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第十七話


「そういえばお前が外に出ている間に分かったことがあったらしいぜ」


 ふと、ジギルノヴァは言ってきた。


「分かったこと?」


「ああ、破壊者が次にどの街に現れるかってことが分かったらしい」


「マジで?」


 まさかという情報であった。

 確かにライオネットは大体予測できていると言っていたが、それでも予測の域を出ないと思っていた。だがどうしてこのタイミングでわかったのか。


「なんでどの街に現れるか分かったんだ?」


「アタシも詳しくは聞いてねえけど、破壊者は一度現れた街には現れねえからな。それにこの世界は思っているよりか小せえし、残っている街の数で考えたら分かったんだってよ。まあ詳しいことは明日、話があるだろ」


 翔にとってはもう一度少女と会って話をしたかった。少しだけしか話していないが少女には何か隠していることがあるように感じた。それにわざと近づけさせないような、独りでいるようにも思えた。


「お前、破壊者を助けたいって思ってるだろ?」


「えっ!」


 翔の心を読んでいるかのようにジギルノヴァは言ってきた。


「な、なんで……」


「ただの勘だよ。ま、敵になってくれたら戦う理由ができるけどな」


 まるで望んでいるかのようにジギルノヴァは口角を上げる。


「まさか、そんなことするわけないだろ。そもそも俺一人でみんなと戦うなんて無謀だし……」


 目を合わせることなく答える翔にジギルノヴァは湯を這うように近づいて来た。


「ホントにそう思ってるのか?」


 またしても先程と同じような状況になり再度、顔を赤らめる。


「ほ、本当だって。言ったけど、戦ったことないのにみんなと戦うことなんてできるわけ」


「そっちじゃねえよ」


 翔の目の前に来たジギルノヴァは切るように言葉を挟んだ。


「そ、そっちじゃないって?」


「破壊者を助けるかどうかだよ。実際のところどうなんだ? アイツを助けてこの世界をどうにかしたいとか思ってるんじゃねえのか」


「それは…………」


 そのあとの言葉が続かなかった。


 本心を言うのが怖かったわけでも、知られたくなかったわけでもない。ただ翔自身、本当にどうしたいのか分からなかった。


「ひゃはは、まあいいや。アタシには関係ねえことだし、そっちに転がってくれた方が面白そうだしなぁ」


 言いながら今度は翔の胸元に人差し指を突き立てる。


「この身体に何が詰まっているのか、ライオネットを退けたモノは何なのか、アタシは気になって仕方がねえからよ。……お前が敵になることを望んでるぜ」


 ジギルノヴァの瞳は心の奥まで覗いているようであり、本質を見抜いているようにも思えた。


「……お、俺はもう出るから」


 逃げるように翔は湯船から立ち上がった。


 会話を無理に終わらした感じであるが、ジギルノヴァは引き止めようとはせず、翔はそのまま脱衣所で服を着ると、貸してもらった部屋に戻っていった。


 そして翔はベッドに横になり天井を眺める。


 異世界での一日が終わり、自分自身がこの世界でどうするべきなのかジギルノヴァとの会話もあり考えてしまう。


 いや、どうするべきというよりも、どうしたいのかだ。

 元いた世界ではしたかったことや、なりたかったものなどなかった。だからこそ小さなことでも楽しもうとしていた。そうすれば何か見つかると思い込んでいた。


 だが結局は何も見つからない、何も変わらない、平凡な生活に起伏のない日常だ。そこに不満があったわけではない、充実もしていたと思う。それでも何か特別なことに憧れていた。


 そしたら神であろう者が現れ、この異世界に連れてこられた。


 自分は今、特別な場所にいる。望んでいたことが起きたのだ。だったら自分のしたいことをするべきなのではないのか。


 この異世界で自分がしたいこと…………。



 翔は瞼を落とした。


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