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兄弟様は主人公らしい  作者: トミネ
本章 兄弟様は主人公
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13

 憎く思う事は、それだけ関心があるという証。私がそんな感情を抱く事は無い。有り得ない。愚かで、浅はかな存在だとは思うけれど、ね。この目の前のゴミとその父は。


「…さて、兄上?如何です、愛して止まない可愛い可愛い貴方の猫に、引っ掻かれた感想は」

「ぐ…ふぉ…っ、ぅ…!」

「父上も惨めだったんですよ、仮にも一国の主たるものがあの様な…ふふふ」


 愚かで愚かで、思わず笑ってしまった。私が思い出し笑いをするなんて…。

 父は沢山の女達に奉仕させ、楽しんでいたところだった。私の存在に気付いたのは、女達がシーツで首を絞めている最中で、何とも言えない、呆気ない最後だった。その女達の中に、私のフクロウが混じっていたとも知らず、毎日自分が満足する事をさせ続けてきた愚かな男。女が弱いと完全に安心しきっていた愚かな男。周りが全員自分に反抗出来ないと思い込んでいた愚かな男。そしてその息子である目の前のゴミクズもまた、可愛がっていた子猫に、腹を裂かれたわけだ。ああ、なんて滑稽なのだろう。愚かで惨めな彼らは、最後までそれを突き通した、ある意味素晴らしい人達だった。誰も真似なんて出来るわけがない。例え、僅かなりとも血が繋がっていたとしても。


「恐らく下では騎士達が動いている事でしょう。お呼びますか?助(・)け(・)て(・)下(・)さ(・)い(・)と」

「ぎぃ…ざっ」


 貴様、とでも言いたかったのか。分かるわけが無い、口は最早何の用途にも使える状態では無いのだから。猫が…イヴァンがナイフで切り裂いた様だからね。


「呼んで欲しいのですか?助けて貰いますか?愚かで惨めな姿を晒し、助けて欲しいと懇願しますか?無理ですよねぇ、例え喋る事が出来たとしても、他人に助けを乞う事が何より屈辱である貴方が、出来る訳がないですよね?」


 弱味を見せる事を嫌がるのは、誰でもある事。それが悪いとは言わないけれど、それをする事で害となる場合は別だろう。クズ親子はそれがプライドとなって下々を苦しめてきた。自分が例外とは言わないよ、それに隠れる事が出来てきたわけだしね。けれど、それが出来なくなる以上、自分は王(・)た(・)る(・)に(・)ふ(・)さ(・)わ(・)し(・)い(・)人(・)にならなければ。下の騎士達を始めとする、国民達に望まれる王に。…さて、それってどんな王なのかな?


「ムスカード兄上、貴方や父上が居たお陰で、私は随分と扱(・)い(・)や(・)す(・)い(・)王(・)子(・)として認知されていたようです。ですが、これからは二人を見習って、立(・)派(・)な(・)王(・)になれる様に頑張りますので、取り敢えず、どうか最後までこ(・)の(・)国(・)の(・)王(・)子(・)であり続けて下さいね」


 遊んだのか、髪や服が散乱するベッドの上に、広がる赤と、だらしなく裂かれ、垂れた肉。臭いが残るからあまり派手にやるなと言ったのに。


「猫」

「んー?」

「兄上はお前を愛していたのだろう?」

「うんー」

「ならばきちんと返してやらねばな?これではただの変態だろう?」

「えぇー?だってぇ、鳥は僕のを舐めたりぃ、入れられたりするのが好きなんだよぉ?だからぁ……刺してあげたんだよぉ」

「いつもの場所に?」

「下は違うねぇ…でもぉ、だってぇ、今日はオモチャな気分だったんだもんー」


 イヴァンはいつもの猫の声で私と会話をする。彼が本当の彼である時に話す言葉を、このクズは知らない。変態は己が犯される事が好きな人間であるせいで、イヴァンはいつもこの口調で話しながら、犯してやるのだそうだ。可哀想に。


「そうですか、ならば其処の騎士、貴方の手で終わらせてやりなさい」

「わ、私でございますか!?」

「今このままで辛いのは誰です?貴方の主ですよ?結局助からないのなら、醜態を晒させ続けるより、一思いにやった方が本人も救われますよ。そしてイ(・)ヴ(・)ァ(・)ン(・)、お前はシャワーを浴びて来なさい。やって貰いたい事があります」

「はぁい」


 其処に立って居た、未だ若い兄付きの騎士。夜の護衛に、イヴァンと付くことが多い。その彼にさせるのは、私の陣営では無いからだが、それと同時に彼を私達から離さないためでもある。これから何かと人が要る。例え臆病でも、騎士としての力が無くても構わない。その時は捨て駒にするだけだ。


「ビビー、返事ぃ」

「う、は、はい…」


 イヴァンの催促で答えてしまった彼は、もう逃げられない。愚かで哀れな若い騎士は、この国の新王に運命を握られてしまった。




 〇




「…本当に変わった…」


 ムシャード王、ムスカード王子、逝去。

 夜中の出来事だった。城が騒がしくなり、騎士達が起こした反乱により、二人が亡くなったそうだ。騎士達はメルーソル王子を支持するとし、朝日が昇ると同時に、メルーソル王子が沈静化させたのだとか。近日中に戴冠式を行い、正式にメルーソル王子はオルスタム王となる。…と言うわけで、本当に起こった。言葉を知っているわけじゃ無いけど、逝去でいいのかな?と思ったりもして。崩御とかじゃないんだ、とかね。でもみんな逝去って言ってたからそれで良いや。そんな事より、起きちゃったわけなんですよ!


「ナード達は?」

「昨日の夜、バタつき始めた時に動いていたわ」

「私が部屋に引っ込んでいた時だね。良かった、邪魔にならなくて」

「そう思ってやったくせによく言うわ」


 肩を竦め、苦笑いをしているティナには、本当に隠せないと思った。確かにアークが騎士が城に集められていると言った時、念の為夜は大人しくしてようと思ったけど。こうもタイミングが合うとは思わなかったよ。でも流石なのはナード達だ。上手く商売に繋がっている事を願うよ。


「そんな事より、王になるね」

「…本当に。良かったと思うわよ、こんな時城に居なくて、って。居たら巻き込まれてたもの」

「そう、だね…。良かったよ、ティナがこの権力争いに巻き込まれなくて」

「元々女の身分が何もできない場所だけど、下手したら殺されているわ。殺される事が何って訳ではないけれど、理不尽な死に方だけは嫌ね」

「そうだね」


 ティナのお兄さんが抑えられてるのは知っている。だから今回の何かに使われるとは思う。もしこれでティナが城に居たら…居ない今も、家とは決別していても、決して安全とは言えない。それを教えてあげるべきか、知らないのだから黙っているべきか。不確かな情報は不安を煽るだけだと思うから、黙っているのだけど。この自己満が、どうかティナを不幸にしませんように。それだけは、絶対だ。


「とにかくこれで問題はひと段落だし、貴女の言う通り時代が動いたから、これからどうなるか楽しみね」

「これで全国が若い王になったって事だよね」

「そうね、ジジイ王はウチだけだったし」

「何か、良い方に動いて欲しいよね」

「一番は変な病気の特効薬が開発されることよ。下火になっているとは言え、未だ終結してないんだから」

「うん、お金ある人がバンバン開発して欲しいものだよね」


 まったくだわ!と私たちは色々脱線する女子トークなるもので、アークが呼びに来るまで盛り上がった。

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