だったぜ。あれを皆の前で、思い切り披露してみたくないか?」


「……!!」


 カリーナの表情に一瞬、期待に満ちた輝きが浮かんだ。

 彼女は拳をそわそわと握りしめる。


「お試しでも構わないからさ。頼むよ!」


 俺はもう一度、カリーナに手を差し出した。

 葛藤するような沈黙の後、彼女は息をのむ。


「そ、それなら……。ほんの、少しだけなら……」


 カリーナがためらいがちに、俺の手を握った。


「契約成立だ。世界をバズらせようぜ!」


「え、ええ」


「そうと決まれば、緊急配信だ!」


「今から!?」


 俺は早速、エルミアに魔道通信を繋いだ。


「エルミア、今すぐ来てくれ」


「5分で行きます!」


「ここはダンジョン最奥よ!?」


 カリーナの突っ込みに、俺は不敵な笑みを浮かべた。


「ふっ、これがVtuberって奴だ!」


Fever Gage ★★★☆☆☆☆☆☆☆

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