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第三十二話


「逃さんッ!」


 予想通り翔の目の前にイスピナードの左手が迫るも、どうにか両手で防ぐ。


「く、くそっ!」


 戦いが長引くほど翔にとっては不利である。翔の体力も限界があり、仮に能力で回復したところで結局は先延ばしになるだけだ。それにイスピナードの勢いが衰える様子もない。


 ならば一気に畳み掛けるしかない。


「『能力創造』、切り裂く能力!」


 防いでいた手を崩し、翔はイスピナードのように右手を振る。


 するとイスピナードの左手の硬い外皮は切り裂かれ血が流れ出る。


「ぐっ!」


「まだだぁ!」


 顔を歪ませるイスピナードに翔は追撃する。


「『能力創造』、砕く能力!」


 左手を脇腹めがけて殴りにいき触れると、ボキッと骨が折れる音がした。


「がはっ……!」


 これにはイスピナードも耐えきれず後ろによろめく。


 いける、このまま押し切れば……。


 そう思ったと同時に眼光がこちらに向いた。


「があぁっ!」


 小細工はない、ただ本能に従うよう飛びかかってきた。


「の、『能力創造』、衝撃波!」


 翔は慌てるよう能力を発動し、眼前のイスピナードの上体に無音の衝撃が走る。


「ぐはっ……」


 イスピナードの手は翔には届かず、動きが止まった。


 これで倒れてくれと、翔は願ってしまう。散々能力を使用しイスピナードの体に十分なほどダメージを与えた。


 だが翔の願いを挫くよう、イスピナードの眼はまだ翔に向いていた。


「我を、舐めるなぁ!」


 上体が崩れている中、無理矢理腰を捻り右足を振ってきた。


「なっ!」


 強引な反撃を予測できるはずもなく翔はもろに受けてしまう。


「がはっ!」


 右足は翔に直撃し勢いのまま地面を無様に転がるも、すぐに体勢を整えイスピナードを捉える。


「ごほっ、ごほっ……、くそっ、まだなのか……」


 視線の先のイスピナードは手負いであるのは間違いない。


 しかしそれでも翔に向かってくる。


「どうしたッ! 我はまだ倒れていないぞ!」


 どの能力もイスピナードを倒す決定打にはなっていない。それはイスピナードの強靭な肉体という理由もあるが、翔の能力のイメージが足りていないからでもある。

 だったらもっと深くイメージするだけだ。相手を倒すこと、能力を上手く使うことに頭を働かせろ。


「俺にはできるはずだ……」


 小さく呟き迫るイスピナードを見る。


「……イスピナード! 俺はお前を倒す!」


「ならばそれを我に見せてみろ!」


 その言葉で翔は左手を支えに右手をイスピナードに向ける。


「そんなあからさまな攻撃など……」


 どこを狙っているかなど一目瞭然である。


 だがそれは予測できていても関係なかった。


「『能力創造』ッ! 雷よ穿てッ!」


 言葉と共に雷鳴が轟き、瞬く間もなく雷がイスピナードの体を貫いた。


「が……!」


 それは一瞬の出来事であった。


 体の芯に響く音は周囲に放たれ、その後には少しの静寂が流れる。


 そしてイスピナードの貫かれた箇所からは黒焦げた煙も立ち完全に動きは止まった。


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