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第7話 リベラティオ

「侯爵!困ります!ボーデン侯爵!」


 ガタイの良い髭面のボーデン侯爵が王家近衛騎士達を数人引き摺ってセレスティア王家、王の間の扉を開け放つと、王の間に居並ぶ貴族や文官達が一斉に振り返る。

 重厚な両開きの扉が勢いよく開かれ、王家近衛騎士達を引き摺るようにして、ガタイの良い髭面のボーデン侯爵が姿を現した。


「セレスティア王!どういうおつもりか!」


「ヒッ!って、ボーデン侯爵ではないか。如何致したというのだ」


 侯爵と同じ年の頃の、豪奢な王座に腰掛ける小柄な王は、威厳よりも不安を煽る顔立ちだ。

 そして小柄な王はボーデンの勢いに一瞬怯んだが学園同窓生であった彼の顔を見て胸を撫で下ろす。


「如何もなにもテルマイル嬢と王子の婚約破棄とはどういうおつもりか!隣国、ザナス帝国と友好を結ぶ公爵家の令嬢との婚約は我が国の最重要事項ですぞ!」


「いやしかしだな、テルマイル嬢の度重なる非道な行いを見過ごす事はできんのだ。それにボーデン殿も子供を持つ親として好き合った者同士で添い遂げさせてやりたいと思うであろう?」


「うぐっ……それとこれとは別ですぞ!これは高度な政治的な話であり王家の務めでもありましょう!ここは心を鬼にしてでも政治を優先して頂きたい!」


「な、何気に酷い奴だのぉ、お主に人の心はないのか。それに『うぐっ』って唸っておるではないか」


「む、勿論父としての気持ちは痛いほどわかります。ですがザナス帝国は大国であり、もし何かこちらに今度不手際があった時、戦争になりますぞ!」


「うぅ、せ、戦争は避けたいな……だがこちらの不手際と言っても最近は貿易は軌道に乗り、国境の鉱山の分配の話も纏まった所だ。そうそう問題もおこるまい」


「ですが王よ!」


「くどい!帝国が滅ぼしたエルフ王家の者を匿うとかでもしない限り何も起こりようがないであろう!」


「何故我が国がエルフ王家の人間を匿う事態が起きるとお思い……」


(イズナーーーーーーッ!!)「……かはっ!」


「ど、どうした侯爵!ボーデン侯爵!おいボーデン!誰かおらぬか!ボーデンが興奮しすぎて倒れたぞ!!誰か!」






 王都でも屈指の広さを誇るボーデン邸。

 その応接間では――



「で、兄さん」


「んあ?」


「そちらのお美しい女性は?」


 銀髪のエルフは長い耳を揺らしながら、イズナの隣で優雅に一礼した。


「ファインよぉ、何回言わせんだ。彼女は今日雇った俺の護衛だって」


「イズナ様一の家臣です」


「ティアさんや、話がややこしくなるから黙ろうか」


「ふみゅ」


「か、可愛い……じゃなかった。護衛なら兄さんより僕に付けるべきです!」


「いや、俺に言うなよ。それにお前の護衛は親父が決めた立派な騎士がちゃんと居るじゃん。実家に」


「あ、あんな魔熊みたいな護衛より私もエルフを所望します!」


「魔熊って……それラムゼスのおっちゃんが聞いたらマジで泣くからここだけにしとけ?」


「兄さんが言わなければ問題ありません!」


「お前ねぇ……てか、そのNTRされた男爵令嬢ってそんなに可愛かったの?要するに二股かけてたんだろ?」


「……六です」


「ん?」


「六股です」


「……凄まじいな」


「ですが……愛していたんです。今も……彼女を忘れるなんて……そうだ!いっその事王子を亡き者にしてしまえば!」


 イズナはどこからともなくスリッパを取り出し――


――スコーーーーン!


「まてーーーい!」


「どこからスリッパなんて出したんですか!」


「そりゃ出るわ!なに王子暗殺しようとしてんだお前は」


「しかしこの愛を貫くにはもうそれしか!」



「スキル!《直観》」



「なんです突然。エセ鑑定とか今必要ないでしょう」


「いいからこれ見ろって」


 スキルを手鏡に映し、それをファインにも見せてやった。


「鏡だから全部左右逆だ。名前も能力名も反転してるが、読めない事もないだろ」


 


 ンデーボ=ンイァフ

              信自   

     01■□□□□□□□□□

              政内

(中限制)04■■■■□□□□□□

              気殺

     09■■■■■■■■■□

              態状

             (了魅)



「……子供の頃に見せてもらいましたが、本当に見にくいですね」


「まぁ駄目スキルだからな。内容は自信が無いのや制限掛かってる内政と殺気はおいといて、殺気!?お前マジ王子暗殺はやめとけ?――もうそれもいいや、最後の見てみ」


「……状態、魅了?」


「そう。お前先日から魅了掛かってるぞ」


「は?」


「だから、その男爵令嬢から魅了掛けられてんじゃねーのかって事」


「……そりゃそうでしょう。僕は彼女の事が大好きなんですよ?魅了されてて当然じゃないですか」


「あ、いや、好きだから~とかそー言う話じゃなくてな……なんだコイツ!面倒くさ――」



 俺の話の途中で、ティアが一歩前に出た。

 白い指先をファインへ向ける。


 そして淡い翡翠色の魔力が爆発するように広がる。部屋を飲み込み、廊下を駆け抜け、あっという間に屋敷全体を包み込んだ。



――「リベラティオ!!」



 こ、こいつ!ファインに向かって大魔法を放ちやがった!



「ティア!突然なにしてんだ!」



「主様が弟君をご心配されていた様なので精神支配解除魔法を使ってみました!」



 ティアが褒めて欲しそうにこちらを満面の笑みで見つめていた。





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