8.またまたおっさんに助けられました
『あさひ、出かけるのか?』
「そうだよ」
『誰とだ?』
「SNSで知り合った友達」
『それ危ないやつじゃねーのか?会ったことあるやつか?』
「危なくないもん。最近じゃあこんなの普通だから。会ったことないけど毎日のようにLINEのやり取りしてるし、女の子だし」
『でもなぁ』
「いってきまーす」
『あ、こら話の途中だろうが』
オリオンったら、お父さんより口うるさいんだから。
親世代は、いまだにSNSは危ないって思い込んでる人が多いんだよな。
ちゃんと話すようになってまだ1週間ぐらいだけど、話も合うし、いい人そうだし、問題ないっしょ。
待ち合わせ場所に着いた。
まだ来てなさそうだな。
「アーコちゃん?」
私のSNS上での名前を呼ばれて声の方を見ると、高校生ぐらいの男性が立っていた。
「はじめまして。ゆきです」
「え、ゆきちゃんって、え?男?」
「私が女性だと言った覚えはないけど?」
た、確かに、ゆきって名前から勝手に女の子だと思い込んで、性別聞いたことはなかったけど、男性がつけてもおかしくはない名前か。
一人称がずっと私だったのも、思い込みの原因だ。
男性と2人っきりは、さすがにまずいのでは?
「さて、とりあえずお昼食べに行こうか」
「えつっと、私、急用が」
「えーそっちが勝手に勘違いしてそれはないよー。それに会おうって言ったのはアーコちゃんでしょ?」
言い返す言葉がない。
「……じゃ、じゃあご飯だけ」
てなわけで、私たちは近くのレストランに入った。
1時間ほど食事をしながら話をしたが、好きなアニメや音楽が一緒なのは本当のようで会話は楽しかった。
考えてみればゆきちゃんは嘘をついていたわけではないんだよな。
普通に今まで通り仲良くしても大丈夫かも。
食事を終え、完全にゆきちゃんへの警戒心を解いた私は、美味しいケーキが食べれる喫茶店を知ってると言うゆきちゃんにひょこひょこ着いて行った。
……が、そこはホテルの前だった。
どう見てもラブホだ。
「ここのケーキ本当に美味しいんだよ」
「だとしても、こんなとこ友達同士で入らないでしょ」
その時、ゆきちゃんの表情が変わった。
「男が来てあんなに警戒してたってことは、ちょっとは想像してたんじゃないの?でも帰らなかったってことはそりゃこっちだって期待しちゃうつうの」
とゆきちゃんは私の腕をがっちり掴む。
「やだ、離して!行かない」
そのとき、遠くで犬の鳴き声がした。
オリオン?そんなわけないと思いながら、私は思いっきり大声を出した。
「オリオーン!助けて!」
するとだんだん犬の声が大きくなり、姉とオリオンの姿が見えた。
「あさひ、あんたこんなところで何してるの」
ゆきちゃんは姉たちを見て、全速力で逃げて行った。
「ちょっと、待ちなさい」とゆきちゃんを引き止めようとする姉を制し、私たちは家に帰った。
もうゆきちゃんと関わりたくなかったし、姉まで危ない目にあったら困る。
その後、姉に何があったのかしつこく問われ、渋々すべて話すと予想通りめちゃくちゃ怒られた。
姉はSNSで出会った人と実際に会うことには反対しないが、もっと相手のことをよく知って信頼関係を築いてからにしろとのこと。
頷くことしかできなかった。
その通りだ。
なんで私の場所がわかったのかと聞くと、オリオンが散歩グッズを姉のところへ持ってきたので、散歩に行きたいのかと外に出たら、オリオンが道の匂いを辿って歩き出し、引っ張られるままについてきたら私がいたと。
まるで警察犬だな。
オリオンにも『そらみたことか』とか言われると身構えていたが、何も言ってこなかった。
私が落ち込んでいる様子を見て、自重してくれたのかな。
私は姉に怒られたことより、親友になれるかもと思っていた友人に裏切られたことの方が応えていた。
趣味の合う友人が身近におらず、やっと話が合う友人ができたと喜んでいたのに。
部屋の隅でしばらく泣いていた私のそばに、オリオンは何も言わず寄り添ってくれていた。




