第99話 潜入+発覚=再会
今回は別行動中のガイルとアリスの視点です。
「ほぉー。よくもまぁ、こんなややこしい通路を覚えてるもんだな」
「はンッ。お貴族様が何を言ってるんだい。あんたらこそ、こういう秘密通路の常連だろ?」
「はっはっは、そりゃあそうだ!」
クエイ公国にあるとあるお屋敷、そこへと向かう地下通路の中を二人の男女が進んでいた。
片方は三十代中盤くらいの筋肉質な男であり、もう片方は妙齢の女。
男の方は隣国シエル王国の元貴族のガイル。
そして女はアリス。
ここクエイ公国で国の暗部を任されている組織のリーダーだ。
彼らはクエイ公国の王室からの依頼により、公国の有力貴族へとコンタクトを図っている。
通常の手順では間に合わないほどの緊急事態のために、こうして裏の通路を使ってこっそり会いに行こうという訳だ。
「すごいもんだ。ホント、あのお嬢ちゃんが立派になったな」
「・・・うっさい。いいから行くヨ」
軽く流したように見えるアリスだが、その顔は赤い。
通路全体が暗いためにガイルに気付かれていないのは、幸いと言って良いものか。
そんな感じに軽口を叩きながら、有力貴族へとこっそり手紙を届けていく。
そして最後の一件へと向かう途中のことだ。
「なあ」
「ん?」
「あの二人なんだけど」
「うん?あー、嬢ちゃんたちか。あいつらがどうした?」
「本当に、あんたの子どもじゃないのかい?」
「おう、違うな。俺にいんのは息子だけだ」
「む、息子!?」
「ああ。今はウチの当主やっててな。自慢の子だぜ」
「と、当主!?成人!?」
「お、おい!声がデケえ!」
あまりの衝撃に大声が出てしまったアリス。
そして、ここは貴族の屋敷内の秘密通路だ。
つまり・・・
「何者!?」
「侵入者か!?」
「どこだ!?」
警備に気づかれることになる。
しかし、ここは存在を知られていないようで、屋敷内が騒がしくはなるものの、二人のところへと警備が踏み込んでくる気配はない。
「くっくっく、まさか、緊急通路を辿って賊が入り込むとはな」
なので、代わりにというべきか、警備ではなく整った身なりの老人がやってきた。
「知っていなければ侵入は不可能だと自負していたのだがな。さて、どんな知恵者が侵入を・・・む?」
老人は夜目が利くのか、暗い中でもしっかりと二人を見つめてくる。
そして、その視線がガイルへと止まったとき、その言葉も止まる。
「なんと・・・!当たり前に歳はとっているようだが、なんとも懐かしい顔が現れたものよ」
「・・・」
「黙っても無駄よ。久しいな、ガイル」
「おいおい、最後の有力貴族って、よりによってこのタヌキジジイかよ」
「くっくっく。その口の悪さも懐かしい。それに、そっちのお嬢さんは確か、アリスだったかな?ずいぶんと美人に育ったものだ」
「!?あたしのことも知っているのかい!?」
「昔、ガイルについてきていた子どもだろう?覚えているとも」
老人は話しながら嬉しそうにヒゲを撫でている。
「しかし、よもやこんなところで会うとは、奇遇・・・では流石に済ませられんぞ」
「あ、やっぱりダメか?」
なあなあでいけるかもとおもったのに、とガイルが残念そうに肩を落とした。
「当たり前だ。こんなところから入ってくるやつを歓迎などできるはずもあるまい。とはいえ・・・」
老人は言葉を区切ってアリスへと目線を流す。
「そこなアリス嬢がいるということは、王族に何かありでもしたか?」
「!?」
まさか自身の素性もバレていると思っていなかったアリスは、その目を大きく見開いた。
「くっ、複雑な感情はあるけど、これなら話は早い。タミル公爵、王族からt」
「そんなお嬢さんと一緒にいるとはいえ、そこの素性不明な男をはいそうですか、と歓迎する訳にはいかんな」
老人・・・タミル公爵はアリスの発言を遮ってそう言うと、腰に差していたサーベルを抜き放ってガイルへと向ける。
「けっ、ただ戦いたいだけだろうが。あいも変わらず戦闘狂が」
「かっかっか!強さの探求者と言ってほしいものだな。せっかくだ、アリス嬢も一緒にかかってきなさい。稽古をつけて進ぜよう」
「いや、緊急事態なんだ、そんなことをしてる暇は」
「諦めろ、アリス。こいつはこうなったらもう止まらん」
「そういうことだ。どれ、来ないならこっちから行くぞ!」
「来るぞ、構えろ!」
「ああ、もう!!」
こうして、国の一大事へのタイムリミットが迫る中、暗い通路にて避けられない戦いが始まるのだった。
次回の更新は6月20日(土)午前6時の予定です。




