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少しずつ身長も伸びて年齢に合う姿へと踊っている中、大人数の実験体がいるとされている研究所の制圧任務を行っている。他の研究所とは違い規模も広く、研究者も人数が多い…他の班も苦労しているようだ。


「広すぎじゃないか?」

「なんか、ラスボスが居そうな感じですよね」

「実験体にされている人が多いからかしらね」

「この奥にもいるようだな」


もう何人もの人を保護したのだがまだまだいるようだ…多いな。


「陽和、まとめて行けるか?」

「うん」


闇の能力でその場にいた研究者達を縛り上げる、夕陽達が素早く動いてこの場所は制圧した。その隣の部屋は実験室になっていて広い体育館のような場所になっていた。実験体の思われる人達が何人かいて皆恐怖の表情をしていた。


「皆さん、ご無事ですか?」

「あんた達は…助けに来てくれたのか?」

「はい、未だここは未制圧ですので速やかに移動しましょう」


数えると6人いる、そのうちの一人は様子が変だ。20代くらいの女性だが…彼女は俯き体を震わせている。夕陽と顔を見合わせ彼女の元へ行くと突然顔を上げ叫びと共に強い力を放った。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!!」


強い力は私達を飲み込もうとしていた。


「ッ!」

「陽和ッ!」


夕陽の声と温もりを感じた瞬間体中に強い衝撃と打ち付けるような痛さを感じた。実験体達の悲鳴と果歩達の声が一瞬聞こえたが一瞬だけ意識が飛んだ。

痛さに意識が戻り目を開けると壁に打ち付けられている実験体達と力が暴走している女性を食い止めている果歩と摩耶、圭佑の姿だった。実験室はボロボロで瓦礫が散乱しており下敷きになっている人もいる…私も息苦して身体を動かしたいけども動かない。視界には夕陽の手が見えるのに動く気配もない…夕陽の温もりを感じているのに、私は今どうなっているのだろう。


「夕陽!陽和!大丈夫かッ!」

「陽和ッ!夕陽ッ!」

「け、いす…け…ま、や」

「…ッ!陽和ッ!?摩耶さん、圭佑さん!陽和の声が微かに聞こえました!」

「何!?」

「第5班!念力能力者!」

「はい!瓦礫を動かしますので少し離れてください!」


その言葉を聞いた瞬間少しだけ楽になった。


「夕陽!陽和!」

「夕陽をゆっくりどかすわよ!」


楽になると同時に体中の痛さに顔が歪みそう。


「陽和、陽和!」

「か、ほ…」

「夕陽が意識不明、直ちに運んでくれ!」

「陽和も辛うじて意識がある程度よ、急いで運んで。第二班、他のけが人は?」

「5名無事です」


段々視界が霞んできているのが分かる。


「陽和?陽和!摩耶さん、陽和がッ!」

「急いで!」


焦る2人の声を聞きながら私は意識を手放した。




    *    *    *




次に目を覚ますといつもの医務室とは少し違う天井だった。


「目が覚めたのね陽和」

「…くれ、は、さん?」

「気分はどう?」

「特に、何も」

「何があったか覚えてる?」

「はい」


任務中に実験体が暴走して私は…。


「あれから1日経っているのよ?」

「…夕陽は」

「治療は施したわ、あとは目覚めるのを待つのみよ」


そうか…。


「今は麻酔が効いているから大丈夫でしょうけど切れたら痛みが出ると思うから、痛くなってきたら呼んで」


そう言って紅波さんは部屋を出て行った。

あれから一日も経っていたのか…窓を見ると外は夜だし、まだ眠いから寝よう。


『いたいよぉ…いたいよぉ…』


これは悪夢か…私の悪夢はいつも同じだ。


『いたいよぉ…くるしいよぉ…』


真っ赤な血、変形した彼らはいつもこうやって私に訴えてくる。


『じっけんたい…わたしの…じっけんたい』


血まみれの父…彼は憎んだ目で私を見る。他の人たちも血まみれのまま私に近づいてくる…私は動けず立ち尽くすまま。


『陽和…どうして貴方なんかを生んだのかしら』


お母さんの声がして振り向くとひどい姿をした何かがいた。


「ッ!」


その姿が気持ち悪くて逃げようとしても逃げられない。


『ひ…より…』


これは誰?これは何?


『ひよ、りぃぃぃぃ…』


血まみれの手が触る腕が、足が、頭が痛い…痛い、痛い痛い痛い痛い!


