第十六話
「ジギルノヴァのいた世界ってどんな感じだったんだ?」
これまでの話から気になり翔は問いかけた。
「どんな感じって言われてもな、いつもどっかと戦ってただけだが」
「どっかと? 誰かとじゃなくて?」
「ああ。こう見えてアタシは一国の女王だからな、毎日どっかの国と戦ってたんだよ」
「えっ! マジで?」
見た目からは想像もつかず、思わず声に出して驚いてしまった。風貌的には悪の幹部と言われた方がしっくりくる。
「何だ、そんな風には見えねえってか」
「あっ、いや……」
「ひゃはは、まあアタシの世界でも言われ慣れてるからいいけどよ。それに自覚してるしな。アタシは戦うことしか取り柄がねえし、国民の事なんてあんま考えてねえからよ」
「けどそれだと、国のために早く元の世界に戻らないといけないよな」
翔にとっては当然な事を言ったつもりだが、何故かジギルノヴァは軽く笑った。
「はっ、馬鹿な事言うなよ。この世界にはアタシの世界にはいない強い奴がいるのに帰れるわけねえだろ」
「え、でもさっきは居たいとは思わないって……」
「ずっとは居たくねえって言ったんだ。帰れる術が見つかったら全員とやるに決まってるだろ。それにアタシの勘が正しければライオネットとイスピナード、あいつらは相当強えはずだからな、帰る前に一度は戦わねえと」
嬉々とした笑顔を浮かべるジギルノヴァを横目で翔は見る。
一国を治めているとはいえ根元にあるのは戦闘狂というものなのだろう。よくそれで国が成り立っていると思うが、世界が違えば国の仕組みも違う。ジギルノヴァの世界ではそれが普通であり女王としてすべきことなのだ。
「けどよ」
一言、ジギルノヴァは言うと体ごと翔の方へ向けた。
「ライオネットに勝ったってことは、お前はもっと強いってことだよな」
「えっ」
急にジギルノヴァの顔がグイッと近づいてき、翔は顔を赤らめながら体を反らしてしまう。
「だ、だからそれはヒウロの嘘で……」
目の前にたわわなモノが二つがあり、目を明後日の方向へ向けながら答えた。
しかしジギルノヴァの右手が翔の顎を優しく捕まえ、視界にはどうしても見てはいけないモノが入ってしまう。
「な、何して……」
「言っただろ、そう謙遜すんなって。これもアタシの勘だが、お前は何かやらかしてくれそうだしな」
「そ、そそ、それは勘違いになると思うなあ……」
「ひゃははは、アタシの勘は当たるから心配すんな。それにアイツから便利な能力も貰ったんだろ」
おそらく神であろう者から貰った『能力創造』のことを言っているに違いない。確かに便利な能力ではあるが制限もあり万能ではないのだが。
「け、けど俺のいた世界では戦ったことなんてないし」
「ま、今ここで何を言おうが、実際に戦えば分かることだがなぁ……」
ジギルノヴァは目を細め翔に狙いを定めるように、ゆっくりと右手を顎から首元へ移動させていく。
それに対し思わず翔はその場から退くように逃げてしまった。それは恥ずかしさからではなく、本能的にである。
「そう慌てんなよ。別にここでやり合おうってわけじゃねえんだから」
冗談交じりに軽口を言うが、先程の言葉はジギルノヴァの危険な部分が覗いていたように感じてしまった。
ジギルノヴァと少し距離を開け翔は腰を底につける。
「じ、ジギルノヴァはどんな能力を貰ったんだ?」
今の状況から避けるように翔は話題を変えた。
「アタシの能力か? アタシが貰った能力は『相互入替』っていうモンで、二つの位置を入れ替えるっていうだけの能力だ」
「え、それだけ?」
入れ替えるだけ、というのはあまりチートの能力と思えず聞き返してしまった。
「それだけだよ。能力を貰う時どんなのがいいか聞かれたから、とりあえず弱いやつって言ったからな」
「なんでそんなことを? 別に強そうなのを貰ったってデメリットなんかないのに」
「分かってねえなぁ。強いやつと戦いたいのになんでアタシが強くならねえといけねえんだよ。それじゃあ意味がねえだろ」
そういうものなのかと、翔には理解できなかった。
だが話していくにつれてジギルノヴァが無類の戦闘好きということは分かった。元いた世界でも毎日のように戦っていたようであり、それを楽しんで生きていたのだ。今の平和な世界はジギルノヴァにとっては退屈なのだろう。




