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ヤニと違和感と

大人になるってなんだろう

次の日も、その次の日も、そのまた次の日も。空いた時間があればあの光景を思い出す。初めての感覚に戸惑うと同時に、不快感が募った。


今日は運が良いのか悪いのか、残業終わりで会社から出るのが遅くなってしまった。


また、あの人を思い出す。


今から行けば、同じような時間に着くな。

いつもとは反対側のホームに行き、もし俺が相手側だったら気持ち悪いよな、なんて申し訳ない気持ちで頭がいっぱいになった。


新宿駅西口喫煙所。腕時計を見るとちょうどあの日と同じ時間。モヤモヤする。だけど昂り始めている心を無理矢理押さえつけて俺は中へと入った。


タバコを吸って5分ほど経った時、彼女は現れた。

今日は髪を高級感のある銀のバレッタで止めていた。上も下もピチッとした服装で、より一層彼女のスタイルの良さを強調している。


いつもは他人なんて興味ないのに、見ないように意識するだけで精一杯だった。


カチッ、カチッ。ライターの火がつかないのか、苦戦している。チラリとライターを見てみると、油がもう底をついている。


俺は胸ポケットから自分のライターを出した。


「すみません。これ、使いますか?」


目が合う。華やかな目元に比べて、瞳は吸い込まれそうなほどに暗く、深い。声裏返ってないかな、俺今日身だしなみちゃんと整えてきたっけ、なんて考える余裕もなかった。


「ありがとうございます」


女性にしては少し低い声。

愛想もクソもなく彼女は軽く会釈してから受け取る。新品に近い俺のライターは一度カチッとやっただけで火がついた。


「そのタバコ、美味しいですよね」


彼女のことを知りたいと思った。人間、気になるけどわからないものは探究したくなるものだろう。


「ああ。…なんでもいいんです。タバコなんて」


味で選ばない人なのかな。そんなことを思いながらライターをしまう。


それ以上会話をすることはなかった。いや、出来なかったのだ。瞳に映っているはずの俺は彼女にはまるで見えていないようで。孤高で、とても寂しそうな、そんな目をしていたから。

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