第101話 入浴+硬直=叱咤
「〜〜〜!!」
カポーン、なんて音が鳴りそうなくらいに広い浴場で、アリスは顔を真っ赤にして立ち尽くしていた。
「どうしてこうなった・・・」
で、そんな赤面の原因が隣にいたりする。
バスタオル一枚を羽織っただけのアリス、そして隣には同じくタオル一枚のガイルというこの状況。
普通であればありえないこんな状況になった経緯なのだが・・・
「こちらでございます・・・おや?あなた様は・・・」
「ん?どうしたんだい?」
「なるほど、そのお顔・・・」
「だから、なんなのさ」
「あなた、恋をなさっておいでですね?」
「ハァ!?」
「少々、急用を思い出しました故、失礼致します」
「な、ちょ!?」
「ただいま戻りました」
「早っ!?って、ガイル!?」
「くっ、このメガネの真面目そうなメイドに急に引っ張って来られて・・・なんなんだよ、いったい!?つーか、こいつ力強ェ!?」
とまぁ、こんな感じで黒髪メガネ三つ編みのメイドがあれよあれよと二人をひん剥いて浴場にぽいっと放り込んだのである。
そのメイドは後日、「あの場では最善の判断であったと自負しております」と自慢げに語っていたりする。
そんな余談はともかく、アリスとガイルは同じ浴場へと放り込まれてしまったわけだが、流石に一緒に入る訳にもいかない。
なので、ガイルはすぐに浴室の扉を開いて出て行こうとするのだが・・・
「ちょ、固!?開かねェ!?」
『扉はこちらが許可しない限り開かない仕組みとなっております故、大人しく入浴なさいませ』
「なんじゃそりゃ!?ぐっ!!ダメだ、びくともしねえ。相手があのジジイとはいえ、さすがに公爵の屋敷を壊すわけにもいかんし・・・仕方ない、入るか」
ガイルは大きく溜息を吐くと、観念した様子で洗い場へと向かう。
「ってことで、アリス。お前、先に入れ」
そして、アリスに声をかけるも、アリスは立ち尽くしたまま動かない。
「・・・ったく、しょうがねえな。先に入りたかったなんて、後で文句言うなよー」
なので、ガイルは仕方なく先に体を洗い始めた。
そして、洗い終わって、湯舟に入る。
その間も、アリスは動かない。
さすがにノボセテイルのかと心配になったガイルだが、どうやらそんなこともなく。
ただ、思考がフリーズしているだけのようである。
さて、このアリスなのだが、これまで仕事一筋で生きて来た仕事人間である。
稼業が稼業なだけあって、業務内容は過酷。
浮ついた話なんて出る隙間がなく、そして、本人も幼き日の初恋を忘れられないためか男の影なんて一切ない。
そんな彼女が、その初恋の人物とほぼ裸で浴場に放り込まれたのだ。
そりゃ、脳が処理落ちして動けなくもなるだろう。
しかし、現在、ガイルとアリスは時間のない中でお風呂を借りているという状況だ。
いつまでものんびりしているわけにもいかない。
なので、ガイルはアリスにつかつかと近づいて行って、目の前でパァン!と柏手を打った。
「っ!?」
「おら、しっかりしろ、アリス!今のお前さんは闇光の頭領なんだろ?帰るまでが仕事だ。その職責を果たさんでどうする!」
「!!・・・そうだね。あたしとしたことが・・・悪いね、ガイル」
「おう、わかったならいい。なら、やるべきことはわかるな?」
「ああ、そうだね・・・」
ガイルに励まされたアリスは洗い場へと歩いて行く。
それを満足げな顔でガイルは見送り、
「と、とりあえず、あっちを向いてな!!」
「あ、わりぃ」
そして、怒られてしまうのだった。
こうして、彼らは一緒にお風呂という珍事を乗り切ったのだが・・・
「「・・・・・・」」
しばらく、何とも言えない気まずさを感じる羽目になるのだった。
次回の更新は7月4日(土)午前6時の予定です。




