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鋭い瞳が、敵の姿を瞬時に捉える。前を駆ける1人と、その後ろに2人。リザードマンは腕をだらりと下げて構えた。
右足を下げ、腰を落とす。一歩の踏み込みで届く距離まで敵が来るのをジッと待ってから、後ろ足に力を込めた。
刹那の閃き。前に居た一人の首が刎ねる。
前を走っていた仲間が倒れるのを見て、後ろにいた2人は足を止めた。
空いた左手を、近くにいる1人に振り下ろす。防御のためにハチュウ人は両腕を掲げて、その腕ごと逆鱗が体にめり込んだ。
「ゲッガガがガが!!」
激痛に呻きながら、ハチュウ人は体に刺さった逆鱗を巻き込むように腕を捻り、リザードマンを抑えようとする。
その隙に、隣のもう1人が飛びかかった。
「グおオおおオオ!」
猛々しい咆哮と、大きく体を回転させて振り払われる尾。渾身の攻撃を、リザードマンは片手で受け止める。
手の平で勢いを殺し、そのまま尻尾を掴む。引き寄せる力を利用して顎を蹴り上げた。
衝撃に耐え切れなくなった首が折れて、180度逆さまに向く。
動かなくなった。
「グッ!?」
掴まれた左腕を引き抜こうとして、残った最後の1人が抵抗する。リザードマンはそれに、つまらなさそうな目を向けた。
睨み返してくる目には、まだ生気が宿っている。
不意に、リザードマンは左腕を押し込んだ。
「ゲはッ! ゴッ! ブっ!」
口から血を吐き出してハチュウ人が呻く。しかしそれでも腕を離す気配はない。
ふと右手に掴んだ死体の、尻尾の先が尖っている事に気づいて、目の前の敵の脇腹に突っ込んだ。
硬い鱗が容易く砕けて、肉が貫かれる。
「ぎゃあああっガッっがアアア!!」
また吐き出される血。拘束が緩んだ隙に腕を引き抜こうとして、逆鱗の先が腹を突き破る。
痛みで我を取り戻したのか、ハチュウ人は再び腕に力を込めた。
全身の筋肉がギュッと強ばり、体を引き裂く刃を捕らえる。
少しでも時間を稼ごうというハチュウ人の胸に、リザードマンは足の裏を当てがった。
「やゲぶ」
言葉が形になる前に、放った蹴りがハチュウ人を突き飛ばす。体を貫いていた逆鱗が鱗をベリベリと引き剥がして、かき混ぜられた内臓が露わになった。
裂かれた胃から溢れる胃液が、異臭とともに蒸気を上げる。
リザードマンは腕を振って、逆鱗に着いた肉塊を落とした。
振り返ると、成堂がハチュウ人を相手に戦っていた。
どうやら1人は倒した後らしく、絶命しているであろうハチュウ人が転がっていた。今戦っている敵にも、消耗が見て取れる。
左右の拳のコンビネーションで、敵との距離が開いた。
「シッ!!」
裂帛の気合。成堂は左足を踏み出し、その勢いで鋭く体を回す。
遠心力を乗せた右足が美しい半円を描き、敵の頭を捉えた。
骨が砕ける音が鳴って、最後に残っていたハチュウ人が倒れる。
「流石に、そっちよりは遅くなったみたいだな」
軽くおどけて、上がった息を誤魔化す成堂を、リザードマンは静かに見つめる。
「ん? なんだよ」
「いや」
腕の逆鱗を納めて、リザードマンは教室の中に戻った。
外を見ると、生徒達が帰り始めているのが見える。いずれ教師か警備員あたりが、避難していない生徒を探しに来るだろう。
リザードマンの姿がゆっくりとショウイチの体に戻っていく。教室の中にある死体の中から、比較的血のついていない制服を剥ぎ取って、羽織った。
「面倒になる前に出よう」
「そう、だな」
何か言いたげな様子を無視して、ショウイチはスタスタと先に進む。
その後ろ姿を、成堂は追いかけた。




