第三十一話
「逃しはせんッ!」
「の、のうりょ」
「遅い!」
鋭く尖った左手が翔の脇腹を刈りとる。
「がっ……!」
刈りとられた痛みで意識が飛びそうになる。だがここで意識を失えばそれこそ死である。
「っつ、『能力創造』ッ! 斥力ッ!」
自らの意識を保つように翔は叫びながら右足をイスピナードに向けて振り抜く。
翔の右足がイスピナードの左脇腹に触れると反発するようにイスピナードの体は飛ばされた。
「ぐっ!」
勢いのまま大木に体を打ちつけられたイスピナードだが、すぐに体勢を整え翔に視線を向ける。
そしてぶつかった大木を片手で掴むと強引に地面から引き剥がし、翔に向かって振りかぶる。
「ふんっ!」
「なっ! の『能力創造』、分解!」
慌てながらも翔は能力を発動し、飛んできた大木は粉々に砕ける。
だが砕けた大木の先にイスピナードはいなくなっていた。
「ど、どこに?」
首を左右に振るが見当たらない。
と、足元の影に気がつく。
「まさか!」
慌てて首を上に向けると今にも飛びかかってくるイスピナードがいた。
「やば……!」
翔は無様に前へ転がり避けると、元いた位置にイスピナードの右足がぶつかり地面が割れる。
「はっ、はっ……、はっ……」
息を整える時間もなく翔はイスピナードの方へ向く。そこには追撃を加えようとイスピナードの視線がこちらに向いていた。
それは翔の思考する時間を削ぐということだろう。考える暇も、能力を使う暇も与えない。戦闘慣れしていない翔にとってはあまりにも効果的である。




