第98話 起床+野暮=罠設置
『あ、アレク!!マニィも!!』
「んぁ・・・?」
朝から、なんかうっさい・・・
おっはー、あたしリタちゃん。
森で野宿してすやすや寝てたら、なんか慌てた声で起こされた。
いや、まあ、理由はわかってるし、実は寝起きも良いんだけど、お約束としてそんな風に考えてみたり。
ともかく、声のした方を見れば、イルズ侯爵の双子の弟の方・・・ルイが自分の奥さんと子どもと感動の再会をしているところだった。
こりゃ、積もる話もありそうだし、静かに離れて周辺警戒にでも回ろうかな。
そんな風にそっと置きだしたところ、同じ考えだったっぽい兄の方と遭遇。
「ん?あんたは家族側だしあっち側じゃないの?」
「なに言ってんだ。あそこに割って入んのなんて、ただの野暮だろ」
「それもそうだね」
「ほれ、いいから行くぞ・・・そうだな、やりたいことがるから、ちょっと付き合ってくれ」
「いいよー・・・ところで、お姫様はどうする?」
「あー・・・仕方ない、離れたところで静かに起こすか。俺が運ぶわけにもいかんから、頼んだ」
「おっけー」
そんなこんなで、あたしは寝てるフランチェスカをそっと離れたところに運ぶと静かに起こし、ペルフェ侯爵のやりたいこととやらに付き合うことになった。
「それで、何をするんだい?」
まだ少し眠そうなフランチェスカがそう声をかける。
「いえね、私たちは今、一応は逃げてる身の上じゃないですか」
「そうだね。あの屋敷にいた改革派のやつらの大半はティータちゃんが伸してきたから、追っては大丈夫だと思うけど、確かに追われてる身ではあるのかな?」
改めてだけど、ティータってのはあたしの偽名ね。
「ええ。そんで、今あっちで話し込んでる三人には戦闘能力がほとんどありません。しかも、意識を取り戻したってことは、これまでみたいに運ぶわけにもいかない」
「確かに。ん?でもあたしが奥さんを負ぶって、侯爵兄が侯爵弟と子どもを運べばいいのでは?」
「・・・・・・行軍速度はどうしても遅くなるよな」
あ、無理やりにでも話を進める気だな。
まあ、いいけど。
「それで、万が一にも追手がかかってた場合、少しでもその足を止める必要があるわけだ。なので、罠を張ります」
「・・・そうだね、理にかなってるとは思う。改革派の戦力を削ぐことにもつながるし、わたしは支持するよ」
フランチェスカは乗り気なようだ。
「そっか。あたしとしても否やはないよ。それで、どんな罠を張る気なの?」
「そうだな・・・」
罠を張るといっても、今は移動の最中。
本格的なものを作る用意も時間もないわけで、どうしても簡易的なものになってしまう。
「まあ、ぱっと思いつくのは、茂みを利用した足掛けのトラップとか、落とし穴とかだな」
「そうだね、そこらへんが無難かな」
「でも、足掛けはロープでの簡単なものしかできないし、落とし穴は掘るのに時間が「はい、姫様少し離れてねー」ティータちゃん?何を・・・」
ほい、フランチェスカの返事を待たずに拳を地面にドーン!!
「にゃわあああああ!?」
「うおお!?」
なんか二人分の悲鳴が聞こえた気がしたけど、とりあえず目の前に大きな穴はできたね。
「はい、じゃあそこら辺の草でも被せようか」
「あ、ああ。・・・あの、姫様?敵として戦ってたときから思ってたんですけど、この子、ずいぶんと無茶苦茶やりません?」
「うん、まあ・・・最初は、楽しむ余裕もあったんだけど、こう地形をポンポン変えられるとそうも言ってられないんだよね。爆速で運ばれる分には楽しかったのになぁ・・・」
「あ、そういえばあなたも相当でしたね、忘れてました」
「はいはい、二人でぶつぶつ言ってないの。あと数か所作るから、カモフラージュの素材を集めてくる!」
「「了解!」」
ってことで、あたしが穴を開け、二人が偽装を乗せるのを繰り返して、無事に落とし穴地帯が完成。
これで安心だと満足して戻ったあたしたちだったんだけど・・・
「皆さん、ご無事ですか!!先ほど、凄まじい音が!もしかしたら強い魔物が近くにいるのやもしれません!!」
「「「あ・・・」」」
派手に作業をしたせいで、ルイたちに余計な心配をかけさせてしまったという・・・ごめん。
とりあえず、そこから誤解を解きつつ、落ち着いたルイたちを連れてあたしたちはクエイ公国の城へと帰還するのだった。
ちなみに・・・
「せっかくの人質を逃がしてたまるか!行くぞ、諸く・・・ぎゃあああああ!?」
「隊長ー!?」
落とし穴は立派に機能したらしいけど、掘ったことすら忘れてたそれをあたしらにそれを知る由はないのであったとさ。
次回の更新は6月13日(土)午前6時の予定です。




