第100話 戦闘+乱入=進展
あと数話、彼らの視点が続きます。
「オラァ!!」
「ヌルいわァ!!」
「まだまだァ!!」
「だからヌルいと言っている!!」
クエイ公国のタミル公爵邸へと続く秘密通路。
光が差さず、暗い通路に暑苦しい拳の応酬が繰り広げられている。
今ここでは、クエイ公国の有力貴族であるタミル侯爵へと王族からの文書を渡すべく、タミル侯爵との戦いが繰り広げられていた!!
文面だけなら目的が達成されている気がしないでもないが、肝心のタミル公爵本人が戦いを仕掛けてきているのだから、そうもいかない。
では、なぜ戦いを仕掛けてくるのか?
それは、本人も再三口にしている。
「どうした?その程度では、貴様のようなどこの馬の骨とも知れぬ輩を信用する訳にはいかんなァ!」
「いい加減、その建前は体を成してないんだよ、戦闘狂ジジイ!!」
「やかましい!!いいから、もっと本気でかかってこんかッ!!」
「だあァ、もうッ!!」
「・・・タミル侯爵ってこんなぶっとんだ人だったんだねぇ・・・」
ガイルとタミル公爵が剣と拳を交えている中、アリスはどうしようもないため、遠い目をしていた。
ガイルに加勢しないのかって?
「そらそらそらァ!!」
「うらおらそりゃァ!!」
剣閃が迸れば迎撃した拳とぶつかって火花が散り、逆に拳が唸ればそれを迎え撃つ剣が輝く。
要は、レベルの高い攻防が瞬く間もなく繰り広げられているのだ。
諜報員としては技能が高く、しっかりと戦いもこなせるアリスであるが、目の前の攻防に参戦できるほどではない。
「どうしたものかぁ・・・」
「おやおや、これはこれは」
「ん?あんたは・・・」
そんな中、タミル公爵の後方から、燕尾服を着た中年の男がひょっこりと顔を出す。
「おや、お客様でございますか。私はタミル家にて使用人のまとめ役を仰せつかっている者でございますれば」
「ああ、そうかい。それで、あんたもあっちに倣ってやろうってのかい?」
「ああ、とんでもございません。私には戦闘能力はありませんので。・・・ですが、これでも執事長として参戦せねば、面目が立ちませんか。旦那様ー!!私も参戦致しましょうかー??」
「いらぬわ!!貴様、ひ弱なのだから余計なことをしようとするでないわ!!ほれ、気が逸れたと思ったか?ワシ程になれば貴様から目を離さずにやり取りが可能だっ!!」
「くっそ、無駄に油断も隙もねェ!!」
「だ、そうですので、私はここで観戦でございます。いやー、あんなに楽しそうな旦那様を見るのは久々ですなー」
「・・・・・・」
激しい戦いが繰り広げられている、はず、なのだが・・・なんだろう、この執事が放つのほほんとしたオーラは・・・
思わず、ジト目になるアリスだが、仕事はこなさねばならない。
すぐに気を取り直すと、目的の書類を目の前の執事長らしき男へと手渡した。
「おや、これは王族からの勅書。しかも緊急の案件のようですね」
「わかってるなら話が早い。早くそれを公爵に」
「どれどれ」
「ちょっ!?主に黙って、何を勝手に重要書類を開けてるんだい、あんた!?」
「まぁ、いつものことですので」
「いや、いつもやってちゃダメだろ!?」
ごもっとも。
「えー、ですが公爵は書類がお嫌いですぐにお逃げになるので、こうしないと仕事にならないのですよー。まぁ、でも一応聞いておきますかー。公爵様ー!書類、勝手に開けちゃいましたけど、良いですかねー?」
「構わん!!ワシは今それどころではないから好きにせーい!!」
「ちょ、それが目的で俺らが来たんだけど!?」
「知らぬ!!今はこちらに集中せよ!!そらそらァ!!」
「だァ!無駄に早い連撃を仕掛けてくるんじゃねェ!!」
「ね?」
「・・・あぁ、そうだね」
アリスは、いろいろと諦めた。
「どれ・・・内容は・・・!?これは、急いで動かなければ!!私はすぐに戻って指示を出します故、これにて失礼!ああ、お嬢さん。次はおありなのですか?」
「いいや、ここで最後さね」
「でしたら、碌にお構いできず申し訳ありませんが、当家の応接室をお使いください。お疲れでしょう?」
「そりゃあ、助かるけど、あの二人は?」
「そのうち満足したら戻ってくると思うので、放っておいて結構!ほら、時間がありません。参りましょう!!」
「いや、その・・・えぇ?」
そんなこんなで戸惑いながらもアリスたちは目的を達成。
そのまま応接室に通されたアリスは優雅に紅茶を楽しみ、一時間ほどすると煤けた二人が帰って来て、任務完了と相成ったのだった。
だった・・・のだが・・・
「どうしてこうなった・・・」
「~~~!!」
なぜか、ガイルと二人一緒に風呂へと投げ込まれ、別な急展開を迎えることになったのだった。
次回の更新は6月27日(土)午前6時の予定です。




