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さて、取り敢えず知識の中のゲームと現実の繋がりはここまでしか私は見出せないので、今後に移る。これからすぐにやって来る現実イベントは二つ。王族の視察と生誕祭。このどちらもゲームの始まる前になるが、私には未来で未知のイベントである。そして恐らくだがメインイベントとなる政権交代、新王誕生がある。もしかしたらおっちょこちょいのせいでこの辺が変わるかもしれないけど、ゲームの内容を考えると、現王と第一王子は残念だけど統治者ではなくなる。メルーソルが討つのか、別の誰かが討つのか、はたまた病気でなのか純粋に譲るのか、他の何かかは分からないけど、これはきっと高確率で起きるイベントだと思っている。
…因みにだけど、私は人が死んでも何とおも思わない卑劣さはないよ。ちゃんと人並みには悲しむし、たまに道端とかで見かける何かの血痕とかでギョッとする小心人間ですからね、喧嘩やらそれこそ殺し合いなんざもって他だ。だからメルーソルが王になるのも、出来れば穏便であれと思っているけど、この世界の情勢を考えれば、まぁ、まず無いわな。と、なれば、だ。それがいつなのか、是非とも私は目の当たりにしたくないわけですよ。回避させて頂きたいのですよ。逃げる、と言うより何か良い方法は無いだろうか…………あるかなぁ。
〇
「…さて、お二人にお話がありまして」
結局あまりまとまらず、思い返すこともままならず…けど、仕事がひと段落ついた夜になって二人に話すことにした。
「昼間の件よね、いいわ」
「ありがとう、アークもありがとう」
「ん」
テーブル椅子に座り、アークが用意してくれた飲み物を受け取り、準備は整った。さあ、ゲームには恐らく出てこないモブの皆さん、知恵と新しい情報をください。
「…昼間、今後この国が荒れるって言ったよね。その原因が恐らく今回の視察か、生誕祭で起きるんじゃないかなと思ってるんだけど」
「…っ、まさか!」
「…嘘だろ、マジかよ」
二人は全てを言わなくても悟ったようだ。流石この世界の人だ。
「うん、だから視察に来るのが誰なのか、パレードするのかとか聞いたの」
「…確かに現王は周りを信頼していないし、自身が限界を迎えるまでは現役でいるつもりなのは、城仕えの人間は全員知ってる事だ。それを第一王子が面白く思ってない事も」
「二人とも野心家だからね。でもイナの話を聞いてると主役は別にいそうなんだけど…?」
「そうだな」
「二人とも流石。そう、主役は王でも第一王子でもない、第二王子のメルーソル王子だよ」
なんたって、メルーソルが王になる予定なんだから。
「元婚約者からして、メルーソル王子はどんな人?」
「え…?うーん、嫌い」
「あー、うんそれはお気の毒でした…じゃなくて。人となりを知りたいんだけどな?」
「えー、だって…まぁ、そうねぇ…意外とねちっこくて、本心は見せない感じかしら。まぁその辺は王族なんだから珍しくもないのだろうけど」
「けど、国民からは現王や第一王子なんかよりずっと評判が良いよな」
「上っ面しか見てないからよ」
「成る程、つまり国民は次期王に相応しいのは?って聞かれたらメルーソル王子だと答える人が多そうだね」
それはもう分かってたけどね。だってメルーソル王子は基本穏やかで優しい人のイメージが強い。現王と第一王子のマイナスインパクト強すぎるせいでね。
「そのせいでやっかみが発生しているのもある。王政である以上、力がある方が成るのが常だが」
「国民からすれば第二王子が優勢でも、内部からはどうなの?この国の王として相応しいのは?やっかまれる価値はどうなの?」
「野心の強い第一王子はこの国の王として現王を引き継ぐことになるだろうな。今現状のままで行きたいなら推されるだろうさ。その逆が第二王子だな」
「あの人だって野心はあるわよ、表に出さないだけで」
「それは権力に対する?」
「…多分」
ふむ、私の知るメルーソルは、確かに野心はあると思う。願いを叶えて欲しいと思って神の使いを求める、それには権力があるに越したことはない。そんな考え方の持ち主だった筈。と言うか、この程度なら誰でもある野心だな。野心というか、素直な物欲か。
「と言うか、そもそも何で貴女はそんな事が起こるって思ったの?」
「理由?そんなの、確率の問題だよ」
「確率?」
「そう。現王が次王に位を譲る場合、そもそも直ぐには譲らない。上げます、貰います、で済む問題じゃないからね。候補を絞り、擁立し、そして諸々手続きを経て次王は真王になる」
「そうね」
「だけど現に、今のオルスタム王はいつまで経っても候補すら決めてない。女性の価値が低い以上、姫様達が女王になる事はほぼ無い。だとするなら、現在二人だけ居る王子のどちらかになるだろう、と周りは予想する。そしてどちらかにつく。その後は…」
「…確かに、なるべくしてなる、な。だが、それがどうしてこのタイミングだと?」
「私だって正確に起きる!とは言えないよ?そもそも二人が子供の頃から政権争いはあったと思うし。命を狙う、狙われることも。その事を見て見ぬ振りしてきたツケが、どこかのタイミングで爆発するのは珍しくないし、王子たち自身より周りが躍起になるだろうから、その爆発が今回第二王子のキリのいいココなんじゃないかと思ったんだよ」
これを言う根拠はゲームの設定だけどね。それを言わずにそれらしい根拠はこんなものしか逆に言えない。でも、自分で言うのも何だけど、なかなか尤もらしいと思うんだけど、どうだろう?
「…成る程な、それは言えてる」
「そうね、流石イナだわ。でもそうね…となれば街に出るのは奴じゃ無さそうね」
「え?それはどっち?」
「ああごめんなさい、メルーソルの方よ。彼が今出てきたら、間違いなく狙われるもの。それに、彼以上に市民評価が気になる奴が居るじゃない?」
「そうか…じゃあムスカード王子か」
となれば、狙いやすくもなるな。ただこの世界、魔法も銃も無いから、基本何かするのは近接なら刃物か体術、飛び道具でも弓っていう物理になる。…だから不思議な力を持つ神の使いは貴重なんだけどね。
「もしくは別の人間だな」
「え、他に誰が居るの?」
「それこそ姫さんとか王とか。ま、確率的には限りなく低いが」
「影響力は近いほど圧力が増す。となれば、そうね」
二人がそう言うのなら、ムスカードの確率が非常に高くなったな。このままムスカードであるならちょっと備えておくように、ナードにも言わなきゃ。
「…あれ?ちょっと待って」
「何?」
まずいんじゃないの?ナードはサーマルクの王だよね?顔知られてるんじゃないの?同じ王族ならさ。
「ムスカード王子の場合、此処に来る確率はどうなるの?」
「あぁ、来ると思うわ。冷やかしに」
「その時私やお客さんは?やっぱり挨拶?」
「居たら出なきゃマズイな。さっきも言ったけど、イナやフィルたちは此処には居ない方が良いだろうな」
「そう、だよね…」
いや、逆に私やあの人は何とかなると思うんだよ。根拠は無いけど。でもナードだよ。彼は絶対居ちゃダメだろ。暗殺された時にサーマルクの王が居たなんてバレたら、間違いなく疑われるじゃないか!ダメ!絶対!




