第三話「枯れる」
二人はしばらく、紅茶とケーキを楽しみながら、思い出話に花を咲かせていた。
放課後遅くまでコンビニ前でお菓子を食べたこと。
その姿を教師に見られ、めっちゃ怒られたこと。
体育祭で団長として、チームを盛り上げたこと。
あきらの元彼に「あきらから離れろ」と言われ、面倒くさくて無視した結果、レズカップルという根も葉もない噂が広がり、ダメージを食らったこと。
文化祭であきらがボケ、トウカがツッコミで漫才を披露したこと。
そんな思い出がたくさん蘇っていく。いつどんなときでも、私のそばにはあきらがいた。
店内は静かで、深くて、まるで海の底にいるみたいだ。あきらの活発な声だけが響く。
「んで、あたし、26歳で死ぬわ」
手が止まった。あきらの顔を見る。相変わらず、綺麗な弧を描いて微笑んでいる。
一口、紅茶を飲み、私は「そう」とコップを置いた。
ステンドグラス風の窓から夕焼けの日差しが入り込んでくる。彼女の顔がオレンジ色に染まっている。私はその光景を、芸術品を眺めるようにして見ている。
「ふふふ。トウカならきっと、そういう反応すると思ってた!」
三年前と比べ、ひどく痩せており、鎖骨が妙に出張っていた。手首も私と同じくらいだったはずなのに、いつかお揃いで買った太陽と月が一体になっているブレスレットが、カランと音を立てて揺れている。
あきらは私の両手を取り、自分の頬に擦り付けた。手から伝わってくるあきらの温度はひどく、冷たかった。垂れ目気味で色素の薄い双眸でじっと私を見据える。彼女の眼差しは毒そのものだ。見つめられると、身体が痺れ、思考停止し、動けなくなってしまう。
毒だと分かっていても、私はあきらの手を振りほどくことはできなかった。いや、できるはずがないのだ。
「あたしの言った通り、26歳で死んだら笑ってよ」
頭の中にこびりつくような、ねっとりとした音色で彼女は続けた。
「他のみんなが悲しみに暮れてる中、トウカだけは大笑いしてほしいの」
さっきまで晴れていたのに、稲妻が走っている。強い雨が窓を叩きつけている。
その願いは、なんて残酷で無垢なのだろう。
「あたしの、お願い、聞いてくれるよね」
私があきらに弱いのをいいことに、ずうずうしく言ってくる厚顔無恥の性格は今も変わらない。怒りすら余裕に飛び越えて、むしろ、呆れて笑ってしまうほどだ。
「分かった。笑ってあげる」
そう返事し、紅茶を飲む。ひどく冷めていて、おいしくなかった。まるで私の心みたいだ。




