7.おっさんの嫉妬
わしがこの家に来て3ヶ月が過ぎた。
犬の中身が50歳のおっさんだと知ったあさひは、初めはドン引きしていたが、今では愛犬として大切にしてくれている。
そんなある日、あさひの父ちゃんが子猫を連れて帰ってきた。
どうやら親に見放された野良猫のようで、1人で彷徨っていたらしい。
みんなして可愛い可愛いと、子猫に夢中だ。
あさひ、お前は犬派だと言い張っていただろうが。
『なぁ、飯は?』
「ちょっと待ってよ。猫ちゃんが先」
『あさひ、散歩まだ?』
「ごめん、今日は猫ちゃんのお世話で忙しいから。また明日ね」
カチーンッ
「ちょっとーオリオン、なんでそんなとこにおしっこするのよ。あ、こらどこ行くの」
全く、わしそっちのけで子猫ばっかり構って。
ぐれちまうぞ。
まぁ、おっさんの声で喋る犬に比べたら、そりゃ可愛い声でミャーミャー鳴く子猫の方が可愛いよな。
くそーモヤモヤする。
あれ、玄関が少し空いてる。
ちょっと頭冷やしてくるか。
1人で外に出るのは初めてだな。
さて、どこに行こうか。
闇雲に歩いてたら、よくわからん道に来てしまった。
あ、向かいから散歩中の犬が来る。
あのチワワはドッグランにいたやつだ。
わ、めっちゃ笑顔で走ってきた。
「あれ?君いつかのトイプーちゃんじゃない?1人?」
立ち去ろうとしたが、チワワがわしの前に立ちはだかって通してくれねぇ。
「迷子かな?とりあえず、トイプーちゃんが来た方向に行ってみようか」
と兄ちゃんはわしを抱き上げた。
下ろしてくれーわしはまだあの家に帰りたくないんだ。
抵抗も虚しく、兄ちゃんに抱っこされながらしばらく進んだ所で、聞き慣れた声がした。
「オリオーン、どこー?お願いだから返事してー」
あさひの声だ。
「あ、あの子かな?おーい、こっちこっちー」
すると路地からあさひが出てきた。
「あ!あの時のお兄さん。オリオン!もう心配したんだから」
と泣きそうな顔であさひが走ってくる。
「オリオンくんよかったね。お迎えがきたよ」
あさひは兄ちゃんに丁寧にお礼を言い、わしを受け取った。
帰り道。
「なんで1人で出て行ったりしたの」
『だって、、、あさひはあの子猫の方が可愛いんだろ?』
「バカだな、おっさんのくせに嫉妬したの?」
『うるせー。そんなんじゃねー』
「ごめんごめん。私が悪かったよ」
『あの猫、飼うのか?』
「ううん、お父さんの職場に猫飼いたい人がいて、連絡したら早速引き取りに来るって」
『そっか』
「安心した?」
『べ、別に』
「ふふっ。うちは世話のかかるおっさん一匹で精一杯だよ」
『そりゃすんませんな』
「とにかく、もう勝手にいなくならないでね」
と涙を浮かべた目であさひは笑った。




