↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/16

13

 鋭い瞳が、敵の姿を瞬時に捉える。前を駆ける1人と、その後ろに2人。リザードマンは腕をだらりと下げて構えた。

 右足を下げ、腰を落とす。一歩の踏み込みで届く距離まで敵が来るのをジッと待ってから、後ろ足に力を込めた。

 刹那の閃き。前に居た一人の首が刎ねる。

 前を走っていた仲間が倒れるのを見て、後ろにいた2人は足を止めた。

 空いた左手を、近くにいる1人に振り下ろす。防御のためにハチュウ人は両腕を掲げて、その腕ごと逆鱗が体にめり込んだ。


「ゲッガガがガが!!」


 激痛に呻きながら、ハチュウ人は体に刺さった逆鱗を巻き込むように腕を捻り、リザードマンを抑えようとする。

 その隙に、隣のもう1人が飛びかかった。


「グおオおおオオ!」


 猛々しい咆哮と、大きく体を回転させて振り払われる尾。渾身の攻撃を、リザードマンは片手で受け止める。

 手の平で勢いを殺し、そのまま尻尾を掴む。引き寄せる力を利用して顎を蹴り上げた。

 衝撃に耐え切れなくなった首が折れて、180度逆さまに向く。

 動かなくなった。


「グッ!?」


 掴まれた左腕を引き抜こうとして、残った最後の1人が抵抗する。リザードマンはそれに、つまらなさそうな目を向けた。

 睨み返してくる目には、まだ生気が宿っている。

 不意に、リザードマンは左腕を押し込んだ。


「ゲはッ! ゴッ! ブっ!」


 口から血を吐き出してハチュウ人が呻く。しかしそれでも腕を離す気配はない。

 ふと右手に掴んだ死体の、尻尾の先が尖っている事に気づいて、目の前の敵の脇腹に突っ込んだ。

 硬い鱗が容易く砕けて、肉が貫かれる。


「ぎゃあああっガッっがアアア!!」


 また吐き出される血。拘束が緩んだ隙に腕を引き抜こうとして、逆鱗の先が腹を突き破る。

 痛みで我を取り戻したのか、ハチュウ人は再び腕に力を込めた。

 全身の筋肉がギュッと強ばり、体を引き裂く刃を捕らえる。

 少しでも時間を稼ごうというハチュウ人の胸に、リザードマンは足の裏を当てがった。


「やゲぶ」


 言葉が形になる前に、放った蹴りがハチュウ人を突き飛ばす。体を貫いていた逆鱗が鱗をベリベリと引き剥がして、かき混ぜられた内臓が露わになった。

 裂かれた胃から溢れる胃液が、異臭とともに蒸気を上げる。

 リザードマンは腕を振って、逆鱗に着いた肉塊を落とした。

 振り返ると、成堂がハチュウ人を相手に戦っていた。

 どうやら1人は倒した後らしく、絶命しているであろうハチュウ人が転がっていた。今戦っている敵にも、消耗が見て取れる。

 左右の拳のコンビネーションで、敵との距離が開いた。


「シッ!!」


 裂帛の気合。成堂は左足を踏み出し、その勢いで鋭く体を回す。

 遠心力を乗せた右足が美しい半円を描き、敵の頭を捉えた。

 骨が砕ける音が鳴って、最後に残っていたハチュウ人が倒れる。


「流石に、そっちよりは遅くなったみたいだな」


 軽くおどけて、上がった息を誤魔化す成堂を、リザードマンは静かに見つめる。


「ん? なんだよ」

「いや」


 腕の逆鱗を納めて、リザードマンは教室の中に戻った。

 外を見ると、生徒達が帰り始めているのが見える。いずれ教師か警備員あたりが、避難していない生徒を探しに来るだろう。

 リザードマンの姿がゆっくりとショウイチの体に戻っていく。教室の中にある死体の中から、比較的血のついていない制服を剥ぎ取って、羽織った。


「面倒になる前に出よう」

「そう、だな」


 何か言いたげな様子を無視して、ショウイチはスタスタと先に進む。

 その後ろ姿を、成堂は追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。