第86話 招待+暗闇=光
やあ、あたしはリタちゃん。
クエイ公国に潜入したあたしたちは、受けられなくなった支援の代わりを求めた。
そこで、ガイルのおっさんの伝手で路地裏の飲み屋に来たんだけど、そこの女将であるアリスとちょっとひと悶着。
なんとか協力してもらえることになったあたしたちは、アリスの飲み屋の中に足を運ぶことになったってわけだね。
「おおー!内装は違うが、雰囲気はかつての名残を感じるぜ。懐かしいな・・・」
「・・・そうかい。ほら、こっちだよ」
アリスはカウンターを通り過ぎると、バックヤードへとあたしたちを招き入れる。
そのバックヤードの床には食在庫だろう大きな扉が。
アリスはしゃがんでそれを開けると、中には階段があって、それを降りていく。
「これもそのままかよ。ほれ、お前らは先に行きな。俺が閉める」
ガイルのおっさんがそう言ってくれたので、あたし、リリス、おっさんの順で階段を降りることに。
地下階段を少し降り、たどり着いた通路には当然明かりなんて無い。
でも、アリスの足取りに迷いはなく、すたすたと先へと進んでいく。
「相変わらず暗いな。確か、もう少しで到着だったか?」
「昔はね」
「何?」
「さっき言ったろ。先代は事故死だって」
「ねえ、さっきも思ったけど、それどういう意味なの?文字通りではないよね?」
「おう、そうだな。階段で転けて死んだってのはな、国の暗部に始末されたって意味だ」
「国の!それは当然、このクエイ公国ですわよね?」
「そう。やつらはウチの先代を始末した。これまで散々、ウチの情報網を駆使しておきながら、あっさりとね。」
「・・・為政者ってのはそういう生き物だからな。そうでもしないとやっていけない世界ってのも否定はしない。まぁ、そんなことをやる為政者は三流も良いところだが」
暗くても気配と声音から、そういう為政者への嫌悪が伝わってくる。
自分も為政者だったからか、ガイルのおっさんには思うところも多いんだろうね。
「先代は生まれたこの国を心の底から愛していたから、始末を受け入れた。でも、今代のあたしはそうじゃない。尽くしても捨てられるなら、そこに尽くす価値はない」
「・・・そうだな」
ガイルのおっさんの声音が苦い。
まぁ、あたしらも考えさせられるよね、どっちかというと為政者側についてる人間だし。
そんな重い話をしながら、アリスは突然歩む方向を変えた。
この通路、幾つかに枝分かれしているのかさっきから方向転換をしていた。
けれど、今回はアリスが完全に立ち止まり、またしゃがんだのが気配でわかる。
そして、ガコンという音がすると、アリスはそこからまた通路を右に曲がって進み始め、「ここから下がるよ」とまた階段を降り始めた。
そして階段を降りてすぐ、後ろからガシャン!という音と「うおっ!?」というガイルのおっさんの声が。
続いて、通路が急にパァァっと明るくなっていく。
魔道具によるものなんだろうけど、その姿はある世界を知っているあたしから見ればどう見ても・・・
「SF映画に出てくる通路かな・・・?」
そんな呟きは幸いにも誰にも拾われることもなく、アリスは目の前の扉をパシュゥゥゥと開くと、
「さあ、ようこそ。我ら『宵闇』改め『闇光』の本部へ」
そう言って、魔道具の光で満ちた会議室へとアリスはあたしたちを招き入れるのだった。
次回の更新は3月21日(土)午前6時の予定です。




