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兄弟様は主人公らしい  作者: トミネ
本章 兄弟様は主人公
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「…なんて?」


 すっ惚けた声を上げたのは言うまでもなく、目の前の人が発した言葉が原因なんですがね。その目の前にいるのはサラなんだけどね。もうさん付けでなんかとっくに呼んでないんだけどね、今更だけど。


「え、だ、だから、あの機械がどうやら城に置いてあるらしいんだ」

「何で」

「何でって…そりゃ、持って行ったから、だろ?」

「何で」

「は、えっ!?だ、だから…」


 サラはね、基本単純なんだよ。単細胞って言うか。真っ直ぐラスを尊敬して慕っているし、女性を弱く無力な存在と認識している。だから従順な方が扱い易く、守ってやれると言い張る。本気で。それがイコールで騎士が女性を守る理由だと考えてるから凄いよね、ラスの下にいてこういう認識なんだからさ。確かにラスは弱者、この世界じゃその最たるのが女性だから、守るべき対象だとしている。が、その弱者の意味合いが違う。彼は女性の人権が弱いからこそ、守ってやるべき自分達が居ると言う。サラの認識のように相手を見下すとはしていない。だが、最近はそのズレた認識を、張り切ったラスの物理的かつ精神的な色々で変わりつつある。特にこのサラは正に、見ていて実に愉快だ。ティナともよく笑わせてもらっている。だが、それとこれとは話が別だ。


「何で?どうして?理由を端的に!」

「えぇ!?だ、たから…アレを返してもらいに行ったら、もう無いって言われて…ずっと返さなきゃいけないからってお願いしたら、城の人間に渡したって…もう無いからもう来るなって…」

「…サラ…」


 君、それ厄介払いだよー。面倒臭い、煩い、邪魔だなって思われたからなんだよー。本当に単純だな。と言うか端的じゃないじゃん。


「はぁ…でもそれって証明出来てないよね?実際は未だあるかもしれないよね?」

「…あ!そうか確かに!今から見に行って来る!」

「待て待て待て、君何処に行くつもり?」

「え?城に…」


 …大丈夫かなこの人。単純通り越して馬鹿なのかな。よく単純馬鹿って言うけど、それかな。ていうか、最後まで人の話を聞けってんだ。


「…あのさ、サラくん。いいかね?良く聞きたまえよ?」

「え?あ、ああ…」

「例えばアレが城にあったとして、誰が持っているのか、若くは何処に置いてあるのか聞いたの?」

「あ」

「例えばそれが君が入らない場所だったり接触すら出来ない人が持ってたら?どうやって手に入れるの?」

「あ。じゃ、じゃあもう一回屋敷に…」

「オーケー、じゃあそっちにあるとしよう。もう無いと言ったにもかかわらず性懲りも無くやって来た君に、屋敷の人間はどんな対応をすると思ってるのかな?」

「あ、そうか…」


 そうか、じゃねぇよ。いつか騙されて大変な目にあうぞこの人。てかもう騙されてるんじゃないの?はぁ…。


「じゃ、じゃあどうしたら…」

「はぁー…どちらにしても、アレが国のお偉方の手に渡ってる時点でアウトでしょ。諦めよ、もう。良いよ、どうせこの国じゃ使えないし」

「っ!?それは駄目だ!」

「ラスの件?私から言っとくよ、もういい、諦めようって」

「そうじゃなくて…!」

「じゃあどうするの?もしあるとされる城を一人で探して、一体どれくらいの時間が掛かると?事情を知らない誰かに頼む?頼んだとして、その人がどんな物だ、機械だ、ってなるよね?どうやって説明するの?アレはこの世界に無いんだよね?騒ぎになったら困るの誰なの」

「うう…」

「はいまた論破ー。私ももう気にしないから、君も気にしない。ラスにも私から言うからもうおしまい!」


 論破でもないけど。ま、アレは使えるなら確かな便利なハイテク物だけど、無いならタダのガラクタだもんね。元々執着する気なんかなかったし。それこそ盗まれた段階でもう諦めてたし。そりゃ無事に戻って何もなかったらそれに越したことはないなーとは思ったよ?でも期待してガッカリする事も、される側の事も、私は良く分かっている。それがいかに虚しくて、無意味なことか。だから意識しないようにしてるんだよね。


「……ゴメン、俺が…」

「まぁ、それは否定しないけど、もういいよ。それでもし何かあったらその時にフォローしてくれれば。そもそもアレが私のものだっていう証明は、私が肯定しない限り成り立たないしね」


 さ、もう行った。そういう意味を込めて彼の肩を叩いた。私たちがいるのが洗濯物干し場だから、私は残りを干して、洗濯機のところに戻って干してを後二回やらなければならないんだ。


「…手伝う」

「…どうしたの、そんな事しなくてもラスにはちゃんと伝えるよ?」

「違っ…!そうじゃ…ない…」

「ん?サラには例のお客様のフォローをしてもらってるし、こっちはいいのに」


 見返りが欲しいわけじゃないのは分かっていた。でも真意がわからなかったから敢えて突いてみた。けど、結局何が言いたいのか分からない。


「……」

「…オーケー、じゃあ手伝ってくれる?このシーツをそっちに干して、空いたカゴにもう終わってるだろう洗濯機の中の新しいシーツを持ってきて欲しいんだけど、いい?」

「分かった」


 言いたくないみたいだから、聞かない事にしようと思う。それこそ、彼にしか分からない何か思うことがあるのだろうから。


「…アンタの世界は、この世界と色々違うんだよな?」

「うん?んーそうだね」

「お前みたいな女ばっかりなのか?」

「どういう意味だコラ」

「?お前のように簡単に人を許すような奴が多いのかと…」


 つまり、君はなにかね。私がお人好しと言いたいのかね?


「…サラ、私は許す、なんて大層な事なんかしたこと無いよ。許す行為は心が広い、それこそ神の使いみたいな人がすれば良い。私のはただの無関心。そんな女がたくさんいてたまるか」

「そ、そうか…」


 自分で言っておいて困るなっての!


「そうだ、サラには話してなかったけど、今サラやラス達が面倒見ているあの二人居るじゃない?知り合いだったの、あの人。元父親だった」

「は!?」

「因みに、会ってないから定かじゃないけど、それの家族と思われる人は知ってると思うよ」

「ちょ、ちょっと待って、と言うことは…」

「やっぱりって顔しないでくれるかな、私は何にも関係ないよ。私はあの人達と書類上の義務として家族ではあったけど、血も情も繋がってない、限り無く他人だから」


 此方の世界では珍しくもない形だけの家族。だから分かって欲しい。もう巻き込まないで。振り回さないで。


「…そうか、悪い。俺はもう、アンタを神の使いとは思ってない。だからその辺は安心してくれていいから」

「そ?ならいいや。情報としても漏らさないでね?その辺は信用して話してるから」

「っ!あぁ、勿論だ」


 信じはするよ、でもそれを裏切られたからといって、ショックは受けない自信はあるけど。早々に諦めの境地を見た人間は強いのだ。そんな私の目の前の男は、何故か上機嫌で干す手を再開させた。

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