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ep.27 アーダンの提案

 命乞いよろしく条件を出すアーダンに、ファイレナとグリオハンが顔を見合わせる。


「死に損ないのくせに、一体何ができるっていうんだ?」


 ファイレナの疑い深い目がアーダンを刺す。


「よくぞ聞いてくれました。あなたたちはサリフィン様の復活を目指しておられるのではありませんでしたかな?」

「本当は知られたくなかったけどな。まぁ、その通りだよ」

「その過程で私に目をつけたのは悪くない発想です。私も不死になるために色々調べた身ですからね。……あるのですよ。蘇生を可能にする秘宝が」

「おい、本当だろうな? どこにある? さっさと持って来い!」


 ファイレナが興奮気味に、短剣を振りながらアーダンに指図する。


「いえいえ、所有しているわけではありませんよ。ただ、そういうものがあるということは見聞きしました」

「疑わしいな。保身のために言っているだけではないのか?」


 グリオハンが睨みを利かせる。


「まぁ、どう判断していただいても結構。ですが、蘇生の秘術など、そうそう見つかるものではありません。実際、これまで有益な情報がございましたか?」


 アーダンは自信たっぷりだ。ファイレナは短く呪文を唱え、素早く印を結ぶと、アーダンの額に指を添えた。


「《虚言看破(ディテクテーション)》」


 それは対象の嘘を見抜く精神魔法である。アーダンは自身に流れ込む魔力に抗わなかった。嘘を吐いていないから魔法に抵抗する必要はない。

 そして、実際ファイレナも嘘を感じなかった。


「少なくとも、こいつはその秘宝とやらがあると実際に信じている」

「だから言ってるでしょうに」

「信じるのか? この死に損ないを?」


 グリオハンは深くいぶかしんでいる。


「まぁ、ね。他に有益な情報が手に入ってないのは事実だし。その秘宝が実在すると考えると、無視することはできないだろ」


 ファイレナは短剣の切っ先をアーダンに向けた。教師が指し棒で学生を指すように。


「おまえを一行に加える。ただし、少しでも変な真似を見せたら、どうなるかわかってるな?」

「信用してください。危害なぞ加えるつもりはありませんよ」


 アーダンはにこやかな表情を浮かべ、ソファから優雅に立ち上がった。


「あ、それからもうひとつ。もし、その秘宝でサリフィン様が蘇ったならば、ご本人との報酬の交渉をお許しいただきたい」

「はぁ?」


 あからさまな嫌悪感をファイレナが表情に出した。


「人ひとり蘇らせるのですよ? その奇跡の発端は私の提供した情報に他なりません。報酬を要求して何かおかしいことがありますか?」


 あくまで丁寧な物言い。シオがどこか心配そうにファイレナに目を向けている。ファイレナは気が強く喧嘩っ早い。衝動的に短剣で喉を突き刺さないか不安なのだ。


「その交渉をご本人と行いたいのです。むろん、ご本人様が拒否なさるのなら、引き下がりますが、なにぶん、今は故人ですのでねぇ」

「……まぁいいさ。師匠がいいと言うならな」


 ファイレナはそう言葉を返して、最初に部屋を出ていった。

 アーダンは満足げに微笑んでいる。シオがアーダンに近づいた。


「一体、何を交渉しようというんです?」

「ハハハ。もちろん、お礼の品をいただくのですよ。あのジェイドウッドの森の賢者ですよ。もの珍しい魔道具の数々をたんまりと所有しているに違いない」

「その交渉をわざわざ生き返った本人と? 回りくどくないです?」


 シオは口を曲げて首を傾げた。それをアーダンは(あざけ)るように笑う。


「いいえ。お弟子さんはあまり交渉の余地がなさそうだ。賢者様の方がきっと話をわかってくださる」

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