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ジャパニーズ・サイコ
源氏物語は恋愛小説とも呼ばれたりするけれど
実際に読んでみると、恋愛というよりは、ひたすら厄介で傍迷惑で有害な男に侵食され翻弄され痛めつけられ後生を願う名前を持たない女性たちの受難劇、という印象だった
傑作だ、と思いつつ、この国はなんて気持ち悪い国なのだろう、なんて気持ち悪い世界なのだろう、とも思った
『アメリカン・サイコ』という、殺人鬼の一人称によって語られる、ブランド名や商品名が異常なほど頻出し羅列され、朝のストレッチと昼のパーティーと夜の殺人が同列に置かれているような、その異様に即物的で冷淡な語りの閉塞感の内側に、アメリカの病理が仄暗い万華鏡のように煌めくような、実に魅惑的な傑作小説があるが
これの日本版はないのだろうか、『ジャパニーズ・サイコ』はないのだろうか、などとよく妄想していたけれど
源氏物語こそが、『ジャパニーズ・サイコ』なのかもしれない




