第十八話
翌朝
「…………ル……、……ケル……カケル、起きなよ」
翔の耳にヒウロの声が届きぼんやりと目を開ける。
「おはよ、ぐっすり眠れた?」
おぼろげだが視界にヒウロの顔が映った。
「……ヒ、ウロ……?」
「ごめんね、寝てたのに起こして。けどライオネットがみんなを集めて話したいことがあるから、準備ができたら下に降りてきて」
そう言うとヒウロは部屋から出ていった。
翔は目をこすりながら上体を起こし、寝起きの頭を徐々に覚ましていく。
「そういえば昨日、ジギルノヴァが話があるみたいなことを言ってたな……」
少女について詳しい話があると言っていたことを思い出す。
翔はベッドから降り服を着替え始めた。
そして一通りの準備が終えると部屋から出て、階段を降りる。
もうすでに翔以外が集まっているのか気になりながら一階まで来ると、ドアノブを回し部屋に入った。そこにはテーブルを中心に翔以外の者が全員座っていた。
「お、ようやく来たな。カケルの席も用意してるからこっちに座ってくれ」
全員の視線に少し緊張するも、指示に従うように翔はライオネットが正面に来る席に座った。翔から右にジギルノヴァ、ヒウロ、ライオネット、イスピナード、エトゥイ、そして翔の順番だ。
「もしかして俺待ちだった?」
「カケル待ちだったといえばそうだが、まあ大丈夫だよ」
全員が揃いライオネットは座り直した。
「さてと、集まったことだし早速本題に入ろうか。すでに聞いているかもしれないが、破壊者が次に現れる街が分かった。それで破壊者の対応のための街の配置について決めたい」
「その前にカケルに破壊者がどういった行動をしているのか話した方がいいんじゃない?」
ヒウロは翔を思ってか質問した。翔にとっても詳しく把握しているわけではないので有難い。
「あー、そうだな。カケルは破壊者がどんな行動パターンをしているか聞いてないよな?」
「えと、昨日少しだけジギルノヴァから聞いた感じかな」
「そうか。まあ簡単に言ったら、破壊者が現れるのは必ず一つの街が光の線で包まれた時だけ。現れたら一定の時間はその街に留まってしばらくしたらいなくなる。そして一度現れた街には現れない、っていうのが破壊者の行動パターンだな」
「だから消去法で次に現れる街が分かったんだ」
「そういうことだ。まあいつ現れるかは分からないが、それでもその街に誰かしらいれば対処はできるからな。それで今回はどの街に誰を配置するのかを決めようと思う」
「で、残っている街の数と場所はどこなんだ?」
頬づえしながらジギルノヴァが聞いた。
「残っている街の数は五、場所はこれで確認してくれ」
ライオネットはテーブルに地図を広げる。見た感じ翔のいた世界の地図のようで陸と海に分かれているように見える。そして一つの箇所が丸で囲まれ別の五つの箇所が四角で囲まれていた。
「見てわかると思うが丸の箇所が今俺たちがいる街で他が残っている街だ」
広げられた地図をジギルノヴァはじっと眺める。
するとジギルノヴァは右手で一つの四角を指差した。
「じゃあ、アタシはこの街を守るよ」
なぜその街なのか、翔だけではなくおそらくライオネットも思っただろう。その証拠にライオネットは目を細める。
「ジギルノヴァ、お前何か企んでいるんじゃないだろうな」
「そう思われんのは心外だな。アタシはただこの世界が壊されないために街を守るって言っただけだぜ」
「それが怪しいって言ってんだ。それに昨日カケルと話したっていうのも引っかかる」
「ひゃはは。別に大したことは話してねえよ」
ライオネットの質問にジギルノヴァは笑いながら流した。その笑顔の奥に何を考えているのか、この場にいる全員が分からない。
「ライオネット」
先程まで口を閉じていた狼顔の男、イスピナードが口を開く。
「危惧するのは分かるが、ジギルノヴァが世界を壊してまで裏切るとは思えん。この者は己の欲を満たしたいだけだが、欲のために元の世界に戻る術まで無くそうとするほど愚かではない」
イスピナードの言葉にジギルノヴァは深く背もたれにもたれかかった。
「さすが、本能には敏感だな」
「そういう世界で生きてきたからな。貴様もそうではないのか?」
「ひゃはは、アタシはちゃんと理性が働いてるよ。誰かさんみたいに守る者がいない世界じゃなかったからな」
その言葉でジギルノヴァに向けられていた視線が変わった。
「ほう、それはどういう意味だ?」
「んなもん言わなくても分かんだろ?」
ジギルノヴァとイスピナードの視線が交わり重い空気が漂う。
もしかしたらこのまま一触即発するのではないかと思っていると、
「まあまあ、ここで争っても良いことなんて何もないでしょ」
と、場を読んでかヒウロが間に入ってきた。
「私たちの目的は元の世界に戻ること。そのためにこの世界が壊されないのが大事なんだから変なことで殺気立たないでよ」
ヒウロのおかげでイスピナードとジギルノヴァは視線を外した。




