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今まさにホームルームを始めるところだったのだろう、黒板の前にはすでに教師が立っていて、生徒達と談笑していた。
「おい、もうちょっとで遅刻だぞ、気をつけろよ」
「はい」
小さく答えに、教師はジッとショウイチを見る。背中に視線を感じながら、ショウイチは自分の席に向かった。
途中、チラリと渡部の視線を感じたが、それ以上は何もない。特別ショウイチに声をかけるような人間は存在しなかった。
教師の案内があって、渡部が号令を取る。ホームルームが始まる合図だ。
簡単な連絡と下らない雑談。真面目に聞いている人間は殆ど居ないのだろう、時折粘ついた目がコチラを向いている感覚があった。
反射的に目を合わせそうになるが、頭を突っ伏すようにして抑えた。
無駄なトラブルは避けたい。胸の奥にわだかまるものを吐き出しても、きっと碌なことにはならないだろう。
「善田。どうした、気分が悪いのか?」
だが、そういったショウイチの考えは全て裏目に出た。
柔らかい声音から、きっと悪意がないだろうことはわかる。教師は本当に心配しているのだろう。先程のショウイチの反応から気にかけていたのかもしれない。
顔を上げると、教師のそれとは別の目がショウイチを睨みつけていた。余計なことを口走るなよ、とでも言うような。
「いえ、大丈夫です」
「そうか。具合が悪いときは遠慮せずに言えよ」
その言葉を最後に、教師は連絡事項の説明に戻った。
突っ伏すのが駄目ならどうしようか、と口元を抑えていると、隣からの目線に気づいた。
確か、そこは成堂の席だったか。ゆっくりと顔を向ける。
感情の読めない冷めた双眸と視線を突き合わせて、すぐに正面へと戻した。
やがてホームルームが終わり、そのまま一限目が始まる。この後面倒にならなければいいが、とショウイチはノートを出した。
新しいページを開くと、隣半分が下らない落書きで埋め尽くされていることに気づく。
思わずそれを破り捨てて、ショウイチはシャーペンの頭を叩いた。




