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「このあと、どうするつもりだ?」


 裏門から学校を出たあたりで、成堂がショウイチに問いかけた。

 ショウイチは足を止めずに、そのまま人気のない裏路地に入る。


「君はどうするの?」

「質問してるのは俺の方だぜ」

「あまり答えたくないかな」


 少し含みのある答えに、成堂はジッとショウイチの背中を見た。

 この後どうするか、という質問の意図を明確に察知されている。ショウイチがどう答えるか、探ろうとしているのを。

 わかっているからこそ、はぐらかさずに答えたくないと否定する分、マシな返答なのだろう。

 成堂が足を止め、辺りを見回す。監視カメラらしいものが無いことを確認してから、意を決して口を開いた。


「ハチュウ人達を皆殺しにするつもりか?」


 唐突な問いに、ショウイチが足を止めて顔だけで振り返る。

 ショウイチの中にはアギトが居る。或いは、その記憶を辿ればハチュウ人が隠れている場所がわかる筈だ。

 成堂にはわからない、ショウイチにしかわからない場所。質問の意図を察して、ショウイチは口を開く。


「そうだったら、どうする? 一緒に来ることは止めないけど、危ないよ」

「危ないのはお前も一緒だろ、流石に死ぬぞ」

「心配してくれてるの? 君が?」


 どこかふざけているようなショウイチを、成堂は睨みつけた。

 あれだけ死人が出たのだ。いつ、警察がショウイチや成堂に話を聞きに来てもおかしくはない。

 或いは、既に疑われているかもしれない。拘束されれば何日間動けなくなるかわからない。その間にもハチュウ人達が何をしでかすかわからないというのに。

 昨日の今日、すぐ襲撃に来るような連中だ。学校に来たハチュウ人がやられたとわかれば、またすぐに動いてくるだろう。

 時間がない。


「俺じゃあ戦力にならないと思ってるだろ? 無駄死にするのは俺の方だって、なぁ?」


 ショウイチは答えない。ただ成堂の真意を探って、ジッと見つめる。


「俺がハチュウ人を殺したあと、何か言いたげだっただろ。何か俺に言いたいことがあるんだろ? 言えよ」

「……わかった」


 やや間があって、ショウイチは体を成堂へと向けた。


「本当に君は、人を殺したのか?」

「渡部の事か?」

「うん」

「今更だな。俺が殺したか殺してないか、関係あるのかよ」

「ハチュウ人を相手にしてたときも、全力じゃなかったでしょ?」


 ジッと、ただ見つめるだけの目。

 心の内を見透かされたようで、今まで饒舌だった成堂の口が止まる。


「君は心の底で何かを傷つけることを怖がっている。だから、全力を出せないんだ。本気で殴ることができない。違う?」

「何言ってんだ、俺はボクサーだぞ。人を殴ることに躊躇するわけ無いだろ」

「グローブがあると殺せないからって、さっき言ってたよ」

「違う、俺はそんな臆病者じゃねぇ!」


 いつの間にか握りしめた拳で、成堂が近くの壁を殴りつけた。衝撃で欠けた破片がパラパラと音を立てる。

 ショウイチはまるで動じない。


「気に食わないやつは力で黙らせてきた。それが俺だ、馬鹿にするんじゃねぇ」

「君がそう言うなら、そうかもね。僕にはそう見えたってだけだから。何があったかとかは聞かないよ」


 それじゃあ、と話を終わらせようとするショウイチに、成堂が噛み付く。


「待てよ」

「まだ、話すことがあるかな」

「黙っていようと思ってたが、やっぱりお前ムカつくぜ。その発言、その態度、元々は底辺のゴミ虫の癖になぁ!」


 左腕をぐるりと回し、成堂がファイティングポーズを取った。


「やろうぜ」

「わかった」


 今度の答えに、間はなく。

 合わせるようにショウイチも構える。

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