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兄弟様は主人公らしい  作者: トミネ
本章 兄弟様は主人公
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 サラとラスの見解をまとめると、こうだ。

 ムスカードは私が神の使いではないかと疑っていた。それはサラから直に、盗んだスマホや盗み聞きした情報を受けた、公爵やシャルルも同じ。だから、今回の視察に併せて、私の逃げ道を無くして捕まえようとしたのではないか、という事だ。しかし、その情報をどこからか仕入れたメルーソルが、自分の私兵であるフクロウを動かし、ムスカードの自作自演を含む策略を利用した。ムスカードやその派閥を粛清する為に。そして見事、その計画は成功して自身は王となった。不満を持つムスカード派の騎士達に任せる事も徹底させ、自らはただ身を任せただけ。暗殺者が捕まらない事、賊が捕まらない事、メルーソルが襲われない事も、フクロウであれば納得出来る。つまりは、全てがメルーソルの掌で踊らされていただけだった、というわけだ。私が話さなければ、違和感を持った者も違和感のまま過ぎ、メルーソルは白かグレーのままで終わる。端から疑われる存在でありながら、黒にならないようにした、という事だ。私を逃した事も、私を試したかったのだろうという事だった。少なくとも、この世界の人間でない事は、間違いなく疑われているだろうから、と。

 それは身に染みている。イヴァンからスマホの話が出ている段階で、彼がフクロウで、その主人がメルーソルである限り、どうあっても逃れられない。誤魔化したけど、それがどうなっているのか分からないからね。因みに、私がフクロウの顔を見た事は言っていない。名前もそう。流石にそれは言えなかった。例え掌で踊らされていたと分かっても、相手がどう思っていようとも、助けてくれた事に変わりはなかったし、何より全部を言う必要が無い。余計な情報は心配しか与えないと思ったから。


「…取り敢えず、頭がスッキリした。これで当分はまた動ける」


 うーん、と伸びをしながらラスが言った。考えが鈍ると動きも鈍る、と言った感じかな。


「今日、ここで話した事は全て()()()()()()()()事だ。ただ俺とサイラスは休む為に此処へ来た」

「俺は酒を潰れるまで飲んで、寝て起きたらスッキリしてました」

「そうだな、俺も久し振りに友に会えて身分関係なく話せた事で気が楽になった。愚痴を聞いてくれて感謝する」


 ラスの話も、私の話も、ここだけの話。誰も言わない、言えない大事な話。私は二人の部屋を整えに行こうとティナに合図を送り、ティナはそれを頷きで了承する。アークは再びラスとサラと一緒にお酒を持って乾杯する。良かった、言って。この光景は、私の宝物。誰にもあげない、私のポジション。




 〇




「…おや、騎士団長ともあろう方が、朝帰りかな?」


 サイラスと別れ、城にある自分の部屋へ向かう途中、最近良く見かけるようになった男と会った。ルイザゼラ・トゥウェル。トゥウェル家の三男で、公爵家昇格の後、兄達でなく彼が城に上がった。どうこう言う事は特にないが、正直付き合っていたくない相手だ。


「これはルイザゼラ様もお早いですね。ずっと城に詰めていたので、久し振りに友に会って飲んでおりました」

「成る程、息抜きは誰しも必要だからね」

「そう言って頂けると幸いです」


 馴れ馴れしいのだ。城の人間で、彼を特に嫌がる人間はいない。俺ぐらいかもしれない。あぁ、あとサイラスもか。嫌いというか、苦手な人種と言ったところだ。何を考えているのか分からない、よく言えば宰相向きのこの性格が、俺は非常に怖い。


「…ティアナ様はお元気かな?」

「…何を仰っているのか」

「ふふ、確かにこんな場所で話す内容では無いか。俺とした事が失言だった」

「…いえ」


 何が聞きたい、何が見たい、何が知りたい。残念だが、いくら優秀とは言え、ここでの生活は俺の方が長い。そんな相手に、俺は遅れを取るつもりはない。


「申し訳ない、我が家がファシート家の代わりと良く言われるものだから、ついつい比べてしまうんだよ。まあ、彼女は関係の無い事なのだけど…」

「ティアナ様の件につきましては、サイラスから報告が行っている筈です。私が知ることもそれ以上はありません」

「そうか、そうだよね。あれは陛下…と言うか、陛下の周りが騒いだだけの事だから。そう思うと、彼も気の毒だ。そろそろ外すよう進言してみるか。王妃の地位も不在じゃ困るし、陛下の子を産む存在も必要になるし」

「…左様ですか」

「誰かいないかな、丁度いい女性。王妃の座はまぁ、男でも良いんだけどさ」


 それを俺に聞いてどうする。候補は既に居るくせに。言葉は悪いが、ティアナ嬢の様に全ての条件で当てはまった女性はそうそういないだろう。家柄、外見、教養、その他全てにおいて、彼女は整っていた。血、以外は。彼女の本当の父親が彼女の家の執事であったことは、俺とサイラス以外でこの城で知るのは今、メルーソル陛下とその私兵のフクロウ、そしてこの男だけだろう。そう考えると、父に当たる執事や夫人の手腕は中々のものだ。自らの子を、主人の子として育てさせたのだから。夫人に似た事が幸いして、主人も言われるまで気付かなかったというのだから。

 この世界で女として生まれた事で、彼女は地獄を味わった。初めはその事を気の毒だと思って、どう接していいか分からなかったが、本人に笑い飛ばされ、現状に至る。そう、彼女は今が一番輝いている。それを邪魔する権利は、誰にも無い。


「難しいよね、俺自身宰相なんかになるなんて思ってもみなかったし、いざなってみると忙しくて遊ぶ事も出来なくなっちゃったから、今度視察って銘打って街に行こうかなとか思ってるんだよ」

「…遊ぶおつもりで?」

「まさか、ちゃんとお仕事もするよ。嫁探しと王妃探し。後は市場調査。ムスカード様が出来なかった事をしないと、ね?」

「宰相自らすることでは無いかと思いますが…恐れながら、ムスカード様も視察などと言いだした時は、どうしたものかと焦った次第です」

「確かに。王族が視察なんて、護衛から何から大変になるのは騎士の皆さんだからね。あぁ、俺には不要だよ。お忍びで行くから」

「賛同しかねます」


 冗談じゃない。堂々と宣言をしないでもらいたい。


「そんなに直ぐに否定しなくても…」

「我が騎士の恥ながら言わせていただきますが、未だ賊を捕まえておりません。いつどんな時に狙われるか分からない状態で、ましてやお忍びを許すとお思いですか」

「ははは、確かに無理だね。でも、その状態で君は…君とサイラスは、酒を飲みに行っていたんだろう?」

「っ!」


 しまった、彼に下手を打った!油断した。後ろめたい訳ではないし、賊がフクロウだと分かった今この状態で、こういう状況で主導権を握らせた事に心底後悔する。


「はは、ごめん。別に虐めたいわけじゃないんだ。ただ言うことが硬かったからさ、もうちょっと柔軟に考えて欲しいなって意味だよ」

「申し訳…」

「あー…だからね?先にも言った通り、息抜きをするなとは言わないし、君たち二人が居なくても、他の優秀な騎士さん達が居るから、警備に問題はないよ。そこにとやかく言うつもりは全くない。だけど、俺にもその機会が欲しいなぁってだけ」


 見逃せということか。あぁ、やっぱりこの男に隙を作るんじゃなかった。面倒な事になった。

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