「より!…陽和ッ!」

「い…た、いッ」

「急いで麻酔を!」

「はい!」


微かに目を開けると紅波さんの顔が見えて、そして体中が痛かった。


「準備できました」

「ありがとう……よし…陽和、麻酔を入れたから痛みが引くわ」

「くれは、さん」

「大丈夫よ、大丈夫」


そう言って紅波さんは手を握りしめてくれた。その暖かさに安心して私は目を閉じた…ようやく安心して眠れると思ったら私はまた先程の夢の続きの中にいた。


『ひよりぃぃ…』


何かは私の正面にいて、たくさんの人が血まみれで私を掴んでいる。


『陽和』


聞き覚えのある…この声は、夕陽?


『陽和』

「…夕陽?」


どこ?何処にいるの?首を動かせば少し離れたところに夕陽はいた。


『陽和』

「夕陽…夕陽?」


夕陽は私を見つめるだけ…その姿に不安を感じて手を伸ばす。だけどもその手は赤く染まるだけで夕陽は向きを変えて歩いていってしまう…待って、行かないでッ!


『血にまみれた陽和が行けるわけ無いでしょう?』


何かが私の耳元で囁いた瞬間身体中が血まみれになった。


「ッ!…なんで」

『貴方はこちら側…分かるでしょう?』


気持ち悪い…そんな目で私を見ないで…やめて…助けて、助けてよ…夕陽…。


『これからはずっと一緒よ…陽和』


そう言って何かが笑った時に私は目が覚めた。


「陽和!…良かった」

「…紅波さん?」

「貴方、あれから3日も目が覚めなかったの…心配したわ…」

「3日?」


悪夢と痛みで起きたあの日から私は3日も寝ていたらしい。自分でも驚きだ…ただ夢を見ていただけなのに、起きたら3日も過ぎていたなんて…。 


「今の貴方はようやく身体が戻り始めて不安定、下手に薬も使うことが出来ないし…随分と痩せたのよ。とりあえず身体を起こすわね」


そう言って紅波さんはリモコンを手にしてスオッチを押すと頭の方が起き上がった。


「食欲は無いでしょうけどとりあえずは食べてもらうわ」


その後、おかゆのような物を持ってきて少しずつスプーンで掬ってもらい食べた。食べた後は再び横になって目を閉じた。

また夢の続きを見るのかと思っていたのだが夢を見ずに寝れた。起きた時、手には温もりがあって誰かが握っているというのが分かる…紅波さんだろうかと思い目を開けるとそこには…。


「おはよう」

「……夕陽?」

「ああ」

「…目が覚めたの?」

「昨日目が覚めたんだ、紅波さんから陽和の状態を聞いて許可が降りたから来た」


ちなみに今は朝の8時、長い夢から覚めたのは前日の午後9時だったそうだ。…夕陽の意識が戻ったのはその1時間後。


「身体はもう大丈夫なの?」

「ああ、もう何ともない。陽和も大丈夫か?」

「うん、悪夢も見なかったし体調も平気」


私はもう片方の手を握っている手の上に載せた。


「…夢の中でね」

「うん」

「夕陽が遠いところに行ってしまったの」

「…そうか」

「もう、戻って来ないかと思って…怖かった」

「…心配かけてごめんな」


そう言って夕陽の繋いでない手が私の目元にやってきて何かを拭った、これは…涙?


「私…泣いてるの?」

「泣いてる」

「そう…泣くの…初めてかな」


手はそのままに身体を起こす、椅子に座っている夕陽と目線が同じ高さになった。


「私、夕陽の事が好き…私を研究所から助けてくれて、皆と出会わせてくれてありがとう」

「ッ!…陽和、笑った」

「え?」


驚いて自分の顔に手を当てる、鏡を見なくても分かる…自分の表情が変わっている…変わってる!


「陽和!」

「わっ」


夕陽に抱きしめられた。


「俺もだ…陽和と出会えて良かった…愛してる」

「それって…」


手を緩めて見つめ合った私たちは何も言わずに唇を交わしたのだった。




   *   *   *




それから数日後。


「おはようございます陽和様」

「おはよう明菜」

「新しい制服が届きましたよ」

「本当?」


新しい制服を来て姿見を見る。身長も伸び、17歳だと思われるようになった…そして何より、自分が笑っていることが嬉しい。


「おはよう陽和!」

「おはよう果歩」

「新しい制服届いたんだね」

「うん」


果歩と歩きながら部屋に入る。


「陽和おはよう、制服似合ってるわよ」

「すっかり17歳らしくなったな」

「おはよう摩耶、圭佑」


部屋に入って最初に摩耶と圭佑。


「おはよう、似合ってるじゃない」

「成長したなぁ」

「おはようございます都姫さん、ボス」


自分の席に向かいながら都姫さんとボスに。


「おはよう陽和、似合ってる」

「おはよう夕陽!」


最後に大好きな夕陽に挨拶をして一日が始まるのだ。


これから先、どんな困難が待っていようとも…大好きな家族がいるから私は頑張って行けるんだ。



これにて完結です!

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