第87話 急報+愚行=放心
オッス、あたしリタちゃん。
アリスの案内で暗い地下通路を越えた先で、地上よりも明るいSFのような部屋にあたしたちはたどり着いた。
「姐さん!急報です!!」
そして、中に入ったアリスに対し、部下と思しき男が紙を持ってやってきた。
アリスはそれにさっと目を通すと、あたしらを部屋の中央にある大きな机へと案内する。
「さて、改めてここの使い方を教えてやりたいところだが、少し状況が変わった。あんたらもすぐに動かざるを得ないかもしれないね」
「というと?」
「クエイ公国のタカ派が動いた。ベリアーザでの工作が失敗した影響か、焦ったバカが出たみたいだね」
「・・・・・・」
アリスのこの言葉に、ガイルのおっさんの眉間に皺が寄る。
そりゃ、そのベリアーザの出来事の当事者だもんね。
ともかく、あたしらは黙って話の続きを聞くことにした。
「ここも含めてシエル王国との国境にある街にはシエル王国側の商会や施設があるだろう?どうやらそこに難癖をつけて施設ごと財産を接収するって話になったらしい」
「「「は??」」」
いや、あの・・・え?
あたしらは混乱した。
いくらなんでも意味が分からない。
水面下で争い始めたとはいえ、一応シエル王国とクエイ公国は友好国だよ?
そんな他国の施設を問答無用で占拠して、情報と資源、それに財産を接収??
そんなことをしても、他の国から顰蹙を買って終わりでは??
「だから言ったろ?バカが出たって」
「いや、いくらなんでもそこまでのバカが出るとは思わないじゃん」
「そうですわ。素人のわたくしたちでもそれがありえない愚行だというのはわかります。その・・・正気ですの?」
リリスが思わずストレートに聞く。
いや、だって、マジでヤバいでしょ。
ガイルのおっさんに至っては、軽く放心しているレベルだし。
さっさと起こすか。
「ほら、おっさんしっかり!!」
ネコ騙しパーン!
「ハッ!!す、すまねえ。あまりのことに思考が止まってやがった」
「今回の件に関しては、あたしでもあんたをなじることはできそうにない。それだけ、意味の分からない情報だからね」
「一応聞くが、誤報の線は?」
ガイルのおっさんのその問いかけに、アリスは部下の方を見る。
「へい。あまりの情報だったんで、多めに確認を回しやしたが、確かな情報なようです」
「だ、そうだよ。まったく、自国のことながら頭が痛いねぇ・・・」
今の部下の発言から、情報が出てから確認に時間がかかってるっぽいし、これは早く動かないとまずいかな。
とはいえ、あたしらは自国の支援が使えない。
それでここを頼って来たわけなんだけど・・・
リリスを見れば、同じことを考えているのか難しい表情をしている。
そんなあたしたちの様子を見て、リリスはにかっとした笑みを浮かべてこう言った。
「手が足りないんだろう?安心しな。こっちの国のバカの暴走でもあるし、今回は力を貸してやるさね」
「ありがたいよ。でも、どうするの?」
「なぁに、蛇の道は蛇ってね。もちろん、あんたらにも動いてもらうよ。特にガイル!!あんたのことはこき使ってやるから、覚悟するんだね!!」
「お、おう!」
こうして、あたしらはクエイ公国の地下組織「闇光」の力を借りて、公国内にある自国の施設を救うために動くことになったのだった。
次回の更新は3月28日(土)午前6時の予定です。




