第96話 説教+発見=涙
「どういうことか、説明してもらおうかァ、弟イルズぅ!!」
「はいィ、姫様!?いきなり何ですか!?」
起き抜けに自国の姫様に詰め寄られるのって、胃が痛そうだよねー、知らんけど。
やっほー、あたしリタちゃん。
本物のイルズ侯爵がさらっと衝撃の事実を明かした結果、フランチェスカが荒ぶっているのが今の状況。
まぁ、どうやら機密だったみたいだし、しょうがないね。
・・・ん?
そんな機密を他国のあたしが知ったらマズくない?
・・・あたし、なんにもきーてなーい。
「いや、今更耳を塞いでも手遅れだろ。そもそも、最初に気づいたのはお前さんなんだ、諦めな」
「うっさい諸悪の根源。こういうのはポーズが大事なの」
聞いてないっていうテイにしておくのとおかないのでは、いろいろと違うもんなんだよ。
「そーかい。やっぱ貴族は面倒だ」
「当主が何を言っているのさ」
「だーから、私は裏に回ったんだよ。絶望的に向いてないからな」
「まあ、自覚があるだけマシだよね」
「あ、やっぱりそう思う?だよなー」
「「あっはっは!!」」
「そこォ!笑ってないで助けてくださいよォ!?」
あたしと本物侯爵が笑ってたら、偽物侯爵が助けを求めてきた。
でも、自業自得だしなぁ・・・
「・・・がんば!」
「ファイトだ!!」
「そちらのお嬢さんはともかく、兄上は助けてくださいよォ!?」
「ハッハッハ・・・」
「笑いながらそっぽを向くなァ!」
「ねえ、聞いてる!!ほら、兄の方もこっちに来る!!」
あ、逃げられなかった。
本物侯爵も仕方なく二人に近づくと、フランチェスカの説教をいっしょにくらい始めた。
でも、そこで余裕ができたのか、偽物侯爵がふと辺りを見回し、ハッとした表情である一点で視線を止めた。
「マニィ!アレク!!」
視線を止めた先にいたのは、横たわっている女性と子ども。
本物侯爵が改革派から救出してきた、人質たちだ。
どうやら、女性がマニィ、子どもがアレクというらしい。
偽物侯爵は慌てた様子で二人に近づくと、その様子を探り始めた。
「すみません、姫様。お話は後で伺いますので、今は・・・」
「・・・ハァ。そうだね」
「ルイ。二人なら寝ているだけだ」
そしてさらっと明かされる偽物侯爵の名前。
「薬くらいは嗅がされているみたいだが、命に別状はない。もう少ししたら目を覚ますはずだ。だから、落ち着け」
「え、えぇ・・・兄上、二人は兄上が?」
「ああ。そこのお嬢さんにも手伝ってもらったがな」
それを聞いた偽物侯爵ことルイはあたしに向き直ると、両手をがっしりと掴み、頭を下げた。
「ありがとう、本当に・・・ありがとう・・・!」
「この二人は、あんたの?」
「妻と子だ。この恩は必ずお返しすると誓う」
本当にありがとう、とルイは静かに涙を流し始めた。
そんな様子なので、家族三人にしてあげようと、あたしたちは少し離れたところに陣取ることにした。
ルイに戦闘能力はないけど、このくらいの距離なら何かあっても対応できるから問題ないしね。
「で、ふと思ったんだけど、本物侯爵は名前なんていうの?」
「・・・心の中でそう呼んでいたのか・・・まあ、わかりやすいが」
「ハッ!?」
しまった、あたしとしたことがバレた!?
・・・別に、だからといって特になにもないけど。
「で、名前は?」
「その図太さは尊敬する・・・私の名前は「ペルフェ侯爵さ」・・・姫様・・・」
名乗りを遮られた本物侯爵ことペルフェはフランチェスカにジト目を向ける。
「侯爵は表の名前と変わらないのだろう?なら、問題ないよね」
「そうですが、タイミングというものがあるでしょうに・・・」
「まあ、こっちの方が早かったし、いいじゃないか」
「・・・左様で」
あ、ペルフェが諦めの顔だ。
まあ、そんなのは放っておいて。
「さて、名前も分かったことだし、二人とも。ここからどうするか、そろそろ話しておこうよ」
あたしは雰囲気を切り替えるべくそう切り出し、話し合いが始まる。
家族の目覚めを待つルイを他所に、あたしたち三人はここからの流れを・・・具体的には、改革派に関する情報交換と対処の予定を軽く打ち合わせるのだった。
次回の更新は5月30日(土)午前6時の予定です。




